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金曜日の随筆:『アクティブ・ノンアクション(active non-action)』の問題を考えてみる

また運命を動かしていく金曜日がやって来ました。2020年のWK41です。本日は、私の28年半の会社員生活を振り返って、『アクティブ・ノンアクション(active non-action)』の問題を考えてみようと思います。


『アクティブ・ノンアクション(active non-action)』とは?

朝のルーチンであるVoicy『荒木博行のbook cafe』を聞いていて、荒木マスターがコメント返しの中で引用していたのが耳に止まり(こんな言い方あるのだろうか…)調べてみました。 

『アクティブ・ノンアクション』(active non-action)とは、行動的な不行動、不毛な忙しさ、多忙ではあるが目的を伴う意識的行動をとっていないこと、の意味を含んでいます。
このコンセプトは、もともとは、哲学者ルキウス・アンナエウス・セネカが言及した『busy idleness』(あくせくしながらも結果として何もしないこと:怠惰な多忙)を起点にしているのだそうです。

村山昇/『アクティブ・ノンアクション』:不毛な忙しさ から抜粋

忙しい=充実している と思っていた頃

私がまだ20代、会社員になって数年の頃は、目の前にやることが山のようにあること、長時間バリバリ働くことを肯定する気持ちが強くありました。仕事を”ライスワーク”と割り切って働くような生温い発想は微塵もなく、毎日定時退社して、自宅で晩酌を楽しむような生活をする人達に対して、「そんな人生で面白いの?」と揶揄する気持ちを持っていたことも認めます。

入社して希望通りに海外部門に配属され、意気に感じる部分もありました。世界を舞台にビジネスに従事する経験は新鮮でしたから、
● 周囲から求められている以上のクオリティを出す……
● 先輩に追い付き追い越せでスキルを磨き、自分の成長を加速させる……
● 力をつけて、世の中でデカい役割を担ってやる……
と気負って仕事に励んでいました。

雇用する側も、生意気で空回りも多いものの、自主性と馬力があり、手堅い実務処理能力も備えつつあった当時の私は、労働力としてはそこそこ使い勝手のいい便利な存在であり、まあ生温かい目で見守ってやろうか、という対象だったのでしょう。

当時は、次々と起こる事象を清濁併せ呑んで、貪欲に吸収することが必要な時代だったんだと思います。俯瞰すれば、組織の求めるオペレーションの一角を担い、下っ端仕事をひたすらこなすだけの歯車ではありましたが、「不毛な忙しさ」だったと卑下する気持ちはありません。このへんは、現在の若手ビジネスマンとは意見を異にするかもしれません。

私の仕事観

私の仕事観は「楽な仕事なんて存在しない」です。個人によって、好き・嫌い、向き・不向き、運・不運があるだけ。仕事と呼ばれるものには、辛くて許容したくない要素があるのは当たり前で、我慢や忍耐と無縁の仕事なんてない、と思っています。

この場合の仕事とは対価を伴うものをイメージして言っています。仕事の場では、担う役割に付随する業務内容と責任を引き受けなければならないと思います。自分がやりたくない業務、無駄だと考えている業務、苦手意識のある業務を、対案もなく批判したり、勝手に無視したり、他人に押し付けたりするのは身勝手だと思うのです。

『アクティブ・ノンアクション』を経験すると

こういう頑なな性分だったので、業務や責任を無用に抱え込んだり、逆に強硬に拒否したり、働くことに対する柔軟性が不足していたかもしれないなあ、と思います。問題解決力ややり過ごし方の引き出しが少なかったと思います。

私は、管理職になって数年くらいした頃から『アクティブ・ノンアクション』の日々を生きている、と虚無的になっていきました。自分の使える時間が自分の都合以外の要因で埋められていき、本音と建前を使い分ける日々に不満が募っていきました。考える気力が衰え、流れに身を任せる方が楽になっていきました。批判能力や問題発見能力、問題解決能力が目に見えて衰え、去勢され、見事に豚になってしまったようです。

では、どうするか?

私の28年半の会社員生活全てが、『アクティブ・ノンアクション』の日々だったとまで言うつもりはありません。ただこれから先、イベントや予定や義務がぎっしり詰まっている忙しい組織人の生活に戻ることは考えられません。会社員として一番長時間働いていた頃にこなしていた仕事量を今でもやれる自信はありません。歯車人生はもう十分にやりきった、とあえて言わせてもらいます。

強制力も拘束力も弱い現在の状態はちょっとよろしくないなあ、という感覚はあります。またこれから先、どこかの組織に頭を下げ、ライスワーク(今なら許容できます!)に舞い戻る可能性はあります。その時でも、負荷を自分でコントロールできる状態だけは維持しておきたいなあと考えています。

今週の格言・名言《2020/10/5-11》

When you decide to create your best possible future, passion bubbles us from a deep within to guide you.
最高の未来を決めると、情熱が深いところから湧いてくる

Freedom is what we do with what has been done to us.
ー Jean Paul Sartre, Philosopher, write/France
人間は自由であり、つねに自分自身の選択によって行動すべきものである。
ー ジャン=ポール・サルトル、哲学者、作家/フランス

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