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伸びないで

39歳を観た影響もあって、健康診断に行ってきた。

仲良し3人組のうちの一人がすい臓がんで余命半年を宣告されたというのが物語の軸で、シーンの中でも「定期健診を受けましょう!」みたいなセリフがあるし、登場人物と同じ39歳となれば、ちょっとだけヒヤッとする。わたし自身ずっとフリーで活動していて、会社の健康診断というものがないので、しばらく受けていない、という状態はがザラ。受けるならば自分で病院を検索して、比較対象して、予約して、という段取りが必要になる。ご承知おきの通り、これがもの凄く面倒くさい。会社員であれば、会社から「いついつ何時に行って下さいね~」と指示があり、行けば良いだけなのに。だから自分に鞭打って、面倒くさい手順を踏んで、予約をした。

空いている時間が午後だったというのもあったけれど、17時に予約したのは失敗した。「朝食は軽食で、昼以降は水かお茶のみ」という指示。お腹が持つか心配していたが、その日あまり動かなかったのも功を奏したのか、検査までの間、空腹に悶絶するということはなかった。

4月初旬というのもあってか、どしゃぶりの雨なのに病院はかなり混んでいた。おそらく新社会人や転職組が会社に提出するための健康診断が必要なのだろう、それっぽい人たちがたくさんいた。そんな中、何にも属してない、ドラマを見て思い付きで受診するわたし。雨の日のじっとりした空気は待合室にも流れている。心なしか、受付の人の対応も悪いように感じる。

「たかはしさん。たかはしまりおさん」

「たかしま」だけど、そう呼ばれるのには慣れている。いちいち指摘しない。笑顔で診察室に入る。上半身だけ着替えて、まずは身長と体重の測定。

実はわたし、身長測定が一番ドキドキする。まさか伸びていないかと、ドキドキする。だから背筋もシャキーン!と伸ばさず適度に姿勢を正すだけ。看護師さんから脳天に割と強めにバーを打ち付けられる。「いいぞ」とほくそ笑むわたし。ソフトに置かれたら、髪の毛の分大きくなってしまうからだ。

看護師さんが目盛りを呼んでいる。
ドキドキ。

審判の瞬間。

「176.8ですね」

おい。ウソだろ。
それはおよそ177ではないか。
今まで通常は175、正直な気分のときだけ176.3で通してきたのに。
おい。ウソだろ。
伸びたのか?また伸びたのか??

足元を見た。
靴下を履いていた。

しまった!

脱げばよかった。
0.1くらいは小さくなったはずなのに。

皆は言う。
「背が大きくてカッコイイね」
背を低くサバ読んだのがバレると、こう言う。
「大きい方が良いじゃん」

別にコンプレックスなわけじゃない。背が高い自分は好きだし、それを活かして生きてきた。だけど、これ以上伸びなくていい。もう伸びたいとは思っていない。これ以上伸びたってカッコよさは増さない。年を取って、これだけ長さのある背筋をピンと出来る自信も筋力も多分ない。

だからお願い。
そのままの長さでいて。
もう伸びないで。
十分伸びたでしょう。
伸びるなら、何かの能力にして。
のびのび生きたいだけなのよ。

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