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プレゼントごっこ

一年のうちの、特別な日。

どうせ渡さないのに、あの人へのプレゼントを、今年も私は買ってしまった。

「これ、好きかな」と顔を思い浮かべながら選び、
「贈り物です」と言ってラッピングしてもらう。
紙袋に入れて、いつでも渡せるように持ち歩く。
もちろん、「お渡し用の袋」も忘れていない。

でも、0.1%くらいの偶然が重なってごく自然に渡せるチャンスでも来ない限り、きれいに包まれたそれが袋から顔を出すことはない。

そんなことは分かっている。
分かっていて私は、お金を払って品物を受け取った。

あの人に向けた贈り物を選ぶ時間。
いつ渡せるかなとドキドキする時間。
そんな時間を味わえるだけでいいし。
袋から取り出す自分、その時に添える言葉、あの人がするであろう反応。
そんなことを考えるだけで、とても幸せな気持ちになる。

それだけでいい。
どうせ渡せないプレゼント。

しまっておいて、そのうち開けて、いつか自分で使うんだ。


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