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私の好きだった曲⑤:シーズ・オブ・ラブ

本日は『私の好きだった曲』シリーズの第五弾で、ティアーズ・フォー・フィアーズ(Tears For Fears)『シーズ・オブ・ラブ Sowing The Seeds Of Love』です。

今、再評価が必要な楽曲

この曲は、イギリス・バース出身の二人組、ティアーズ・フォー・フィアーズが1989年に発売した3枚目のアルバム『シーズ・オブ・ラブ The Seeds Of Love』に先行する形でシングルカットされ、全英チャートで5位、全米チャート(Billboard Top 100)では2位の大ヒットを記録しています。日本でもCMに使用され、ヒットしました。

原題をそのまま訳すと、「愛の種を撒こう」です。Sowing the seeds of love...… と連呼するフレーズに、下を向いて日々を過ごしている人たちに「希望を持って生きていこう」という背中を押すような力を感じさせます。

発表されてから30年以上経つ曲ですが、先行き不安な気分に包まれている現代で、再評価されてもいい曲だと思います。彼らの歌詞には示唆的なものが多いのですが、

Time to eat all your words, swallow your pride, open your eyes...

と続く部分は、なかなか味わい深いものがあります。

ティアーズ・フォー・フィアーズとは

ティアーズ・フォー・フィアーズ(以下TFF)は、ローランド・オーザバル(Roland Orzabal 1961/8/22-)とカート・スミス(Curt Smith 1961/6/24-)の二人組のユニットです。

1983年にアルバム『ザ・ハーティング The Hurting』でデビュー。いきなり全英チャートNo.1を記録し、順調なスタートを切ります。TFFを世界的に有名にしたのは、1984年発売のセカンドアルバム『シャウト Songs from the Big Chair』で、全世界累計で1,000万枚近いセールスを記録しています。

シングルカットされた『シャウト Shout』、『ルール・ザ・ワールド Everybody Wants to Rule The World』は、全米チャートNo.1を獲得しています。特に『ルール・ザ・ワールド』は根強い人気のある名曲で、多くのアーティストがカバーしています。米国では、2021年3月13日付の「オルタナティヴ・デジタル・ソング・セールス(Alternative Digital Song Sales)」チャートで1位を獲得し、36年振りのリバイバルヒットとなりました。

当初の楽曲は、シンセサイザーが多用され、ハイセンスでポップな楽曲には不釣り合いな社会風刺的でシリアスな歌詞が魅力でした。三作目の『シーズ・オブ・ラブ』はより実験色が強く、長い年月と多額の製作費を投じ、多くの犠牲を払って、難産の末に生み出された作品です。

TFFのこだわり要素が詰め込まれた『シーズ・オブ・ラブ』は、レコードセースルや興行的には大成功を収めたものの、ツアー終了後にカート・スミスが脱退し、TFFは分裂します。その後、2000年頃に二人の関係は修復され、現在は二人での活動が継続されています。

当時は何気なく聴いていたけれど…

初めて聴いた時から、いいなあと思った曲でした。マイナーとメジャーを絶妙にミックスさせて、サイケデリック感と屈折した空気感をまとったメロディーラインが魅力的でした。

ただ、当時の私に刺さっていたのは、メロディが美しいという要素だけで、TFFがこの楽曲に込めていた魂の叫びを掘り当てよう、聴き込もうという意欲はありませんでした。

この曲がヒットしていた1989年、私はもう21歳になっていました。音楽に興味と関心を全集中する時期は過ぎ去っていました。日本経済が絶好調で、先行きに楽観と明るさが漂い、バブル的な空気もじわっと広がり始めていました。音楽以外にも関心が向き始めていました。

曲調がビートルズのサージェント・ペパーズ……っぽいなあ…… というのは気付いていましたが、それ以上深く詮索することもありませんでした。「ビートルズのぱくり」という批判があるようですが、”オマージュ”、”本歌取り”は立派な音楽的手法です。むしろセンスを褒め称えるべきでしょう。

今、改めて聴き直して、考えること、感じることの多い曲です。

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