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『もらとりあむタマ子』を観る

本日は、映画『もらとりあむタマ子』の鑑賞記です。

偶然知った作品

この映画のことはネットサーフィンをしていて、偶然知りました。監督は山下敦宏さん、脚本は向井康介さん、主人公のタマ子を演じるのは、元AKB48の前田敦子さんで2013年の作品になります。主題歌の『季節』という曲は星野源さんが提供しています。

不思議な空気感の映画

第一印象は、「よくこんな映画を……」というものでした。この映画のプロデューサーの齋見泰正氏は、

決め手は「ダラダラしたあっちゃんは可愛いに違いない」という軽く妄想気味なものでした -プロダクションノート より抜粋

と説明しています。この言葉の通り、「前田敦子の為の映画」です。

東京の大学を卒業して、甲府の実家に戻ったタマ子の日常生活を、秋~冬~春~夏の季節の移り変わりと共に描いていく作品です。劇的な事件も起きないし、社会生活から距離を置いて引き籠り、時々悪態をつきながら、静かに時間が流れていきます。決して好感度の高くない主人公になぜか共感を寄せて観てしまいました。

女優、前田敦子の魅力

前田敦子さんは、大人気アイドルグループのAKB48在籍時代は、「不動のセンター」を務めていました。正直に言うと、プロデューサーの秋元康氏が数あるメンバーの中から、なぜ彼女を発掘してセンターのポジションに抜擢したのか、ファンから絶大な人気を集めたのか、私にはその理由と魅力がよくわかりませんでした。今もわかっているとは言えません。

業界人には、彼女の資質を高く評価する人が少なくないことを知りました。齋見泰正氏はこう言います。

ちょうど完成したばかりの山下敦弘監督作『苦役列車』を鑑賞しました。魅力的な男優さん達の好演の中で、前田敦子さんの、その80年代の空気に自然と収まりながら、生々しくも芯の強い存在感が印象に残っていました。今までも前田さんの演技はドラマや映画などで観ていましたが、現代を代表するアイドルとしての輝きと同時に、真逆の孤独感のようなものをまとっている感じがとても魅力的に感じていたところに、これまた独特の世界観を持つ山下作品の中で、まさに化学反応を起こしているなと感じました。
-プロダクションノート より抜粋

なるほど…… そう言われると、不思議な存在感があるかもしれません。欅坂46の中心メンバーだった平手友梨奈さんにも似たものを感じます。秋元氏の、スターになるタレントの資質を見抜く目は確かなんだと感心します。

モラトリアム…

モラトリアム【moratorium】
1.支払い猶予。支払い延期。
2.差し当たり実施を中止すること。棚上げにすること。
3.人間が成長して、なお社会的義務の遂行を猶予される期間。また、その猶予にとどまろうとする心理状態。「ー人間」
ー 広辞苑 第6版

私はごりごりのモラトリアム肯定論者です。歯を食い縛って懸命に現実と向き合う生き方の方が、遥かに素晴らしいとは思います。それでも、生き辛いと感じる時期には、素直に活動を停止する行動はOKだと思っています。

世の中の流れに逆らって歩みを停止していると、罪悪感はあります。求められていない環境に飛び込んで、自力で実績を積み上げていかないと何も始まりません。でもそれが酷く辛い時だってあります。タマ子の行動や言動をみていて、改めて考えてしまう時間でした。


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