これまで5回にわたって、『参拝の効果を感じられない時に覚えておきたいこと』と題して、神社参拝において気をつけたいこと、意識すべきことをお伝えして来ました。
月参りや、神社参拝を行っていらっしゃる方には、今の自分自身や、環境に納得がいかず、現状を打破したいという思いを強くお持ちの方も多いかと思います。
また、ご自身やご家族の病が快癒することを願い、切実な思いで参拝される方もいらっしゃることでしょう。
人それぞれ、神社参拝には思いがあるものです。そうした皆さんの願いが、少しでも神様に聞き遂げられること、そして神社という素晴らしい空間との邂逅を多くの方に果たしていただけることが、私の喜びでもあります。
今回は、これまでの5回のコラムを分かりやすく、まとめています。ここに挙げましたことを実践していただければ、今まで以上に神様との距離が近づくはずです。
詳細につきましては、リンク先の各記事をご参照ください。
鳥居
写真撮影
三密(身口意)
願いごと
服装
寅吉が語る神様
江戸時代後期を代表する(*)国学者、神道家である平田篤胤の代表的著書『仙境異聞』に初めて触れたのは、確か10代か20代の頃。浮世離れした、ファンタジックな世界に魅了されたものです。
これは平田篤胤という学者(医者でもある)が、寅吉という少年に徹底したインタビューを行って書き上げた一級のジャーナリスティックな著作なのです。
その内容は、大体このような感じ。
文化9年(1812年)の4月、寅吉が7歳ころのこと。東叡山(上野寛永寺)の山の下で遊んでいて、黒門前の五条天神あたりを見ていると、奇妙な風体の老翁が小さな壺から丸薬を取り出して売っていました。
商売のために並べていた籠や敷物が次々と、その小さな壺に納められていき、ついには老翁が壺に片足を入れたと思った途端、全身が吸い込まれて壺に納まってしまいました。壺はそのまま大空高く浮き上がると、どこへやら飛び去ってしまったのでした。
この奇妙な様子を見ていた寅吉は、毎日のように同じ場所に通い続けて観察をするのです。
そしてある日、老翁は寅吉に「お前もこの壺に入りなさい。面白いことなどを見せてやろう」と声を掛けます。寅吉は老翁とともに壺に乗って常陸国の南台丈(難台山)へと向かうのです。
老翁の正体は杉山僧正という位の高い(正一位)天狗(山人)であり、ここで寅吉は様々な修行を積み、杉山僧正とともに(*)幽冥界や、外国を旅して見聞を広げます。
15歳になった寅吉は、平田篤胤と出会い、見聞きしてきた天狗の世界のこと、幽冥界のこと、外国や宇宙のことまでを語って聞かせています。これが平田篤胤の書いた『仙境異聞』にまとめられました。
詳しくは『仙境異聞・勝五郎再生記聞』平田篤胤著(岩波文庫)をご一読下さい。
この『仙境異聞』の中に、興味深い一文がありますので、ご紹介しましょう。
平田篤胤の門人たちが集まって、金がないことを嘆いていました。それを見た寅吉が、門人たちにこのようなことを話します。
寅吉は、全ての山々に神がいらっしゃらない山はなく、山人(天狗)のいない山もないと話します。世間では山人のいることに気付いておらず、そこに住む山人は祈願を聞いてそれを遂げさせるべく、日々忙しく動いているのだそうです。
神社へ祈願をする際、それが「独りよがりの、よこしまな願い」ではないのか、自らに問うことも必要なようです。
寅吉と、平田篤胤については、またの機会にお話しできればと思います。