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辺境の地、日本で暮らせる愉悦

『120日間チャレンジ』という一人企画を静かに進行させています。期間中にドラマチックなことは何も起こらないかもしれないし、大きな変化を巻き起こすかもしれません。本日は、『辺境の地になった日本 生き残る道は世界の“古都”』(日経ビジネス_2022年3月)という記事を読んだ感想から、自分の思いを膨らませてみます。

ノンフィクション作家・高野秀行氏

内容は、世界を旅するノンフィクション作家・高野秀行氏へのインタビュー記事です。前半、日本の現状を語っている高野氏の弁はなかなか辛辣です。

冒頭に、高野氏は日本の成田空港のみすぼらしさを指摘していますが、私も2010年頃までは、外国人にとっての日本のゲートウェイの立ち位置にある新東京国際空港(成田空港)のショボさは何とかならないものか、税金を投入してでも必要なアップグレードをして欲しいと思っていました。

ただ、私の感触では、日本の成田空港だけが断トツで酷いかというと、必ずしもそうではありません。ニューヨークのJFK空港もかなり老朽化していて古臭い印象を与える空港ですし、パリのシャルル・ド・ゴール空港やドイツのフランクフルト空港も旅行客の利便性を考えた場合、「?」と感じます。空港に莫大な金をかけてアピールしようとするのは、ここ数年で着実に経済成長し、これから上を目指していこうと意気込む新興国のお家芸のような気もしています。

重要な視点

日本が、今や国際社会の中で最先端を行く国でないことは流石に自明でしょう。滑り落ちていく速度が年々加速しているのもおそらくは事実でしょう。その厳然たる事実と限界を直視し、高野氏が日本の生きる道として、「世界における古都になる」という視点を提案しているのは、理にかなっていると感じます。

政治的にも経済的にも先端科学の面でも影響力がない場所ではあるものの、伝統文化や豊かな食文化、自然景観といったものがある。

アジアでは、経済成長とともに原風景が急速に失われつつあるが、日本の田舎では時計が停まったかのように、昔の風景と文化が維持されている、という主張には同意します。

こういった歴史的な蓄積や豊かな自然風景や食文化、ローカル文化の多様性といったものは、外国人がつくろうとしてもつくれるものではない。「日本はすごい」と言っているのと、「日本は経済も政治も科学技術もだめだ」と言っているのは全く矛盾しない。

そして、これは活路を見出すという戦略的な話ではなくて、当然の帰結だという分析です。先進国に相応しい立場から滑り落ちて影響力がなくなっていることに不本意な気持ちも湧きますが、辺境の「古都」として生き延びるのは悪くない未来だという気もします。

あるものを活かす

ベンチマークする国として、かつて栄華を誇ったスペインやポルトガルを挙げているのも、いいセンスだと思います。いずれは、日本の経済水準や国際的地位もその程度の位置に落ち着きそうな気がします。

日本の潜在的な観光資源は、スペインやポルトガルよりも優っている気はします。辺境の地で、あるものを活かして国を運営していくことは、また違った愉悦をもたらすかもしれません。

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