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【2021/10/26】彼に触れた夜

恥ずかしい話ですが、初めてだったんです。

とにかくすごいとは聞いていたから、ものすごく興味はあったけれど、臆病になってしまう自分がいて。

だって長いってイメージがあったんです、彼のって。

正直、時間がかかるのは苦手です。
手っ取り早く終わりたいって言うか、まずはお試しがいいって言うか。

それに人気もあるでしょう?
天邪鬼なわたしは敢えて避けてしまうところがあって。

でもある日、目が合ってしまって、気付いたら一緒にいました。

彼がつけていた帯に目を惹かれたんです。

友達との間で噂になっていたから。

それに、短くて済むって言うんです。だから、決意しました。短いなら大丈夫、深入りすることはないだろうって。もし深入りしても傷つかない自信がありました。ただわたしは彼にお金を払えばいいだけだから。そのお金くらい何てことありません。働けば稼げるくらいの額です。

一緒にいても、数日は何も起こりませんでした。わたしが行動しなければダメみたいで。今のところ彼の正体はベールに包まれているので、忙しさのせいにして見ないようにすることもできました。触れてしまったら何かが始まってしまう気がして、躊躇っていたというのも理由にあるかもしれません。

ある日、本当にやることのない休日がありました。洗濯をして、ご飯をつくって食べて、スマホをいじっていたらやることがなくなってしまったんです。だからわたしは勇気を出して、彼に触れました。そっと彼を開いて、上から下まで眺めました。

それからはあっという間でした。

彼は短いのにわたしを深いところまで連れていってくれて、そして満足させてくれました。ちょっと技術に寄りすぎなところもあったけれど、目をつぶってやり過ごせるレベル。想像を掻き立て、もっと見たい知りたいと思わせてくれました。

さすがとしか言いようがない。聞いていた通りです。


彼に深入りしたかって?

どうでしょうね。

だってまだ半分しか味わってないんです。

後半はこれから。

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『女のいない男たち』村上春樹

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