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ジェンダーギャップ解消の前にやるべきこと3つ

 2024年のジェンダーギャップ指数、日本は118位と世界経済フォーラムが発表しました(朝日新聞記事リンク)
 なぜ日本のジェンダーギャップ指数はこれほど低いのか。
 私自身が社会に出た90年代前半よりは「だいぶマシ」ですが、亀の歩みです。特に女性管理職比率や男女の賃金格差は改善の余地が大きい。
 ところが「女性管理職比率を上げましょう」というと、男女どちらからも「優秀な人を昇進させれば良いだけ」「高下駄を履かせるのは良くない」などと一種の反論のようなものが出て、そこで思考停止となることがよくあります。
 思考停止になる前に、経営者に考えてほしいことを3点あげます。

①エイジ・ダイバーシティの改善

 年長者は年少者より偉い、という価値観・風土による年功序列。歴史的経緯により、大企業で働く女性の年齢分布は、同じ企業で働く男性のそれより若い。優秀な女性を引き上げようとすると、「同期の男性より早い」という謎の理由で「高下駄だ」ということになる。同期の男性で同じくらい優秀な人(もしいれば)をとっとと引き上げればよいだけの話。そして優秀でない年長者を別のポジションに置けばよい。エイジ・ダイバーシティが進んでいないのがジェンダー・ダイバーシティの障害になっているケースが多い。

②評価基準の見直し

 「優秀な人」を上げればよいだけ、という「優秀」の定義が男性に有利になっていることがあります。これは大手証券会社の元CEOの男性がおっしゃっていたことです。
 分かりやすい例でいうと、夜遅くも土日も問わず働いてくれる方が仕事ができると思われやすい(過去の話と思いたい)。自分の時間を100%仕事に捧げられる姿勢が優秀とみなされる。
 また、今いるリーダーと同質的な人が優秀とされやすい、無意識のバイアスがあります。競争心が高く部下を引っ張るタイプのリーダーは、似たようなタイプを後任に選びやすいし、周りもリーダーとはそういうものだと思ってしまいます。さらに日頃から接している人、同じ部署・大学の出身なども「あいつのことはよく知ってる」と有利に働きます。その昔、喫煙室で人事が決まったように、経営層とは一種のコミュニティです。そこにアクセスがないマイノリティ(女性や外国人、中途など)は、見えない壁に阻まれているといえましょう。日本人の男性で妻が専業主婦の人で有名大卒の人は、こうした見えない壁や生きづらさを感じたことがないのだと思います。
 評価基準の目に見えない部分に影響していないか、よく考えてほしいと思います。

⓷非正規・正規の壁

 子育てを機に正社員を辞め、子どもが小さいころはペースを落として働きたい女性は多くいます。それでパートなどの非正規社員で働くことを選んだものの、子育てから手が離れる時が来ても、正社員の壁は非常に高いのが現状です。
 アルバイトから社長になった例は飲食・サービス産業でいくつか事例はありますが、多くの場合は、一度正社員のレールを降りたら二度と正社員には戻れない。非正規で働き続けると年金が非常に少ないため、離婚すると生涯貧困となってしまいます。男性でも就職氷河期世代には見られるパターンです。
 副業や転職がこれだけ一般的になってきたこの時代、「非正規」と「正規」を行ったり来たりできるようにならないと、格差是正は永遠にできず、社会的にも問題です。

アファーマティブ・アクションは②に効く

 アファーマティブ・アクション(マイノリティ属性の人を意識的に登用する)やクオータ制(割当)は②に効くと思います。女性などマイノリティの登用は、色々言う前に「とにかく女性を入れてみる」とその効果を感じる経営者を多く見かけます。「女性でもできた」などと上から目線の感想もありますが、当初は半信半疑でも「女性を加えたことで新しい視点が得られた」という声はよく聞きます。できれば10~30%くらいまで女性の比率を上げると効果を感じられると思います。
 現在政府が力を入れているリスキリングや社会保障制度の見直しは⓷の解消につながると思います。まだ道半ばですが、なんとかがんばってほしい。

根深い問題はエイジ・ダイバーシティ

 残るところは①の年功序列でしょう。有価証券報告書では女性管理職比率と男女賃金差異が開示義務となりました。ところがエイジ・ダイバーシティは日本企業の大きな問題にもかかわらず、企業経営者の采配に任されたままです。上場企業でも開示している企業はごくわずかです。価値観を変える必要がありますが、これは絶対に必要なことだと私は考えます。
 今の若い世代が生きづらさを感じないためにも、変わってほしい、そう思っています。

ーEND-

IR(インベスター・リレーションズ)の経験などに基づいたテーマで記事を書いています。幅広い層のビジネスパーソンにも読んでもらえたら嬉しく思います!