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Markover 50 の読んだ本

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Markover 50の読んできた本の読書感想文を収めています。
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#内田樹

『凱風館日乗』を読む

本日は、内田樹『凱風館日乗』(河出書房出版2024)の読書感想文です。週末プチ旅の移動の合間に挑みました。読了して、今の自分が漠然と考えているようなことを、クリアに表現されているフレーズに次々と出会うことができ、腹落ちするとともに、とても幸せな気持ちに包まれることができた一冊でした。 丁寧に語りかける論客最近、内田樹氏の著作を読む機会が急激に増えてきました。読む本の選択を、著者の好き/嫌いで判断するのはできるだけ避けたいと思いますが、自分の関心時についてどう考えているのか、

『サル化する世界』を読む

昨日はお酒の酔いのまわりが酷くて、頭が全然働かず、身体の自由も効かず、部屋に戻って早々にベッドに倒れ込んだ為、またしても『毎日note』の連続投稿記録がストップしてしまいました。また、振り出しに戻るですが、気分一新で進めていこうと思います。本日の内田樹『サル化する世界』(文芸春秋2020)の読書感想文から、再開です。読了しておらず、特定の部分を抜き出しての感想です。 定期的に意見を拝聴する論客著者の内田樹氏(1950/9/30-)の著作はよく読んでおり、自分に許している本の

『評価と贈与の経済学』を再読する

本日は、松本へ帰って来る電車の中で再読してまた学ぶことの多かった、内田樹・岡田斗司夫『評価と贈与の経済学』(徳間文庫カレッジ2015)の読書感想文です。 軽い気持ちで読める本タイトルはかなり仰々しいものの、実際には軽い気持ちで読み進めて、全く問題のない本です。内田樹氏も、岡田斗司夫氏も好きな人物だし、語っている内容には共鳴する部分が多く、再読なのに改めて引き込まれました。 この本のもとになっている対談自体は、2011年9月に行われています。 本日の読書感想文は、【第六章

『下流志向』を読む

本日は、内田樹『下流志向 学ばない子どもたち働かない若者たち』(講談社2007)の「第四章 質疑応答」を読んでの読書感想文です。 内田樹氏の鋭い筆本書は、内田氏の数多い著作の中でも話題になった書だと思います。内田氏の書かれる書籍はこれまで頻繁に読んできたものの、私程度の知力では内田氏の思考の深みには、なかなかついていけません。ここは何となく自分の感じていることと違うなあ、これはちょっと違和感があるなあと反発を感じても、氏の広い守備範囲と深い知的教養、高い文章構成力で納得させ

『1984』的社会の住人

本日は、内田樹『コロナ後の世界』(文藝春秋2021)の中の「1984年のディストピア」(P135-153)を読んでの読書感想文になります。 ディストピアは小説の世界ではなく『1984』は、小説家ジョージ・オーウェル(George Orwell 1903/6/25-1950/1/21)が1949年に発表した作品です。内田氏は、最初に読んだ時にはリアリティを感じなかったが、新訳版で読み返すと、小説の世界と現実の日本の境い目がわからなくなっている、と言っています。 社会心理学で

構造主義の土台 マルクス・フロイト・ニーチェ

先日から読み始めた内田樹『寝ながら学べる構造主義』(文春新書2002)を無事読了しました。内田氏の記述は期待通り見事で、理解の難しい内容でも楽しく読み通すことができました。 構造主義が登場してくる上での思想の土台となっている、マルクス・フロイト・ニーチェを簡潔に扱っている『第一章 先人はこうして「地ならし」したー構造主義前史』(P16~58)の読書ノートを残します。 いずれ劣らぬ思想史上の巨星なので、今後何度か彼らの遺した思想や業績に触れ直す機会もあるでしょう。自分の手を

入門書の醍醐味

近所のBOOK-OFFで購入し、読み始めたばかりの内田樹『寝ながら学べる構造主義』(文春新書2002)のまえがきがとても面白くて、腹落ちしたので学びのノートを書き残します。 時間を持つ人間の強い味方 BOOK-OFFもうかれこれ20年以上、BOOK-OFFには売買でお世話になっています。 引っ越し時や毎年年末には、自宅の本棚に入りきらなくなっている本や雑誌やCDを売却してきました。定期的なセールもチェックして、掘り出し物がないか漁ったりもします。出張時の空き時間にふらりと

『「原っぱ」という社会がほしい』を読む

本日は、橋本治『「原っぱ」という社会がほしい』(河出新書2021)の読書感想文です。 ほんわかした頭のいいオジさん、と慕っていた人私は、本書を購入するまで橋本治氏(1948/3/25-2019/1/29)が亡くなっていたことを知りませんでした。誠に失礼ながら、小説家・評論家・随筆家として活躍された橋本氏を、私は「ほんわかした頭のいいオジさん」と勝手に想像して、慕っていました。橋本氏の文体や対象を扱う視点や議論の切り取り方が好きでした。享年70歳。早過ぎる死だと思います。