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ストレングスファインダー 着想社長の功罪

皆さんはストレングスファインダーをご存知でしょうか?
アメリカの大手調査会社ギャラップが開発した、「人の強み=才能」を見つけ出すツールです。177の質問に答えることでその人の強みとは何かを示してくれるものです。
強みとされる種類は全部で34あり、診断によって上位の5つの強みが表示されます。今日はこのストレングスファインダーにおいて示された私の最大の強み、着想について、その功罪を書き紡いでみたいと思います。

ストレングスファインダーとは

ストレングスファインダー®とは | ストレングス・ラボ / ストレングスファインダーを使った企業研修及び個人講座、人材育成 (strengths-labo.com)

私はこういう診断系のものは結構好きなのです。なぜなら自分を客観視するきっかけになるから。自分の性格や考え方、行動について、「やっぱりなあ」とか「そうだったの?」と感じさせてくれます。それによって自信を深めたり時には反省したりすることもできます。

ストレングスファインダーにも賛否含め様々な意見はあるかと思います。実は私は10年前に初めて受けて、その10年後に再度受けました。つまり2回受けたわけですが、上位5種の強みのうち4つは同じままでした。ひとつは変わっていましたが、8割は変わっていないことから、ある意味私の普遍的な強みを表していると言えると感じています。

私の強み

因みに私の強みを紹介するとこうなります。因みに5つの並びは強い順に示されています。
1着想
2収集心
3最上志向
4内省
5活発性

因みに10年前はこちら
1着想
2内省
3収集心
4最上志向
5共感性

10年前と変わらず1位なのが着想です。
私は学生時代から「アイデアマン」と評されることが多かったこともあり、社会人になっても通販業界での企画屋を自負し相応の結果を出してきましたので、着想が不動の1位であることは自分でも納得です。また社員や取引先からも首肯いただいていたと思います。

着想という強み(才能)を持った私が通販という企画力を活かせる業界で、商品開発や広告企画というアイデアで勝負できる仕事に巡り合えたのは非常にラッキーだったなと思います。

着想の良し悪し

クリフトンストレングスの資質「着想」 | JA - ギャラップ (gallup.com)

ストレングスファインダーはその人の資質を基本的に強みという観点で述べています。なので敢えて言えば「いいこと」しか書いてません。しかし物事にすべて裏表があって、強みも裏から見れば弱みなるとも言えます。

実は着想の強みには裏があります。
創造的や独創的なアイデアを思いつくのが得意ではあるのですが、思いつくことで満足してしまう傾向があります。
言い換えれば、思いつくことが得意なのであって、実行すること、やり遂げることへの関心が薄いのです。

社員時代のことです。
私は常に思いついたことをアイデアとして上司に話していました。
そのすべてではないですが、面白いと思ってもらえると「やってみろ」と言われます。
しかしですね。ほぼやらないのです。
しばらくして上司から「あれ、どうなった?」と聞かれても「なんだっけ???」となることすらしばしば。
結果として「言うだけで何もしない奴」という評価をされる羽目になったこともあります。

そうなんです。
実行力が伴っていないことが問題なのです。

先にあげた私の5つの強みですが、その中にいわゆる行動や実行を示す強みはひとつもありません。10年前も今もです。
例えば「責任感」「目標志向」「達成欲」といった強みは実行力を示す分類になるのですが、見事に私にはない。

一社員であればその弱点は個人の能力の欠如で終わる話でもあるのですが、社長となるとそうは行かなくなることになります。
実はこれが問題だったのです。

着想社長は困りもの

会議や打ち合わせで、着想社長は思いついたことをどんどん言葉にして発します。
思いつき始めるとそれが楽しくなってきてさらに着想が広がっていきます。まさにスイッチオンの状態になると、もはや誰にも止められない。さながら暴走社長の着想垂れ流し状態となっていってしまうのです。

聞かされている社員はたまったものではない!

中には責任感という強みをもった社員もいます。責任感が強いので社長の着想をどのように実行しようかを考え始めるわけですが、その思考中にも関わらず社長は調子に乗って次から次へと新しい思いつきを垂れ流し続けるわけです。

「ちょっといい加減にしてください!」
と怒られたこともありました。
社員に怒られてようやく暴走社長はストップします。
そして、責任感部下は実行プランをようやく言葉にするのですが、着想社長はその時点で自分がどんなアイデアを言ったか覚えてないなんてこともありました。

部下「さっきの件、こんな感じならできそうですね」
社長「えっ?それ何の件だったっけ???」
部下「いや(怒)さっきあんたが自分で言ったんだろうが(怒怒怒)

なんてやり取りもあったりなかったり。

直属の若い部下とのやり取りでもありました。
その部下は着想社長の恐怖を身に染みて分かっているので、私のスイッチが入りそうになるとすかさず
「着想ストップお願いします!!!」
と声を張り上げて止めにかかります。

部下が社長の発言を遮るなんてと思われるかもしれませんが、その思いつきを実行案にまとめて、実際に行動するのはその部下になるわけです。
せめてきちんと話し合って煮詰めていかないと、大変なことになってしまう。

流石に私自身もそのことは理解するようになっていたので、よくぞ止めてくれたと思えるようになりました。
ひとつひとつ内容を吟味して、お互いに中身を確認しながら進めていくことはとても大事なことです。

着想人間は成長するか?

幹部社員のひとりに「着想」と「達成欲」の両方を持つ人がいました。
実際にとても優秀な人で、自らアイデアを思いついたら、自ら即行動をする人です。私のような垂れ流しではなく、自分自身で即行動してやり遂げようとし、実際に成果をあげるわけですから優秀に決まっています。
そういう両面性を持っているならばいいのですが、残念ながら私にはなかった。

ただひとつ感じるのは、社長を10年に亘って務めた結果「活発性」という強みが生まれたことです。活発性という強みは影響力という分類に入る強みなのですが、行動することに関わる強みでもあります。
10年前に表出していなかった「活発性」。それが元々私の中にあったのか、ただ眠っていただけなのかは分かりません。どちらかと言えば自分が活発であると認識したことはあまりなかったというのが本音です。

しかし、着想社長としての数々の失敗ややらかしを経たことで自分なりに「活発性」という強みを後天的に身に付けた成果であり、もしかしたら私の成長とも言えるのかもしれません。

着想社長を活かすには?

着想社長がその着想を活かすために取り組むべきことは、まずは着想の弱点を自ら認識することにあると思います。その上で「責任感」や「達成欲」と言った実行力の強みを持った社員と組んで補完関係を作ることが大事なのだと思います。
ストレングスファインダーというツールを人事に使うことへの是非もあります。これだけで人事や配置を決めるのは行き過ぎです。しかしその人の持っている強み、才能を活かすという動機付けとしては、ひとつの手段かなとも思います。

これは結果論なのですが、私を常に支えてくれた幹部社員はいずれも「責任感」や「達成欲」「慎重さ」といった実行力を示す強みを持っていてくれました。そしてそれぞれのその強みは、自他ともに「確かに!」と納得する強みでもありました。
私の着想垂れ流し気質を補完して支えてくれて、時に叱ってくれたり諫めてくれたことこそ、私が経営者としての職務を全うできた理由であったと思っています。

着想社長はまず自らの着想の弱点も自覚することが大事だと思います。
ストレングスファインダーはどんな資質も強み(=才能)として捉えるツールではありますが、強みと弱みはある種裏表の関係でもあります。そのことを客観的に理解して使うことがツールの使い方としては大事なのだとも思います。

一般的には社員の立場から、着想社長に向けて「着想ストップ!」と諫めることは中々難しいのが実情だと思います。
だからこそ、社長自身が自分自身を客観視することが大事ですし、そのためのツールとしてストレングスファインダーを活用するのもアリかなと思います。


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