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読書日記

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#本

読書日記*死にたがりの君に贈る物語

『#読書の秋2021』の課題図書に『死にたがりの君に贈る物語』という本があって読んでみた。 知らないうちに涙が落ち、一気に読み終えた。 最初は何も情報を入れないで、ちょっと斜に構えた感想を書いてみようかと思っていたら、この作者の想いを読んでしまった。 もうただの感想は書けない。 純恋のようにファンレターを書いてみようと思う。 ただ著者が読んでくれればそれでいい。 ※下記、ファンレターですがネタバレを含みます。 綾崎隼さまへ 『死にたがりの君に贈る物語』電子書籍で読ませて

読書日記*時空を超える物語『楽園のカンヴァス』原田マハ

わたしは物語の中にしかない時間を、これほどまでに美しく描いている作品にあったことがない。 キュレーターふたりの目線と伝説のコレクターバイラーの目線、絵の中のヤドヴィカとそして巨匠ルソーとピカソの想い。 この物語は巨匠ルソーの名作『夢』に酷似した絵の真贋判定をめぐって時間が流れる。「正しく真贋判定をした者に絵を譲る」と伝説のコレクターが選んだキュレーターに告げ、物語が展開していく。 交差する時間の中に、すっと入っていける。 作中の真贋を図る『夢をみた』という作品が、ほんと

読書日記*HSP『表参道のセレブ犬とカバーニャ要塞の野良犬』若林正恭 著

オードリーの若林正恭さんを、わたしは姉弟のような目線で見てしまう。たまに会うと笑って話せるんだけど、なんとなく似た者同士だし、でもあぶなっかしくて見てられないというかなんだか落ち着かない、みたいな。 その繊細なこころでよくお笑いという世界を選んだねー、と姉はすごく尊敬する。 お笑いがわからないわたしは、この本を読みながら、笑いのツボはわかったし、それがとてもうれしかった。もし一緒にその場面にいたら、同じことを考えて笑ったかなと。 この本のレビューを見ていると、みなさん「

読書日記*闇とは光とは何か『教団X』中村文則

この世界に闇はある?光はある?と、物理的なことじゃなく考えてる。人はだれも自分の中に闇があって、光を求めて生きている。光だと思って安心していると突然、闇の中へ放りこまれ、また光を探してさまよい歩く。 光があっても、それが当然になり、暗さが欲しくなり闇が忍び寄ることに、ぞくぞくする感覚を覚えてしまう。 こどもの頃、大人になりたいと願ったのは、闇を持った大人たちを真似したいからだろう。 失敗しない(負けない)ゲームは、おもしろくないから、不幸は少しずつ心に入り込み、やがてそれが

読書日記*言葉の力を知る『本日は、お日柄もよく』原田マハ

言葉は、その場の空気を一変させる。 この本は、伝説のスピーチライターの祝辞に衝撃を受けた主人公が、スピーチライターという道を選んで悩みながらも進んでいく、お仕事小説。 わたしはこの本を読んで、ますます言葉というものの力を知った。 言葉にはチカラがあって、人を感動させ、勇気を与え、生きるチカラになる。 最近のわたしは、こうやって毎日、書いている。 言葉を、組み合わせて、伝えることが難しくて、勇気がいって、でも、誰かのこころに響いてくれているかもしれないと、書く。 たぶん

読書日記*恋の終わりは人を強くするのか『白いしるし』西加奈子

”女32歳、独身。誰かにのめりこんで傷つくことを恐れ、恋を遠ざけていた”主人公の恋物語。 今回もネタバレなしですが、もやもやとした人への気もちに向き合うことを、とっても考えた本です。 職業柄、絵を描く人間や、音楽を扱う人間に会うことが多いが、それは、そういう人間によくある特徴だった。自分のもやもやとした、でも確実にある「思い」を、ぴたりと言い当てる「言葉」を考えつかない。無理に言い表すと、そこに僅かでも齟齬がうまれるから、言葉を使うことを手放し、それを絵画や、音楽で表現する

読書日記*ああ面白かったと感じることが夢『ひとりずもう』さくらももこ

さくらももこさんの本は、笑いながら泣けてしまうことがある。 繊細すぎる感性で、イタく感じてしまったりかわいいと笑ってしまったり。お亡くなりになるまで、まる子ちゃんそのままのような、こどもの感性の人だったみたい。 この本はさくらさんが漫画家になるまでを書いた自伝エッセイ…なんだけどまるでまる子ちゃんが話しているような世界。笑ってしまうけれど、まっすぐでやさしい。 片想いの終わりと共に、自分自身への挑戦がやってきた。もうくだらない夢を見ている場合じゃない。まずは明日、紙とペン