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【鑑賞ログ数珠つなぎ】ボクたちはみんな大人になれなかった

ある作品を観たら、次はその脚本家や監督、役者の関わった別の作品を観たみたくなるものである。まるで数珠つなぎのように。
前回:https://note.com/marioshoten/n/nbb41129dd205

【数珠つなぎ経緯】

「リップヴァンウィンクルの花嫁」からの「ボクたちはみんな大人になれなかった」。どちらも多くの人にとって共感度が高く、現代社会をうまく切り取っており、同時に『影』を色濃く感じる。その点で繋がると判断した。

原作はウェブ連載から始まった抜け殻さんの半自伝的恋愛小説。1995年から2020年に至るまでの主人公の恋愛模様が、時代の流れと共に描かれている。

【あらすじ(ネタバレなし)】

ストーリーは、主人公のボクを演じる森山未來の目線で進んでいく。惰性で生きていたボクは、ふと見たFacebookで昔の彼女かおりが結婚したことを知り「普通じゃん」とバカにする。
若い頃小説家を夢見ていたボクは、文通で知り合ったかおりと会い、自分のことを「面白い」と言ってくれた彼女に急激に惹かれていった。彼女は「普通であること」を嫌っており、個性的なファッションをし、突拍子もないことをよく言った。ボクは彼女のために仕事をがんばり、彼女の言う無茶に付き合った。だが彼女は理由も言わず、突然姿を消した。
そして今。ボクはほろ苦い思い出の足跡をたどり、二度と戻らない時間を痛感する。

【感想(ネタバレあり)】

時間に流されて生きてきたボクの、後悔のような、諦めのような、どこにもぶつけられない感情を綴った作品。これはボクだけでなく、30代を過ぎている人なら誰もが抱く感情で、だからこそ共感度も高い。恋愛だけではなく、仕事も遊びも、音楽や映画やファッションの流行も、その時代を生きた人間なら「わかる~!」となるポイント盛りだくさんで描かれている点も大きい。そもそも二人の出会いが雑誌に掲載された文通相手募集からというのが当時をあらわしているし、結局ふたりは結ばれなかったのだけど、彼女の近況を知るのがFacebookというのも今を痛感する。
好きでたまらない人のために何でもやっちゃう無謀さとか、本当に好きな人とは結ばれない虚しさとか、大人になっても青春の恋愛を思い出しちゃうノスタルジーとか、ぽつぽつと思い出させられる。
なりたくてなったわけじゃない大人。なれたとも思えない大人。でも年齢的に子どもじゃないから大人。大人になるってどういうことだろう。誰か試験つくって「大人認定証」出してくれないかな。そしたら胸を張って言えるのに。
大人ってさ、子どもから見て形容される人間の姿であって、大人から見た大人って、結局誰もいない可能性あるな。言葉だけが独り歩きしてるものの代表格と言えるかもしれない。
大人について、考えさせられる作品ということでまとめる。

【次の作品】

小説家という夢を持っていたボク(燃え殻さん)は、大人になって本を出すことになる。一方では夢を諦め、一方では夢を叶えた。Netflixで公開されて間もない作品『浅草キッド』も同じような感覚がある。次はこれ。

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