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2匹の猫だけができること


うちの実家には、猫が2匹いる。

三毛の小五郎さんと、黒猫のルナさんである。


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野良猫出身の小五郎さんは足が短く気難しく、後から来たまだ子猫のルナを今でもあまりよく思っていない。ルナが遊びたくて近くに行くと、こっちをみて「あーーーー来た、来たよーママーー、なんかきたよーーーーー、なんとかしてよーーー嫌なのよーーー」と文句を言う。

ルナの方は能天気で、文句を言われてもシャーされても気にせず、そこにおもちゃがあれば遊ぶし、そこに人間がいれば登る。本当に何も考えていない。本能のままだ。


一方のわたしはというと、常に頭の中に「あーあれやらなきゃ」「あの仕事いつやろ」「そういえばあれいつ入れよう」「あの人に連絡しなきゃだった」「チキンラーメン食べたい」「このCMの女優さん少し年取ったな」など、常に頭の中には、渋谷の街頭ビジョン並みに言葉や思考が流れては消え、意識してメモしないと忘れ、メモしてもそのメモをどっかにやってしまい、ふとした時に出てきて青ざめる、その繰り返しだ。多動症、と言われるがまさにそうで、動いていないと不安、頭の中も同様で、とにさくいつでも止まっていると不安なのである。体が止まっているならせめて頭だけは動かさねば、と、考えなきゃいけないことや考えたくないけど脳の襞に隠していたメモを掘り起こして眺めて唸っている。

多動症でいうとルナもそうだ。猫らしくない。投げたおもちゃを持ってくる姿など、ほとんど犬だ。我が家には犬らしい猫と、気難しい猫がいる。


なので、ルナと小五郎さんとこのおもちゃで遊んでいる時は非常に忙しい。


動くもの全てに反応してかけずり回る犬風猫と、それが目障りだけど自分も遊びたい気難しい猫。その二人の間で、両者を満足させるおもちゃ捌きを見せなければならない。かけずり回るルナが小五郎さんの方へ行かないように配慮も必要だ。そのために、このおもちゃは実は二つあるのだ。両手をちぎれんばかりに広げて、右岸と左岸が交わらないように、思いっきりぶんぶんする。視界に両猫を捕らえて、どちらもが楽しんでいることを確認しながら、肩の筋肉の限界に挑戦する。



そうこうしているとき、

わたしの頭は無になっていた。チキンラーメンも仕事の納期も既読無視しているLINEも全部、一回忘れていた。タスクを手放した脳みそが、ふーーっとため息をついたのが聞こえた。



2匹の猫と同時に遊ぶ。

ふわふわしてなにをしても可愛い生き物を2匹楽しませるという使命に加え、身体を使ったマルチタスクをこなしている時、脳はひとり 休息している。



まりさ

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