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【2021/9/2】カノン

自粛の真っただ中、図書館に行って、戯曲集を読むのがひとつの楽しみである。戯曲を読むと、その舞台が見たくなる。セットはどうなのか、キャストは誰なのか、演出はどうなっているのか?

今からおよそ1ヶ月前、わたしは野田秀樹さんの戯曲を読んだ。そして、カノンという作品に出会った。

あまり時代物は得意じゃない(ぶっちゃけ好きじゃない)私にとって、ハードルが高いと思って読み進んでいたら、あえての時代錯誤オンパレードで、設定が平安時代なだけで、作品が書かれた当時にも、今現在にも置き換えられる。それってきっと野田さんの作意だろうけど。

読んだ後、より深く内容を理解するためにカノンを検索していると、8月下旬からカノンが野上絹代さんの演出で上演されると知った。もちろんキャストも総入れ替え。当時のキャストは唐沢寿明、鈴木京香など錚々たるメンバーだが、今回は若手中心のようだ。

そもそもは2020年3月に予定されていたのがコロナのために延期になり、この夏にようやく上演が決まった。だが間もなく本番というところで陽性者が出たそうで8月19日~31日の公演が中止となり、ようやく幕が開いた初日は9月1日になった。

もしかして中止になった8月のチケットを買っていたら、見に行けなかったかもしれない。8月だって行く暇はたくさんあったのに、なぜだか今日のチケットを選んでいた。だからきっと見るべくして見た舞台なんだろう。

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まー、のっけからカッコイイ。変幻自在に動かした白いボードに映像を映してのキャスト紹介、統制された派手なアクション、照明と映像が入り乱れて異次元な空間演出、、、

「あーこんな演出やりたい!」が私の中で乱反射していた。

そして、重要なオープニングの殺陣シーン。

戯曲を読んでいたから内容はある程度入っている。それを答え合わせしていく感じ。それでもセリフの応酬を理解するのは難しく、初見の人はかなり大変だろうと思った。分かりやすい言葉遊び(ダジャレ)の部分はちゃんと笑いが起きていた。

この作品では絵画がキーアイテムだから、あらゆる小物が絵で表現されていたり、名画が顔ハメになっていたり、額縁っぽい木枠が武器になったり窓になったり、セットにも額縁が使われていたり、それを探して発見するのも楽しかった。

後半はダイナミックな演出が怒涛のように攻めてきて、ちょっと脳みそが追いつかない。ドサーっと落ちてきたり、バターンって倒れたり、ガッシャーンって崩れたり、もうどんどん舞台がてんこ盛りになっていく。

「片付けとセッティング大変だろうなぁ」と裏方のことを考えてしまう。

とにかく、贅沢な舞台だった。

キャストの熱量と、演出のこだわりと、スタッフさんの技術とが結集した作品。もっと早く、もっと長く、演じたかっただろうけど、この実態なき敵と戦いながら上演にこぎつけたことが素晴らしい。

そしていつか、この舞台に…。

#観劇レポ

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