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名言が与えてくれるもの34:時が来たら、誇りをもって、脇へどけ

誰もが、心に響いた名言を持っていると思います。名言が与えてくれるものシリーズの第34回は、『時が来たら、誇りをもって、脇へどけ』です。「いいことばだなあ...…」と、ただただ感心して噛み締めるだけでは駄目なのであって、実践に移してこそ価値のある深いことばだと思っています。


エーリッヒ・ケストナーのことば

このことばは、ドイツの詩人・作家のエーリッヒ・ケストナー(Erich Kästner 1899/2/23-1974/7/29) の『警告』という詩の一節です。全文は以下の通りになるようです。

人生を愛せよ 死を思え
時が来たら 誇りをもって 脇にどけ
一度は生きなければならない それが第一の掟で
一度だけ生きることが許される それが第二の掟だ

警告
エーリッヒ・ケストナー(Erich Kästner 1899/2/23-1974/7/29)

ケストナーの生きた時代は、ドイツ帝国の世界的台頭~第一次世界大戦の勃発・敗戦~ワイマール共和国の成立~ナチスの台頭~第二次世界大戦・敗戦~ドイツの分断 と続く激動の20世紀でした。ナチスの弾圧にも屈することなく、したたかに生き延びた気骨溢れる知識人だったと言われます。

大女優、樹木希林の口癖

2018年に75歳で亡くなった唯一無二の個性派女優、樹木希林(1943/1/15-2018/9/15)さんは、このことばを気に入り、普段から自分に言い聞かせるように使っていたと言われています。

多くの人から愛され、慕われた希林さんは、私も大好きだった素晴らしい女優さんです。とりわけ、がん宣告を受けてからの晩年の生きる姿勢は、素晴らしかったと思います。あのような、清々しい生き方・逝き方に憧れます。希林さんが亡くなられた後に読んだ『一切なりゆき 樹木希林のことば』(文春新書2018)は、深く感銘を受けた一冊で、今も横浜の自宅の書棚に大切に並べています。

実践したい生き方だけど……

このことばは、私が大事にしたい価値観とも強く共鳴します。多くの日本人にも求められる生き方ではないか、と思っています。私は、地位や名誉や生に必要以上に執着せず、潮時と感じた時には、誇りをもって脇へどきたい、と真剣に思ってきました。過去にも、似たような考えを吐露した記事を書いています。

ただ、”時が来たら”の”時”は、自分自身では、なかなかわからないものなのかもしれません。仮にうっすらと、その気配を感じ取っていたとしても、色々なものが邪魔をして、実行に移すのはかなり難しいような気もします。その見極めができるかどうかこそ、人間としての真価を問われる場面だと思います。

こうして記事にすることで、このことばが訴求してくるイメージを、自分の心に深く刻んでおこうと思います。その時が来るまでは、精一杯務めを果たしたいという前向きな気持ちで一旦締めておきます。

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