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鑑賞ログ数珠つなぎ「見知らぬ乗客」

ある作品を観たら、次はその脚本家や監督、役者の関わった別の作品を観たみたくなるものである。まるで数珠つなぎのように。
前回:舞台「関数ドミノ」

https://note.com/marioshoten/n/n2f42588a7746

【数珠つなぎ経緯】

毎日思っている。
新しい脚本を、書かないと。
そしてまたこうも思っている。
もっと脚本を、勉強しないと。
名作と呼ばれる作品を見て、感じ、考えないと。
なぜ名作と呼ばれるのか、なぜ面白いのか。

そこにはおそらくテクニックとか、構成とか、オリジナリティとか、そういうものが溢れんばかりにぶち込まれている。
その全てを読み解くことは到底無理だが、その片鱗を感じることくらいはできるはずだ。

となるとやっぱりヒッチコック大先生を見ねば!
どの方面からも絶賛される『サイコ』は鑑賞済みなので、今回は『見知らぬ乗客(原題:Strangers on a Train)』をU-nextにて。


【あらすじ】

列車の中でテニス・プレーヤーのガイは見知らぬ乗客に声をかけられる。ブルーノと名乗るその男は、ガイが妻と不仲で、上院議員の娘アンと結婚したがっているなど、ガイの私生活を驚くほどよく知っており、ガイの邪魔な妻を殺す代わりに自分の父親を殺してくれと交換殺人を持ちかける。相手にしないガイだったが、ブルーノは殺人を実行。アリバイがなく、警察から疑われるガイに、ブルーノは執拗に脅迫する。「次は君の番だ!」と・・・。

【感想/ネタバレあり】

交換殺人がテーマだという前情報だけ耳に入っていたので、間違いなく交換殺人は行われるものと思っていた。偶然列車で乗り合わせた二人が手を組み、お互いの”殺したい相手”を殺害、その後完璧にだまし通すか、また新たな第三者の出現により、犯罪が露見してしまうのか、そこら辺のストーリーを想定していた。

だが話の展開は全然違った。

ブルーノは勝手に殺人を実行し、追い込まれたガイがどのように動くのかがこの物語の見どころであった。ガイはあくまでも交換殺人を受け入れず、自身の無実を証明しようと奔走する。

ブルーノは徐々にその狂気性をエスカレートさせていく。ガイの行く先々に不気味に現れ、ガイの周りの人たちを取り込んでいったり、騒ぎを起こしたりする。

有名なシーンだと思うが、ガイのテニスの試合会場で、他の観客がボールを追って右左に顔を振っているのに、ブルーノだけが首を動かさずガイをじっと見つめているという演出には唸らざるを得ない。集団から孤立することで、よりブルーノの気味悪さが際立っている。

他には、排水溝に落ちたマッチ(重要な小道具)を拾おうとするブルーノと、テニスの試合を早く終わらせようとするガイの別場所での心理戦のシーン。ここで初めてブルーノの焦りが見える。排水溝の格子の隙間に無理やり手を突っ込んで拾うのだけど、絶対物理的に無理だろ、と思うけどそこはご愛嬌かしら。

最後の大見せ場、メリーゴーランド爆回転シーン。物語の序盤でガイの妻(と愛人らしき男二人)が乗って、追いかけるようにブルーノも乗り込むシーンがあるのだけど、それが伏線だったんだなと気付く。最後、ガイとブルーノの格闘シーンが壊れて爆回転するメリーゴーランドの中というのはとても面白かった。

善と悪がハッキリしていて最後まで交わらず、ちゃんとハッピーエンドというのも観やすくて気持ちがいい。

ロバート・ウォーカー演じるブルーノのサイコパスぶり(本作が1951年に製作されたことから「映画初のサイコパスキャラ」ともいわれているらしい)が本当に気色悪かった。それは「ユージュアルサスペクツ」のケヴィン・スペイシーを思い出させた。年代から言うとケヴィン・スペイシーが感化された可能性だってあるかも。

しかもロバートはこの映画の公開直後に急死したというから惜しい…

ガイとその彼女アンの美男美女っぷりにもため息が出るし、アンの妹バーバラ(ヒッチコックの娘さんが演じている)の言動になんとも言えぬコミカルさがあって好感を持った。

ファーリーグレンジャーとルースローマン

やっぱりヒッチコック好きー!!

【次の作品】

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