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Super30

本日は、2002年にインド北部ビハール州のパトナに設立された貧しい家庭出身の子どもに限定して受け入れる無料塾、『Super30』についての情報整理です。

映画化もされた取り組み

Super30は、塾長を務めるアーナンド・クマール氏(Anand Kumar 1973/1/1-)が個人で立ち上げたプロジェクトです。

クマール氏自身も、数学に非凡な才能を発揮し、論文が認められてケンブリッジ大学から入学許可を得たものの、家庭が貧しくて渡航費を捻出できなかった為、留学機会を奪われたという経験を持っています。Super30は、才能がありながら、お金が理由で教育機会を奪われてしまう悲劇を繰り返させてはならない、というクマール氏の強い信念で立ち上げたプログラムだということです。

この塾で学べるのは、貧しい家庭に育つ学業成績優秀な子どもたちです。塾生の中からは、世界最難関校であるインド工科大学(IIT)に多数の合格者を出しており、卒業後は世界最先端のテック企業や高等研究機関で活躍している人材を多数輩出しています。アーナンド氏の傑出した活動は、『スーパー30 アーナンド先生の教室 Super30』(2019)という映画化もされています。

ハングリー精神 教育は成功への近道

インドでは、教育は成功への近道だと信じられていると言います。 Super30に選抜された子ども達には、貧困からの脱出には教育が重要な役割を果たすという強い信念があり、ハングリー精神の原動力となって無尽蔵の努力にも耐えられる、いう説明がなされています。

かつての日本にも似たような風潮はあり、田舎の貧しい家庭で生まれ育った子どもが、立身出世によって自らの人生を切り拓く物語がちらほら見られました。ただ、昨今はとんと聞かれなくなった気がします。有名校の入学者の多くは、富裕層家庭の子弟が占め、ガムシャラな努力には冷ややかな視線が注がれる傾向もあります。ワンチャンとか、ガチャとか、ざわつくことばが平然と横行しています。

早々に自分の人生を達観して努力を諦め、退廃的で安定志向な生き方に流れる傾向も強くなっている気がします。恵まれない家庭環境に生まれた子どもが、益々夢を見られない国、一生浮上することはないという閉塞感が支配的な国に成り下がってきており、国力の衰退に拍車がかかっています。 Super30の日本版が必要な時期に来ているのかもしれません。

日本へのエール

インドは親日の傾向が強いと言われていますが、アーナンド氏も、日本や日本人に対して、極めて好意的なコメントを残してくれています。

彼が言うように、インドの貧困層に育つ子どもと比較すれば、日本の子どもは遥かに恵まれた状況にあります。だからこそ、もっと頑張って勉強や研究や仕事をして、世界に貢献して欲しい、それが成功した国、日本に暮らす日本人の責務である、とアーナンド氏はエールを贈ってくれます。

アーナンド氏が取り組んでいることや教育に注ぐ姿勢は素晴らしいし、 Super30を巣立った卒業生が成し遂げた偉業は感嘆すべきものです。ただ、アーナンド氏も認めているように、貧しい家庭の子ども全てを救済するプロジェクトではなく、埋もれてしまう才能の一部を掬い上げて磨き上げる選抜の取り組みではあります。徹底的な競争原理が支えていることには、一抹不安を覚えました。

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