【鑑賞ログ数珠つなぎ】浅草キッド
【数珠つなぎ経緯】
もう既にものすごく話題になってるし、宣伝もバッチバチだし、あえて説明する必要もないとは思うけれど、数珠つないでいかないといけないからという理由だけで書くことにする。前回は『ボクたちはみんな大人になれなかった』。この『浅草キッド』での登場人物たちもやはり、大人になれなかった(ならなかった)人たちではないかと思う。現実に折り合いがつけられず、夢を信じて、自分だけを信じて、突き進んだ人。大抵の大人はそうやっては生きられない。だからこそ憧れる、見たいと思う。
【あらすじ(ネタバレなし)】
今回は引用。
【感想(ネタバレあり)】
本当に無知で申し訳ないが、たけしさんに師匠がいたこと自体知らなかった。深見千三郎…演じたのは大泉洋さん、当人を調べてみると…あら色男じゃないの。芸人というよりは舞台役者っぽい雰囲気。映画の中でやっていたのも漫才ではなく演劇に近く、今で言う新喜劇(コント)のような趣があった。映画ではタップダンスがフィーチャーされていたけれど、深見さんは殺陣はもちろん、歌もダンスも楽器も出来たらしい。そして、いつもパリッとしたスーツを着て、ハットをかぶり、芸人の矜持と特有のオーラを強く持っていた。それは作品を観ていても伝わってきたし、「笑われるんじゃねぇ笑わせるんだ」「芸を見せてやってるんだ」という名言からも響いてくるものがあった。
好きなシーンは、たけしが深見のタップシューズを勝手に履いて舞台で踊っていたのを、深見に見つかってしまうところ。深見はたけしのタップに感嘆し、何も言わずにその場を去る。後を追ってきて謝るたけしに「お前が履いた靴なんて履けるか。やるよ、500円で」と言い、「金払うんですか」とたけしはすかさず突っ込む。その後のシューズについては作品に描かれていないが、たけしはきっとこのシューズを大切にしたと思う。
それはわたしにも師匠なる人がいて、師匠からもらったものは何であっても愛おしいからだ。封筒に書かれた些細なメッセージも、絶対使わないようなバンダナも。たけしと同じように幾度となく(金がないと言いながら)ご飯に連れていってもらったし、終電がなくなって車で家まで送ってもらったこともある。旅行するというとお小遣いをくれたし、東京に出てくる時も餞別をもらった。そういう自身の思い出と重なって「わかるわかる」と頷きながら見ていた。
たけしさんのようになれれば師匠も鼻が高いだろうが、わたしはそこまで達していない。いつか「わたしの師匠です」と自信を持って紹介できるような立場になれるように頑張らねば。
師弟愛と「芸」とはなにかという、この世界にいる人間からすると染みることしかない内容のオンパレードで、しかもそれが実在する人物で、今も活躍しているという、ある意味不思議な作品でもあると思った。それってスティーブジョブスとかと同じレベルだ。たけしさんって本当にすごい。
ただ、ちょっと残念だった点が一つある。現代のたけしさんも特殊メイクした柳楽さんが演じていた。もう、たけしさんにしか見えないというか、「え、だったらたけしさんがやればよくない?」って思ってしまった。現在のたけしさんを知っているわたしたちは、やはりあの顔に柳楽さんの身体はアンバランスに見えたし、ちょっと薄気味悪さを感じてしまった。シンプルに柳楽さん演じるたけしさんが年を取った特殊メイクをすれば良かったのではないかなぁと。
でもまぁそれは置いといて、柳楽さんのたけしのコピーは半端なかった。たけしさん特有の動き、タップダンス、そして漫才のテンポ。圧巻。もちろん大泉洋さんも素敵だった。だが私が思う本当の立役者はナイツの土屋さんだと思う。ビートきよしさんの記憶が薄いから比較できるわけではないけれど、柳楽くんのたけしの横に土屋さんのきよしがとてもバランスが良かった。深見のことを想って、誘いを断っていたたけしを、急かさずに待っているきよしの優しさや、たけしに好き放題やらせつつも手綱を握っている感じが良く伝わってきた。
一番突き付けられたのは、芸を磨けバカヤロウ!!ってこと。
【次の作品】
もうすぐクリスマス。
クリスマスだからって見たわけじゃないのに、クリスマスの話だったからビックリした『東京ゴッドファーザーズ』。これは数珠つなぎもクソもないんだが、Netflixでオススメに出てきたので素直に観た作品。
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