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日本の凋落を吹聴する人々が狙っていること

本日は、世に溢れている日本の凋落や衰退を騒ぎ立てる数多の記事が、一体全体何を目的にしているのか、現時点での自分なりに意見を纏めておこうと思います。少々荷が重い記事ですが、これから先に見返した時に、もう少し深い示唆が得られるように、定点観測的に記しておきます。

日本凋落を煽る言動が溢れている

日本の国際社会・国際経済における存在感の低下は明らかであり、加速度的に衰退国家への道を歩んでいる、というのが私の基本認識であり、肌感覚です。実際、日本の凋落は多くの人が指摘する所ですし、かつて『ジャパン・アズ・ナンバーワン』のような風潮まであったことを考えると隔世の感があり、寂しい気持ちはあります。

国力の凋落の証拠らしきものは、至る所で多数現れてきています。昨今の対ドルでの急激な円安進行も、先々への不安・自信喪失を加速させる要因となりそうです。日本経済のファンダメンタルズ指標の弱さを指摘されたり、国際競争力ランキングでの順位低落傾向を示されたりすると、どうしても気持ちが悲観的になります。

とはいえ、日本衰退論の評論は玉石混淆です。中には明らかにおかしな論考を平気で吹聴したり、基本的姿勢がただただ日本の劣等性を指摘して貶めることに終始して、溜飲を下げることを目的にしてしまっているような著名人もいたりします。行き過ぎた卑下や、特定の人物や組織に責任を押し付ける極論もまた問題と感じる瞬間があります。

疑念を持っているある有名投資家の言動

私は、日本のメディアにも度々登場するジム・ロジャーズ(Jim Rogers 1942/10/19-)氏の言動や論説には、疑念と不信感を抱いています。

”冒険投資家”、ロジャーズ氏は、”オマハの賢人”、ウォーレン・バフェット(Warren Edward Buffett 1930/8/30- )氏、”イングランド銀行を潰した男”、ジョージ・ソロス(George Soros 1930/8/12-)氏と並んで世界三大投資家と称されることもある影響力のある投資家です。

ロジャーズ氏は、1970年代にソロス氏と設立したクォンタム・ファンド(Quantum Group of Funds)で、驚異的なリターンを達成したのをはじめ、ヘッジファンドの先駆者として長年確たる実績を残してきた存在です。親日派・知日派ともされています。

近年の日本には批判的で、少子高齢化による人口減少、増え続ける政府セクターの巨大な財政赤字に対して警鐘を鳴らし続けています。特に安倍政権には辛辣で、日本の構造的課題に抜本的対策を講じず、紙幣の増刷で自国通貨を弱めるアベノミクスに対して極めて批判的な主張を繰り返してきました。対照的に、中国・韓国・北朝鮮の将来性を高く評価してきました。

私は、ロジャーズ氏の主張は、投資家としてのポジショントークであり、自分の主義主張と相容れず、自らの投資方針には不都合に働く日本の運営指針全般が気に入らないだけなのではないか、と疑っています。彼の語った内容の記事を読む限り、日本の抱える問題の深層を本気で慮っての発言だとは、どうしても思えないのです。人当たりがよく、人間味のある振る舞いをする人物だということは認めるものの、日本を見る眼は、あくまでも国際経済の一パーツとしてなのだと思うのです。

ロジャーズ氏の名声を援用しようとする動き

ロジャーズ氏の発言を観察すると、反アベノミクス派には都合が良いと思われる主張が多々含まれているように感じます。

90‐00年代の「失われた20年」の時代には主流の考えだったものの、アベノミクス一派の登場によって、日本経済停滞の元凶と糾弾されて傍流に押しやられ、肩身の狭い思いを続けてきた従来のエリート層の復権がはじまりそうです。財政収支バランス重視派、伝統的金融政策回帰派の盛り返しです。

私は、ごりごりのアベノミクス支持ではないものの、覆い尽くしていた閉塞感からの脱却をはかる起爆剤にはなった、という意味では、アベノミクスには一定の評価を与えるべき、という立場です。岸田首相の優柔不断による従来型経済政策への回帰には、大いなる不安を感じています。ロジャーズ氏が日本のメディアへの露出が多いのは、その存在を都合が良いと考える集団が日本国内に一定数いるからではないのか? との疑念を抱いています。

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