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鑑賞ログ数珠つなぎ「どうやらビターソウル」

ある作品を観たら、次はその脚本家や監督、役者の関わった別の作品を観たみたくなるものである。まるで数珠つなぎのように。
前回:映画「ジュラシック・ワールド/新たなる支配者」

数珠つなぎ経緯

自分の公演が終わると、誰かの公演を見に行きたくなる。
「何見に行こうかなぁ」と思った時、真っ先に見るのは本多劇場グループ公式HP。今やっている公演、観たいものが、見つかる。

あ・・・!

本多劇場でやっているのは、KERA・MAP「しびれ雲」。
観たい、確かに見たい。だがチケット完売。
まぁいいわ。だって、ケラさんの世界はちょいと前に見たばかりだし・・・なんて強がりを言ってみたり。

とスズナリで公演中の舞台が目に入る。

「世界は笑う」でさらにスキが高まった大倉さんがやっているユニットが公演中だと!?

・・・と前売りは完売しているものの、当日引換券は行けそう。
観たい!観るしかない!

ということでポチっとした。

あらすじ

あらすじというか。触れ込み?を引用。

”役に立たない演劇”を標榜し、演劇界にぼんやりとした何とも言えない感じを与え続ける大倉孝二とブルー&スカイのユニット「ジョンソン&ジャクソン」 4年ぶりの公演!ノゾエ征爾、佐藤真弓、渡辺真起子ら強力な客演陣が集結!

役に立たない演劇、かぁ。いいな。それって何だろうな。
わくわくを胸に、通いなれたスズナリへ。なんだかよく行っている。スズナリで上演される公演みがち。これ演劇あるあるかも。

当日引換券の人

当日券という、キャンセルで空きが出た席に案内されるパターンは経験があるけれど、開演前は通路として利用していたスペースに、自分で椅子を持ってセッティングしてから座るというのは初めてだった。スタッフの方に「椅子が重いので気を付けて下さい」って渡されて、折り畳み椅子の重量ってタカが知れてるでしょ、って思って受け取ったらマジで重くてびっくりした。何が練り込まれてんだ、あの椅子は。

引換券で受付したのはわたしが一番だったらしく、前から2列目に座れたのはとても嬉しかった(ちなみに最前列はちょっと小さい椅子で長時間はつらそう)。

案内されるまでステージ前の通路で待機してたからセットをガン見できたのもよかった。

こんな感じのセット↗

「あぁそういう風に使うんだ」
「うわ、そう動くのね」

と、舞台の使い方もとっても楽しめた。

”役に立たない演劇”とは

観劇前からこのワードが強く頭に刻まれていて、それってなんだろう、確かめてやろう、という気持ちすらあった。

見ながら出した答えは、簡単に言うと、バカバカしさ、ナンセンス、シュール、実のない、意味不明、理解不能、とかそういう言葉になるだろうし、そういう部分を多分に含んだお芝居で、正しい表現をすると”無駄に”笑わされたと言える。

じゃあ話の筋がないかといわれると、ちゃんとある。

途方もない寄り道と、無意味な繰り返しと、有り得ない設定と、シンプルなおバカを放り込んで、笑いを取りに来る。それが真剣で、必死で、だけどキャストが楽しんでいるのが分かるから、観客側も呼応するように笑えるのだろう。日常的な会話から生まれ、共感から成るおかしみではなく、意図的に作られた笑い。”役に立たない”のに、とても手間がかかっている。効率悪いな。

だって、わらったのは覚えているけど、何に笑ったのか、何のワードが面白かったのか、ほとんど覚えてない。「薄着だからだろ」と「なるほどです」くらいしか思い出せない。そして爆笑ではなく、常にクスクス。それも笑える。

それが役立たない演劇なのかもしれない。

では”役に立つ演劇”とは

演劇に限らず、創作というものには必ず「意味」を求められる。

ー何が伝えたかったんですか?
ーこの作品のテーマは?
ー見てる人にどう感じてもらいたいですか?

この類の質問は当たり前のようになされる。
しかし「そんなものある(分かる)かい!」が正しい答えなんじゃなかろうか。あったとしても、強制するのはおこがましい。どう見てほしいなんてこちらの意図など必要じゃない。

となると、役に立つも立たないも、ないよねっていう。

もちろん作品によっては、戦争の恐ろしさや歴史の教訓を伝えるものもある。テーマ性が強いものもあるにはある。そうしてつくられたものを否定する気はないですが、はい。

まあ何というか。

「どうやらビターソウル」はわたしにとって、「どうやら役立ったみたいだ」と言える作品だ。

大倉さんを間近で見て、やっぱりスタイル抜群でカッコよかったし、抜群に面白かったし、コメディ大好きがにじみ出ててラブリーだったし、やっぱ映像もいいけど舞台の人だなって思ってしまった。あとフライヤーの絵を描いたのが大倉さんって。すごくない?うまくない?多彩すぎくない?好き。

キャストのノゾエ征爾さんはサイコパスっぽくて独特な空気感が好きだったし、佐藤真弓さんめちゃ可愛くて面白くて歌うまかったし、ブルー&スカイさんキモおもろかったし、渡辺真起子さんまずヘアスタイル最高で、芯の通った強さが素敵だった。

つくりたいものを、好きなメンツと、全力でつくるってことの尊さと、じゃあ今自分は何をつくりたいのかっていう疑問を、スイートでビターに突きつけられたわけである。

次の作品

未定

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