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一番に手を挙げる勇気

ホテルプロジェクトの話をすると、広島出身なの?と大抵の人に聞かれますが、はじめて広島に行ったのは、大学院の2年生。建築学会が広島大学で行われるということで、ゼミ旅行を兼ねての広島訪問でした。学会の開催に合わせて、数人の若手建築家がトークイベントを企画していました。その主催のひとりが、私の尊敬している建築家の谷尻誠さんでした。

建築学生だった私は、何かの雑誌で“毘沙門の家”(FLOAT)を見て衝撃を受けて以後、すっかり作品のファンになっていました。オープンデスクに行こうと計画を立てたこともありましたが、当時は広島にしか事務所が無かったので、旅費・宿泊費・食費を考えると貧乏学生には予算的に厳しく、どうして埼玉に生まれてしまったのかと無念さを抑えていました。

その谷尻さんに実際に会えるチャンス!!絶対にお近づきになりたいと、作戦を立て、そわそわしながら広島に向かったのです。

学会発表の前日、平和記念公園にほど近い川沿いのカフェテラスでのトークイベント。トークも終盤となり、命運をかけたその時がやってきました。
「質問はありますか?」――「はい!!!」
私は、勇気を振り絞って、誰よりも先に手を挙げました。今となっては、その時に何を質問したのか、全く覚えていません。正直、内容なんて大して重要ではなく、“一番に質問をした学生”として印象に残ることが狙いでした。そして、イベント終了後の懇親会で、「先ほど最初に質問をした者です」とご挨拶に行きました。

一番に質問する作戦は奏功し、積極的な学生として覚えて頂くことができました。その後も谷尻さんが東京でお仕事をする際にお手伝いをしたり、オープンハウスにお誘いいただいたり、なぜか一緒に餅つきをしたり、、、10年経ったいま、ついに、一緒にお仕事をする機会を得ることができました。

いつか一緒に仕事をするという夢。いまはまだスタートラインに立ったばかりですが、10年前に質問タイムで一番に手を挙げた勇気が、今の状況を生み出すことにつながっているのです。

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