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2022箱根駅伝(復路)観戦記

駅伝観戦三昧の最終日は、第98回東京箱根間往復大学駅伝競走(復路)の観戦記です。

第6区 20.8㎞ 芦ノ湖〜小田原

往路・復路・総合の完全優勝、大会新記録での優勝を狙う青山学院大学が、氷点下の8時に箱根町芦ノ湖畔をスタートします。2位の帝京大学とは2分37秒差、3位の駒澤大学とは3分28秒差の大量リードを持って、チームの副将を務める高橋選手が飛び出していきました。

昨年区間3位の好走を見せ、57分30秒での走破を期待されていた四年生の高橋選手は、箱根山中でやや精彩を欠く走りとなりました。それでも最後は意地の走りで、残り3㎞を踏ん張り、七区中継では、2位にあがった駒澤大学に、10秒詰め寄られただけにとどめました。59分3秒(区間8位)は、本人に納得のいかない不本意な結果かもしれませんが、総合優勝に向けては、後続に追撃ムードの狼煙をあげさせない十分な走りでした。

連覇に向けて逆転優勝を狙う駒澤大学は、大八木監督が『超攻撃的オーダー』を組み、四名を当日変更してきました。昨年八区で好走した四年生の佃選手が区間6位にまとめ、帝京大学をかわして、2位へと順位を上げてきました。5位からスタートした順天堂大学の主将、牧瀬選手が好調で、区間賞を獲得するアグレッシブな走りで、チーム順位を3位に押し上げました。

後続では、法政大学のルーキー、武田選手が区間2位の走りで、10位と9秒差の11位へ進出する活躍を見せた他、初出場の駿河台大学・小泉選手は、繰り上げ一斉スタートながら、区間3位の力走でした。

区間賞 牧瀬圭斗(順天堂大学4年)58分22秒

第7区 21.3㎞ 小田原〜平塚

青山学院大学は、チームのエース格で、ルーキーイヤーに花の二区を快走して優勝の立役者になった岸本選手をこの区間に起用してきました。12月初旬の故障の影響を考慮して、往路の主要区間への起用は回避されたようです。さすがに実力者の走りで、青山学院大学今大会初の区間賞を獲得しました。2位に4分51秒もの大量リードを築き、残る区間の顔触れから見て、総合優勝を決定づける走りとなりました。

逆転優勝に向けて何とか射程圏内へ肉薄したかった駒澤大学ですが、白鳥選手が追ってきた順天堂大学・西澤選手に一時は逆転され、中継点では1秒差まで詰め寄られる苦しいレースとなりました。区間順位も10位に終わり、2位は何とか死守したものの、首位とは4分51秒差に広がってしまいました。

予選1位通過で、経験者と実力者が揃いながら、往路ではほとんど見せ場を作れなかった明治大学が、富田選手の区間2位の好走で14位に浮上してきました。東海大学期待のルーキー、越選手も二人を抜き、区間3位と健闘しました。

区間賞 岸本大紀(青山学院大学3年)1時間2分39秒

第8区 21.4㎞ 平塚〜戸塚

悠然とトップを独走の青山学院大学は、エース区間を走ってもおかしくない実力者の佐藤選手を起用してきました。本調子ではなかったものの、難所の遊行寺の上り坂も無難にこなして区間2位でまとめ、2位と4分32秒の大量リードを保ち、笑顔で九区にタスキを渡しました。

2位の駒澤大学・鈴木選手は、10000m27分41秒のベストタイムを持つ今大会注目のランナーの一人です。1秒後ろからスタートの順天堂大学・津田選手と共に区間記録を更新するペースで追い上げをはかりますが、15㎞過ぎに右脚の古傷を再び痛めるアクシデントに襲われ、区間18位に沈みました。チーム順位も6位へと後退し、駒澤大学の連覇は絶望的となってしまいました。

5区出走の経験もある津田選手は区間賞の好走で、順天堂大学が2位に進出してきました。そしてその1分55秒差の3位には、中澤選手の区間3位の好走で中央大学が上がってきました。東京国際大学、創価大学、駒澤大学も僅差で続いています。

シード権争いは、主将の橋本選手が不調で順位を下げた7位帝京大学(-49秒)、8位東海大学(-46秒)、9位東洋大学(-45秒)、10位國學院大學(±0)、11位早稲田大学(+44秒)、12位法政大学(+50秒)が当落線上にひしめき、例年通り熾烈です。

区間賞 津田将希(順天堂大学4年)1時間4分29秒

第9区 23.1㎞ 戸塚〜鶴見

青山学院大学は、チーム指折りの実力者の中村選手が、スタートから快調なペースを刻み、2位で追ってくる順天堂大学のエース格、野村選手を全く寄せ付けません。中村選手は、従来の区間記録を14年ぶりに46秒も更新する区間新記録を樹立し、2位との差を7分56秒まで広げました。昨年、花の二区に抜擢されたものの区間14位に沈んだ借りを返す会心の走りでした。レース終盤にきて、青山学院大学の復路新記録、総合新記録更新の可能性が俄然高まってきました。

順天堂大学が2位、湯浅選手が区間3位の走りで踏ん張った中央大学が3位を守り、実力者の山野選手が力走した駒澤大学が何とか4位まで巻き返してきました。シード権争いの混戦に巻き込まれていた國學院大學は、期待のルーキー、平泉選手が区間2位の快走を披露し、10位から一気に5位へとジャンプアップする鮮烈デビューを飾りました。

初出場の駿河台大学は、タスキを繋げましたが、後方で苦しむ山梨学院大学、日本体育大学の二校は、区間新記録の煽りを受け、トップ通過から20分の制限時間に間に合わず、無念の繰り上げスタートとなりました。

区間賞 中村唯翔(青山学院大学3年)1時間7分15秒=区間新

第10区 23.0㎞ 鶴見〜大手町

二年連続で青山学院大学のアンカーを任された中倉選手は、大量リードに守られながらも、復路記録、総合記録の更新を狙って、前半から緩めることなくハイペースで進めていきました。完全な一人旅、タイムとの闘いながら、中倉選手の健脚はゴールまで全く衰えることを見せず、従来の区間記録を50秒も更新する好記録をマークし、チームは復路新記録・大会新記録で大手町のゴールに飛び込みました。

2位には、現役ラストランの四年生、近藤選手がポジションを守った順天堂大学。連覇を目指した駒澤大学は、懸命に追いすがる東洋大学・清野選手を、青柿選手がゴール手前で何とか振り切って3位を確保しました。九区、十区が底力を発揮して巻き返した東洋大学が4位に入り、5位には復路での見せ場こそ少なかったものの、全員が着実に粘った東京国際大学が入りました。大健闘の中央大学は、井上主将が3人に抜かれたものの、6位で久々のシード権を獲得しました。

以下、創価大学、國學院大學、帝京大学と有力校が順当にシード権を獲得し、最後の一枚は、後半ブレーキを起こしてペースダウンしてしまった東海大学・吉富選手を、川上選手がゴール1㎞手前で逆転した法政大学がもぎ取りました。ゴール後にばったり倒れ込んだ四年生・吉富選手の心中、いかがなものでしょうか。

予選会から出場の中央大学、法政大学がシード権を奪回した一方で、噛み合わない展開が続いた強豪の東海大学、早稲田大学がシード権を失いました。初出場の駿河台大学はタスキを途切れさせることなく、阪本主将が笑顔でフィニッシュしました。

区間賞 中倉啓敦(青山学院大学3年)1時間7分50秒=区間新

最終結果

【総合】
① 青山学院大学 10時間43分42秒=総合新記録
② 順天堂大学 10時間54分33秒
③ 駒澤大学 10時間54分57秒
④ 東洋大学 10時間54分59秒
⑤ 東京国際大学 10時間55分14秒
【復路】
① 青山学院大学 5時間21分36秒=復路新記録
② 東洋大学 5時間26分25秒
③ 明治大学 5時間28分08秒
④ 東京国際大学 5時間28分19秒
⑤ 順天堂大学 5時間28分23秒

勝手に寸評

復路は、青山学院大学の強さばかりが際立つレースでした。前日の往路終了後の原監督の自信満々のコメントを裏付けるように、復路ではライバル校との競争をよそに、自ら掲げたタイムを目標に、選手がそれぞれの持ち味を発揮しての横綱相撲でした。

七区岸本選手の区間賞の快走で優勝を決定付けると、九区、十区の連続区間新記録は圧巻でした。原監督就任後、六度目となる今回の優勝は、更に進化した『青学時代』の到来を予期させるものでした。良質な進化と強化のサイクルが回っています。盤石な体制を築いた青山学院大学の牙城を崩すチームは、来シーズン現れるのでしょうか? 

2-4位に入った順天堂大学、駒澤大学、東洋大学は、失敗区間が惜しまれるものの、随所に地力を発揮しました。

順天堂大学は、一区の出遅れが悔やまれます。二区の三浦選手も不発に終わりながら、以降の区間で力のある選手がカバーし、挽回しての2位は見事でした。長門監督の指導の徹底と選手層の底上げが着実に進んでいることを感じさせ、有力選手が順当に走れば勝てる力があるチームであることを証明しました。

連覇を狙った駒澤大学は、大砲の田澤選手が二区で本領発揮したものの、その他のブレーキ区間が響き、よい波に乗り切れないままレースを終えました。下級生が多く残る来年度は更に強力なチームとなるでしょう。

往路はやや精彩を欠いた形で終わった東洋大学は、復路での挽回は見事でした。来年は今回欠場した石田選手を加え、再び優勝を争える強力チームへと返り咲きそうです。

最終的にシード権を獲得した東京国際大学、創価大学、國學院大學は、ミスもありパーフェクトではないものの着実に上位に入りました。今大会で、新興チームから強豪校の仲間入りをしたと言えるでしょう。

シード権を逃した東海大学、早稲田大学は、多数の有力ランナーを抱えながら、チーム力として嚙み合わない悔やまれるレースとなってしまいました。来年は予選会からの再起に期待します。

ひとまず、2022年の私の駅伝三昧の日々は本日で幕を下ろし、明日からは通常note投稿に戻ります。

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