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【追悼】エディ・ヴァン・ヘイレン

ネットニュースでエディ・ヴァン・ヘイレン(Edward Lodewijk Van Halen 1955/1/26-2020/10/6)の訃報を知りました。2012年頃に舌癌が再発し、闘病生活を続けていたようです。享年65歳、合掌です。

最高のギターテクニシャン

エドワード・ヴァン・ヘイレン、通称エディは、私がロックを聴き始めた頃、最高峰の超絶技巧を誇るギタリストでした。

ギタリストはロックバンドの花形です。古くは、英国出身のエリック・クラプトン、ジェフ・ベック、ジミー・ペイジを「三大ギタリスト」と呼び、「ベック天才、ペイジ商才、クラプトンは枯れた人」なんていう標語もありました。

エディは間違いなくギターヒーローの系譜に連なる存在であり、ロックギターの演奏に革新的なスタイルを持ち込んだ革命児です。登場時に世界に与えた衝撃度では、ジミ・ヘンドリクスと双璧を成す存在ではないでしょうか。

エディの代名詞は、右手の指先で弦をフィンガー・ボードに叩きつけたり、引っ掛けて弾いたりするライトハンド奏法です。ヴァン・ヘイレンのデビューアルバム『炎の導火線 Van Halen』(1978年)に収められたインストゥルメンタル楽曲『暗闇の爆撃 Eruption』のギターソロはこの技巧を駆使したもので、"度肝を抜かれた"と公言するアーティストが多数います。

エディは、ライトハンド奏法だけではなく、圧倒的な速弾き技術、ピッキング・ハーモニクス、チョーキング、アーミングなどの高度な技巧を苦もなく自在に操り、世界中のギター少年達を虜にしました。ヘッドに"Kramer"と印字された赤いオリジナルペイントのストラトモデルのギターを軽やかに弾きまくるエディの姿にロック少年達は狂喜乱舞しました。

ヴァン・ヘイレンでの成功

エディは、Van Halen(オランダ語読みはファン・ハーレン)という姓からも想像できる通り、オランダ系の出自です。1960年代に一家で米国・カリフォルニア州パサデナに移住し、その地で育ちます。

エディが、ギター以外にも多彩な楽器の演奏ができ、正統的なクラシック音楽のセンスが感じられるのは、幼少期からピアノやヴァイオリンを演奏する環境で育ったことが影響していると言われます。

彼の在籍したロックバンド、ヴァン・ヘイレンは、実兄でドラムのアレックス・ヴァン・ヘイレン、ボーカルのデイブ・リー・ロス、ベースのマイケル・アンソニーの四人で1978年にデビューしました。

6枚目のアルバム『1984』は全世界で1000万枚以上のセールスを記録し、大胆にシンセサイザーを導入したシングル曲『ジャンプ Jump』は全米No.1ヒットを記録しています。1980年代の米国を代表するヘビーメタル/ハードロックバンドに君臨していました。

1980年代にはアメリカ西海岸から「LAメタル」と称されるヘビーメタルバンドが多数輩出されましたが、ヴァン・ヘイレンはそういったバンド群とは一線を画し、「格が違う」存在だったように思います。

私は、1985年にデイブ・リー・ロスが脱退し、ボーカルがサミー・ヘイガ-に交代して以降のヴァン・ヘイレンには興味を喪い、余り熱心に作品をフォローしなくなりましたが、バンドはメンバーチェンジを繰り返しながら、今も活動を継続中です。2007年にはロックの殿堂入りも果たしています。

伝説の名演

エディの名を一躍高めたのが、当時人気絶頂だったマイケル・ジャクソンの『今夜はビート・イット Beat It』の中で披露したギターソロでしょう。誰もが一度は聴いたであろう、最高に格好いいあのフレーズです。ロック史に残る伝説の名演と言ってもよいでしょう。

Wikipediaには様々なエピソードが書かれています。

● エドワード・ヴァン・ヘイレンは、最初にクインシー・ジョーンズから連絡を受けたとき、いたずら電話かと思った。その電話が本物であることを確認した彼は、ギタリストのアラン・ホールズワースから借りたハーリー・トンプソンのアンプを使用し、ギター・ソロを無料で録音した。
● クインシー・ジョーンズとマイケル・ジャクソンがこの曲の「スケルトン・バージョン」をエディの家に持参しギター・ソロは録音された。
● ギタリストのスティーヴ・ルカサーは「最初、エディが良いソロを弾いてとてもロックだったんだがクインシーが強すぎるというんだ。だから自分はディストーションギターのサウンドを減らさなければならなかった。それがリリースされたんだ」と回顧する。二つのバージョンのギター・ソロが録音された。
● エディのギター・ソロが始まる直前、誰かがドアをノックするような音が聞こえる。一説にはエディのレコーディング・スタジオに入ってきた人だとも言われる。別の話では、自分のギターを叩いたのだとされる。だが実際にはその音はマイケル・ジャクソンがドラムケースを叩いた音であるとアルバムのライナー・ノーツに記されている。
● エンジニア達は、レコーディングの最中にエディのソロの音でコントロール・ルームのモニタースピーカーが火を噴いたことに驚き、「これは本当にすごいものに違いない!」と叫ぶに至った。
ー Wikipediaから抜粋

私がその昔に耳にして(ネタはおそらく小林克也の『ベストヒットUSA』)信じていたのは、
● エディの参加は、マイケル自身が切望した。
● ある日、マイケルがレコーディング中のスタジオにふらっと現れたエディが、一発録りで収録した。
という話でした。真相はよくわかりません。

この曲のリズムギターを弾いたのが、TOTOのギタリストであり、スタジオミュージシャンとしても超一流の名手スティーブ・ルカサーですから、何とも豪華です。日本なら、布袋寅泰と松本孝弘が競演する感じでしょうか。

素晴らしいギタリストで憧れの存在でした。
心からご冥福をお祈りいたします。


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