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『トノバン』を観る

今日は朝から雨模様です。塩尻市街地の少し外れにある知る人ぞ知る映画館、東座で映画『トノバン 音楽家 加藤和彦とその時代』を観て来ました。本日はその感想文です。

華麗なるキャリアと業績

作品のタイトルである『トノバン』とは、音楽家・加藤和彦氏(1947/3/23-2009/10/16)の愛称です。

加藤氏は、龍谷大学の学生だった20歳の時、ザ・フォーク・クルセイダーズで制作した『帰って来たヨッパライ』(1967)が空前の大ヒットを記録し、デビューを果たすと、1971年には北山修氏と名作『あの素晴らしい愛をもう一度』を発表。その後、伝説のバンドと言われる、サディスティック・ミカ・バンドのリーダーとして活躍するなど、革新的な活動の数々で、日本音楽史に多大な功績をした人物だと言われます。

この作品の企画・構成・監督・プロデュースを手掛けた相原裕美氏が、加藤和彦氏に興味を持ったのは、昨年惜しくも亡くなった高橋幸宏氏(1952/6/6-2023/1/12)が、生前に語った「トノバンって、もう少し評価されても良いのじゃないかな? 今だったら、ぼくも話すことができるけど」ということばだったようです。

私が前々から興味のあった塩尻の映画館、東座で本作が上映中であることを知ったのは昨日のことで、瞬時に「これは絶対に観ておかないと後悔する」と直感しました。本日11:50からの回に間に合うように着いたら、既に駐車場はかなり混雑しており、狭い待合ロビーにも人が集まっていました。年齢的に、私よりも上に見える方々ばかりで、おそらくは加藤氏の音楽をon timeで楽しんでいたファンの方々なのでしょう。

運命... これも縁

私が加藤和彦氏の名を覚えていたのは、ザ・フォーク・クルセイダーズ時代からの盟友であり、精神科医でもある北山修(きたやまおさむ)氏の著作を何冊か読んでいたからです。

映画を観たことで、これまで知らなかったことが次々と知れて、目から鱗でした。そして、色んなことが繋がっていきました。サディスティック・ミカ・バンドは、ボーカルが加藤ミカ氏(加藤和彦氏の妻)、高中正義氏(G)、小原令氏(B)、高橋幸宏氏(Ds)、今井裕氏(Key)という超一流のプレーヤーが在籍したバンドであることは知っていましたが、ビートルズの作品にも携わっていた英国の大物プロデューサー、クリス・トーマス(Chris Thomas 1947/1/13- )がプロデュースしていること、つのだ☆ひろ氏がオリジナルメンバーだったこと、などは知りませんでした。また、加藤氏が吉田拓郎氏の『結婚しようよ』や泉谷しげる氏の『春夏秋冬』をプロデュースしていること、竹内まりあ氏のデビューに関与していること、坂崎幸之助氏と密接な交流があることも知りませんでした。

加藤氏が、一流のものを見分ける眼力の持ち主であり、大変粋な人であり、二番煎じを嫌い先進的なものをいち早く取り入れる革新的な人であり、料理や洋服にもセンスを発揮した人であったことが偲ばれました。晩年は不遇であったことは、敢えて映画では触れられていなかったように思います。

加藤和彦という唯一無二の才能が、日本に存在していたことを本日知れたのは、何か運命の導きがあったような気がしています。感謝の気持ちで一杯です。

解説記事などでは余り触れられることは無いようですが、加藤氏は細身ながら、190㎝近い長身でした。このことは、彼の人格や考え方に何か影響を与えていたような気がしました。

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