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相続税の基礎控除と6つの控除について・税理士がつぶやく相続税の基本

さて本日のテーマは、相続税の控除についてです。
相続税には、全部で7つの控除が定めされています。
状況によって使用できる控除が違いますが、相続税額を割り出すために欠かせないものです。
今回は、そんな7つの控除を紹介していきます。

控除とは?

控除とは、簡単に言うと税金の課税対象とはしないと定められている部分です。
税金の対象としないことで納税者への過度の負担を避けたり、制度の使用を促したりということを目的に定められています。
知らないまま申告してしまうと必要以上の税金を支払ってしまう場合もあるので是非、参考にしてみてください。

基礎控除

基礎控除は相続税を計算する際、必ず遺産総額から差し引かれる控除です。
控除額の計算は、以下の通りです。

控除額 = 3,000万円 + (600万円 × 法定相続人の人数)

相続税を計算する際まず、遺産総額を割り出した後にこの基礎控除額を差し引きます。
その後の、残った金額が相続税の対象額になります。
法定相続人について知りたい方は、別記事で説明していますのでよかったら読んでみてください。

配偶者控除

故人の配偶者が相続人になる場合、配偶者控除が受けられます。
配偶者が相続する財産額が1億6,000万円まで、または配偶者の法定相続分相当額までが相続税の対象外になります。

この配偶者控除額は、配偶者が遺産分割などで実際に取得した財産を基に計算されることになっています。

したがって、相続税の申告期限(被相続人の死亡日の翌日から10ヵ月)までに分割されていない財産は対象になりません。
遺産分割協議などが長引き、相続税の申告期限までに相続分が判明しない場合、相続税申告時に「申告期限後3年以内の分割見込書」を添付することで申告期限から3年以内に分割した時は、適用することができます。

贈与税控除

生前贈与などで被相続人(亡くなった方)から相続人に贈与があった場合、現行3年以内(注)に行われた贈与は、相続税税の対象になります。
しかし、贈与時に贈与税を納税していた場合、相続税の計算時に支払った贈与税分が控除されます。
この制度がないと二重徴税になってしまいますからね。

現行3年以内(注)について
令和4年12月16日に公表された、「令和5年税制改正大綱」にて7年へ改正されると記載されています。
この点については、別記事を書いていますのでよろしければご覧ください。

未成年者控除

未成年者控除を受ける条件は、下記のとおりです。

  • 相続や遺贈を受けたときに日本国内住所がある人

  • 相続や遺贈で財産を取得したとき18歳未満である人(令和4年3月31日以前は、20歳)

  • 相続や遺贈で財産を取得した人が法定相続人であること

相続税の控除なので財産を取得することが前提です。
計算方法は、相続人が成人するまでの年数につき10万円となります。
1年未満の年数がある場合は、切り捨てて計算します。
例えば15歳9ヶ月で相続があった場合、15歳として計算し下記のようになります。

控除額30万円 = (18歳 ー 15歳)×10万円

この控除額が未成年者が相続した財産の額を超える場合、未成年者の扶養義務者の相続税額から控除することとなります。
扶養義務者は、3親等内の親族のうち一定の者を指します。
ここで詳しくは、書きませんが、いわゆる保護者と言いたいところですがちょっとニュアンスが違います。保護者は、3親等内の親族でなくとも成れる事もありますので。

また、未成年者のうちに2回目以降の相続が発生した場合、(例えば父の他界後、何年後かに母が他界するなど)控除額が制限されることがあります。

未成年者が相続を受ける場合、遺産分割協議への参加ができないため家庭裁判所に特別代理人を選任してもらう必要があります。

障害者控除

障害者控除を受ける条件は、以下のとおりです

  • 相続や遺贈を受けたときに日本国内住所がある人

  • 相続や遺贈で財産を取得したときに障害者である人

  • 相続や遺贈で財産を取得した人が法定相続人であること

未成年者控除とよく似ていますね。
計算方法は、障害者が満85歳になるまでの年数ににつき10万円(特別障害者の場合1年につき20万円)となります。
未成年者控除と違い一年未満の期間がある場合切り上げます。

例えば40歳8ヶ月の方の場合、85歳から引いて44年と4ヶ月。
この4ヶ月を切り上げて45年とします。

障害者が相続した財産額が控除額より少なかった場合は、未成年控除と同じく扶養義務者の相続分からの控除となります。
また、障害者控除も2回目以降の相続の場合は、控除額が制限されることがあります。

相次相続控除

相次相続とは、簡単に言うと今回の相続開始前10年以内に今回の被相続人(亡くなった方)が相続等で取得した財産を相続する場合のことを言います。

例えば、祖父が亡くなって父が相続をしたのち10年以内に父が亡くなり子供が父の財産を相続した。
という様な状況が相次相続にあたります。

この控除を受ける条件は、下記のとおりです。

  1. 相続人であること(相続を放棄や権利を失っていないこと)

  2. その相続の開始前10年以内に開始した相続により被相続人が財産を取得していること。

  3. その相続の開始前10年以内に開始した相続により取得した財産について被相続人に対して相続税が課税されたこと。

この条件について上記の例えで説明すると、

1.については、子が今回の相続で財産を取得していることが条件としています。
財産を取得しないと相続税がかからず、相続税がかからないと控除する意味がないので当然ですね。

2.について、父が10年以内に祖父(誰でもいいんですが)から財産を相続していることという意味です。

3.に関しては、2の相続時に父が相続税を払っている事、としています。
例えで父としていますが、ここまで書いた控除のどれかに当てはまり控除額が相続財産額を超えて相続税がゼロになっていた場合この相次相続控除は、受けれません。

相次相続控除の計算方法ですがちょと複雑になるので機会があれば別記事にしようと思います。

外国税額控除

例えば、相続によって取得した財産の中に海外にある財産を取得したとします。
海外にも相続税に相当する課税が存在する国があるので日本と海外で二重課税になってしまうおそれがあります。
そこで海外で課税された分は、日本の相続税から差し引こうというのが、外国税額控除になります。

当然、日本の相続税額以上に海外で税金を支払っても日本で税金が返ってくるなんて事はありません。
控除される額は、日本での相続税額内の額になります。
例えば、海外で600万円の税金を納め日本の相続税額が1,000万円だとすれば600万円控除されて400万円が相続税額になります。

終わり

ちょっと長くなりましたが相続税の7つの控除を紹介しました。
機会があれば個々の控除について詳しく説明した記事も書けたらと思います。

当税理士事務所では、相続相談にも力を入れておりますので是非、ご相談下さい。

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