弱点を強みに変える
長所と短所はコインの裏表のようなものとはよく言います。
例えば、面倒見がよいことは長所ですが、お節介と言うと短所のニュアンスが生じるような感じのイメージです。これを上手に使うこと、それは言い換えるスキルだと考えています。そしてこのスキルは鍛えることができると思っています。
弱点を強みにしたマーケティングの事例
まずはマーケティングの事例をご紹介したいと思います。
暖房器具にオイルヒーターという種類があります。
ブランドでいうところの「デロンギのオイルヒーター」ですね。
この商品、私の記憶では30年位前に通販生活のカタログ通販商品として
大ヒットして有名になりました。
ヒットを仕掛けた通販生活を発行するカタログハウスの創業者の著書によると、
実はこの商品はじめは全く売れなかったらしいです。
商社も売れずに困っていたほどと書かれています。
なぜなら、あまり暖かくならないからです。
(今の商品は改良されていると思われますが、当時の話です)
暖房ですから暖かくはなるのですが、ほどほどの暖かさという感じ。
当時私の実家でも買いましたので、記憶にありますが、
真冬の木造家屋では、どうにも物足りなかった思い出です。
暖房器具というよりも、補助暖房機として開発されたものだったようです。
その上電気の消費量が多いので、当時の電子レンジやドライヤーと併用すると
はい、ブレーカーが落ちました。
しかしながら、
この商品、結果的に大ヒット商品となりました。
通販生活はこの商品の弱点を強みに変えたのです。
寝室で夜寝る時に使う暖房として広告を変えました。
熱くならずに、ほどほどの暖かさが維持されるので
寝る時の暖房として最適というわけです。
しかもエアコンと違って温風を出さないので、空気が乾燥しない。
夜使う分には、電子レンジと併用するシーンも起こらない。
ほの暗い寝室でベッドとオイルヒーターがある写真とともに
熱くなりすぎないヒーターとして大ヒットしました。
参考文献「なぜ通販で買うのですか 著者斉藤駿 集英社新書」
通販屋のはしくれとして、
私はこの観点の切り替えに大いなる感動を覚えました。
使う場所を変える。
目的を変える。
といった訴求で、
通販は商品のともすれば短所となり得る部分を長所として紹介することができる。
もちろんこれは嘘でも誇大でもありません。
そうした用途で場所と時間を選んで使えば、
もっとも優れた商品としてお客様にご満足いただけるのです。
だから、大ヒットしましたし、
今でもこの訴求は続いています。
まさに視点を変える
観点を変える
通販の商品開発、販売企画の面白さを発見させてくれたエピソードであり、
私はこの考え方に相当の影響を受けて今まで通販に取り組んできました。
言い換えるスキルです。
言い換えるスキルのポイントは二つあります。
・観点の豊富さ
・ボキャブラリーの豊富さ
まずは観点です。
暖房はリビングで使う⇒寝室でも使う
暖房は起きて生活する中で使う⇒寝る時も寒いことはある
暖房は部屋を暖かくする⇒部屋の用途によって求められる暖かさは違う
これは観点を変えていると思うのです。
そして観点は突然頭に降りてくるのではなく、
日ごろから観点となり得る物の見方を意識して
自分の頭の中の書庫に増やしていくことができるものです。
頭の中に書庫がなければ
観点ノートを作って気づきや誰かの教えを書き留めていくのでもいいです。
次にボキャブラリー。
語彙力を高めることです。
これも観点と同じで、単語や言い回しを頭でノートでもに貯えていくだけ。
最近では言い換え辞典も出版されていますし、ネット検索でも出てきますから、
それを活用するのもいいでしょう。
観点を増やして、
それに適した言葉を選ぶ。
とてもシンプルです。
シンプルですが、その分日頃からの意識づけは大事です。
私は意識低い系ではありますが、
この分野については意識高い系です。
お節介という言葉の言い換えを探すと自分に意識づけておくだけで、
新聞雑誌、テレビなどのメディアで使われる言葉に敏感になります。
本屋さんで書籍や雑誌の表紙を眺めているだけでも、
参考になる言い回しはたくさん見つかります。
今からでもできる言い換えトレーニングなので、
興味のある方はぜひお試しください。
人材育成に応用してみる
さて、話は変わって
人の短所と長所の話です。
冒頭で、面倒見とお節介の話を書きました。
他にもこんな事例がありました。
・言い換え事例
頑固→芯が強い
マイペース→何事にも落ち着いて対処できる
プライドが高い→上昇志向
落ち着きがない→行動力がある
人の真似をする→洞察力がある
1人で抱え込む→責任感が強い
諦めが悪い→忍耐力がある
引用元 言い換え例35選|短所を長所に変える方法と選考への役立て方を解説 | PORT就活 (theport.jp)
おそらく他にもたくさんあるでしょう。
これもオイルヒーターの事例と同じように考えてみます。
※人と物を敢えて一緒にしてます。
その特性が活かせる状況、時間、
所属する組織やその仕事の目指す目的
これらによって、短所と思われていた個性が長所になることもあります。
例えばこんなことがありました。
企画部署に配属されたA君は、よく言えば慎重、悪く言えば行動力に欠けるところがあり、
新しい企画に取り組んでも、中々実行まで至りません。
失敗したらとか、何かトラブルが起きたらと考えすぎてしまい、
新しい取り組みを実行しようとしてもどうも尻込みをしてしまう。
しかし会社としてはその部門には失敗してもいい。
トラブルがあれば上司や他部署がカバーするから、
多少のリスクを背負っても野心的に新しいことを実行することを求めます。
結果的にA君は消極的という判断がなされて
他部署へ異動することとなりました。
そこで、異動したのはシステム部門のセキュリティー部門です。
セキュリティーですから、慎重さやリスク予測、リスクマネジメントが任務です。
当然彼の慎重さ、悪く言えば臆病さが才能として発揮されることになります。
元にいた企画部署と対立することもありましたが、
それが彼の役割であることは誰もが分かっていますからトラブルには至りません。
こうして書くとありきたりの話にも思いますが、
これがありきたりなら、
会社や組織で起こる様々なトラブルはもっと減っていいはずです。
しかし、
組織のトラブルはなくなりませんし、
人間関係の不満や愚痴はあちらこちらに溢れています。
この解決についても
最初の観点とボキャブラリーの蓄積をして
言葉の選び方、使い方で解消できることはあると思います。
口先の小細工と思う方もいるかもしれませんが、
いえいえ、そんなことはありません。
問題に注目して解決する方法を考えているだけでも小細工ではないです。
ましてや、観点とは相手の立場に立って考えることでもありますし、
その立場にとって最適な言葉を探し選び声にするのですから、
小細工でできる芸当ではないと
私は思っています。
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