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withコロナ時代の居酒屋はどうあるべきかを考察してみた

コロナ禍で居酒屋は大打撃を受けている。私も居酒屋にはお世話になっているし、好きが高じて居酒屋をオープンしたこともある。何とかこの苦境を乗り越えて復活してほしい。

コロナ禍が始まって以来オンライン飲み会なども参加しているが、やはり味気ないし、やっぱり居酒屋に行きたい気持ちは薄れない。

このまま自粛が続き居酒屋はノスタルジーになってしまうのか、または違う形態に変化して新たな居酒屋的なものが生まれるのかここら辺を考察してみたいと思う。

居酒屋を定義すると、もともとは酒屋で飲む行為を「居続けて飲む」ことから「居酒」(いざけ)と称したことから始まる。そうしたことから近隣の住民や仲間内と気兼ねなく交流を持てる場所として機能し、今日至る。
と、wikiに書いてあった。諸説は様々あるだろうが、概ね酒を飲めばおおらかな気持ちになるし、社交場としてちょうどいいサイズであることが居酒屋文化を支えてきたのだろうと想像できる。

諸外国ではどうかというと、ヨーロッパではカフェ、イギリスではパブ、フランスではキャバレー、中国では茶館など宗教的な制約はあれど似たようなシステムは各国に存在し、人間の普遍的な欲求として、「気兼ねなく仲間内と酒を飲む」は存在するのだろう。

もう一つ居酒屋の重要な機能として、簡易的な食事ができることにある。これらは質もさることながらお酒が運ばれてくるタイミングでテンポよく提供されることが重要である。

飲む、つまむ、飲む、を繰り返すことによって酔いが程よく回り、話に花が咲く。挨拶はビールで乾杯し、つまみは枝豆、そこからハイボールなどの少々濃いめの酒を飲み始め、唐揚げをほうばる。最後に芋焼酎のストレートを飲み、塩辛をなめる行為は、コミュニケーションの序章、本章、終章を酒とつまみで表しているようだ。

気兼ねなくというが、居酒屋文化にはしきたりが多く存在し、コミュニケーションにはやはりルールが必要だということも居酒屋は教えてくれる。

まとめると居酒屋の根本的な機能は、仲間内、または近隣住民で気兼ねなくコミュニケーションを取る場であり、そのツールとして酒とつまみの提供を行うところということになるだろう。

もちろん誰ともしゃべらず一人で飲みたい人や、あそこのもつ煮が超うまいからそれだけ食べに行きたいという方もいるだろうが、それはマイノリティということで一旦置いておこう。

ではwithコロナの時代に、この居酒屋機能をどのように再現すると良いのか。

コロナは飛沫感染なので対面での接触にリスクがある。人に咳やくしゃみを飛ばすことや同じ食器で食事をとるなどによって感染するリスクが高まる。少なくとも2mは距離は取り、同じ皿で箸をつつきあうのはリスクと言われている。

この部分が居酒屋にとって致命的な課題となる。そもそも2m離れたコミュニケーションというのが想像つかない。ガヤガヤした店内でまるで相手の声が聞こえないので、耳打ちに近い形になることもしばしばだ。
さらに食事を3-4人分まとめて同じ皿にするというのは、コスト面において居酒屋にとっては重要である。居酒屋をやるとわかるのだが、皿を収納するスペースというのは非常に限られている。皿が買えないのではなく、置く場所がないのだ。また洗い物が増えるのはとてもコストになる。
食事を作る人が皿洗いも兼務すると、なんども手を洗わなくてはいけないし、調理オペレーションが混乱する。よって皿洗い専門の人を配置するしかない。

しかしながら居酒屋における課題はこの2点に集約されると思う。つまりソーシャルディスタンスと食事提供の個別化だ。

一つ目の課題解決方法は割と単純に解決できると思っている。入店制限を設けると良い。例えば30人収容できた店は15人までにし、且つ3人以上の入店を断るなど、お店の規模とコンセプトによって人数による棲み分けを図る。そんなことをしたら売り上げが減るというかもしれないが、客単価と回転率を調整することで解決すると思っている。

例えば平日一日30客 客単価平均3000円 週末一日45客 客単価2800円という店を例にしてみよう。日曜日は休みとする。月の売上げは約250万。これが客単価はそのままで客数が半減すると単純に売り上げは125万/月となる。

客単価を1.3倍にすると月間の売上は160万となる。お客さんにとっては3000円が4000円になるくらいが限界だろう
よって客単価は1.3倍にする。

次に最大客入りが15席とし、それによる機会損失を計算してみる。17時オープンで一日の客入りの流れが19時~22時に24席うまる店と考え、あふれる客は9人と考える。
週末は同時刻に30席埋まる店なのであふれる客は15人。

それでいくと実質の客入りは平日21人、週末30人となり、これに1.3倍の客単価をかけると218万/月となる。テイクアウトやお土産制度、貸し切りによる付加価値など様々なやり方で残りの30万の売り上げはクリアできると考える。

もちろん1.3倍に客単価を上げるのだからサービス付加価値は底上げしなければならないが、今はとてもチャンスだ。このご時世で店の方針を変えましたというのはとても言いやすい。ビール頼みの店の方針をフレーバービールやスパークリング日本酒など、さまざまなハイボールを提供する店に変え一杯300円だったものを400円にし、お通しを豪華にすることで二倍の座席料を取るだけで良い。

次に皿問題だ。これはメニュー開発にかかっていると思う。居酒屋のキラーメニューは鳥だ。鳥は仕入れ価格が安定していて、とてもよく出る。冷凍も効くし利益が取れる。だから唐揚げ盛り合わせをどーんとお店としては出したい。焼き鳥もしかりだ。サラダも取り分け文化である。これを解決するには客が協力するのが良いと思う。

例えば特定のメニューは個人の皿を持っていき、調理場から直に皿においてもらうスタイルに変える。ビュッフェのような形だ。ぎゅーぎゅーに客を詰めるスタイルから、間隔をあけるスタイルに改装するのだから、客はもっと自由に歩けるようになるし、居酒屋はそもそもキッチンと客の距離が近いのだから工夫次第でエンタメ要素も演出できると思う。

これにより人件費も減らすことができるし、サラダの取り分け誰がやる問題や、唐揚げにレモンかけるかけない問題も一気に解決する。

店内にいるバイトは運ぶのが仕事ではなく、客の導線をマネジメントするのが仕事になる。「今唐揚げコーナー空いてますよ~」とか「サラダのタイムサービスはじめたので1番席の方から希望あればどうぞー」などのオペレーションとなる。大声でしゃべるのがダメならフリップに書いてうろうろするなどでもよい。

これらが進むと良い面がもう一つある。おそらく入れない人が多くなるので予約文化が醸成されていく。例えば平日に絶対入れるパスポートを1万円/月で販売することも可能だ。サブスクリプションモデルで安定収益を取ることもできる。予約があるというのは店側にとっても目途が付きやすいし、思い切った仕入れもできる。

今までは安くておいしいものを食べながら仲間内とコミュニケーション取りたいだったが、これから客の意識は安全にコミュニケーションを取りたいに変わっていくと思う。また、店と客は協力関係であるという意識も深まるだろうし、そのようなコンセプトのブランディングをした店は薄利ではあるが末永く生き残るだろう。

そもそも居酒屋はコミュニケーションの場であるから、迷惑をかけるようなコミュニケーションが取れない客は排除されるべきである。

お客と店が協力体制になる。これが今後の居酒屋の在り方になるのではないか。と妄想してみました。

居酒屋ファンとして一日も早く、営業が再開されることを祈っています。

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