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つくりたいのは循環

まにまには空き家特化型ではない、という話。
東信州を中心に活動する「まにまに」を訪ねてくれる人が増えた。お話しする機会が増えて、聞いてもらうと「そうだったの?!」となることが多いもので、少しまとめてみたい。


さんかくのいえ

今年の4月に、私たちが「さんかくのいえ」と呼んでいる古民家を買い受けた。ここは「地域の入り口になったらいいな」という思いで改修を重ねてきた大正時代のお家で、もともとは空き家だった。

2年かけて片付け、家主さんと話をし、一部を雑貨屋さんに貸しながらオープンスペースとしてひらいている。

いよいよ所有になったので、今季はシェアキッチンの改修に取り掛かる。
これは私たちが飲食店を営みたくて構想が始まったのではなく、あくまで「入り口づくり」の一環だ。


はじまりはシェアハウス

どこをスタートと呼ぶのが正しいのかわからないが、もともと地域のなかでつながりを大切に暮らしていきたいと考えていたぶんちゃんとの出会いが、まにまにのスタートだ。マルシェや子ども向けのイベントを行い、行政と共に対話するまちづくりに片足を突っ込んでいた頃に話す機会をもらって、「もっとなんとか、スピード感をもってしたいね!」と意気投合した。

ちょうどその頃「うち空いているんだけれど、相談に乗ってくれない?」とお話しをもらったのが、今はシェアハウスとして3人が暮らしている「あらいのいえ」だ。
全ては試しながらになるけれど、やってみたいことがある。大家さんとお話を重ねて一緒に片付けをし、初めての入居者さんが決まった。

同時期に街歩きをして見つけた「現・さんかくのいえ」も大家さんと話をして借り受け、離れに雑貨屋さんが入ってくれることが決まった。
「どうやって家を見つけているのか」
「何から始めたらいいのか」
「電気やガス、そもそもの片付け費用や改修費は?」
このあたりでいつも聞かれるのがこの3つである。

空き家との出会い方は以前まとめたものがあるのでこれを参照してほしい。

新規はとにかく足で稼いで発掘する。ただ、1、2件と始めると、だんだん情報が集まってくるようになる。こちらの経験値もたまるから「この家とはどう付き合えるだろうか」の判断も早くなるし、今は大々的に探し出すというよりは、紹介してもらったところをひとつひとつ着実にひらいていくことを意識している。


まず決めること、話すこと

なにから始めたらいいのかと、費用はどうなっているのかは、割とセットだ。まにまにはとにかく何も持たないところから始めたので、自分たちの金銭的な初期投資はほぼない。その分時間と体力を使ってきた。

だからまずやるべきは「イメージを膨らませて、やっていくと決めること」じゃないかと思っている。そしてとにかく話してみるのだ。
失敗もたくさんしてきたし、現地でアイディアを出し合っていたら「こんなところがそんなことになるの?」と言われたこともある。「思ったよりボロボロだけど大丈夫?」これは初期、さんかくのいえを案内していたときに言われた言葉。その反面、やっぱり「ここめっちゃいいね!」と一緒に楽しんでくれる人たちもたくさんいた。「片付いてきたら全然印象変わるね!」そうやって途中から加わってくれた人も多い。
だから初めは、何を言われたって「だよね〜!でもきっとなるよ!」と笑って流してしまえるくらいに、イメージを持って信じることが大事だと思う。あとはダメだったら「ごめんなさい」と言えること。困ったら素直に相談できること。

お金に関しては、大家さんや、初期から物件を使ってくれている入居者さんに感謝しかない。片付けを始めた当初、私たちの主な収入源は「家賃」と「出てきたものの売上」だった。

まず空き家がやってきたら古物商の友人に見てもらい、可能なものは買い取ってもらって、そのお金でゴミ袋を買う。大型のものは大家さんに処分代を出してもらうこともあるし、早期にイベントを企画して足しにすることもある。まだ使えるものたちは、フリマやくるくる市を実施して持っていってもらったこともある。
とにかく空っぽを目指しながら、「ここはこんな風に使いたいからこんな感じで人を探している」という発信をしていく。人ありきで片付けるときもあるのでケースバイケースだけれど、どこかのタイミングで月額の利用料(わかりやすくいうと家賃)が入りはじめれば、電気代や水道代など固定費も払えるようになる。そうすると使い勝手が良くなって、もっとお金を生み出せる場が増える。活動が広がる。要はひたすらこれの繰り返し。

今もさんかくのいえの改修やまにまにの活動は、一緒に家を使って、住んで、商いをしてくれる人たちのおかげで捻出できているのだ。


ゆたかな暮らしを仲介する

まにまにには、当初から思い描いているビジョンがある。

それは「ゆたかな暮らしを仲介する」こと。豊かさとは必ずしも金銭ではなく、モノゴトひと、縁だったり、恩だったり、たのしさだったり、「ここで暮らしていきたいね」と思える何かだと考えている。

誰はの不要は誰かの必要であって、身の回りの「もったいない」ものはきっと思っているよりたくさんある。本当に環境のことを考えたいなら、地球の未来を思って行動を始めるなら、まずは隣人とはなしをしたらいいんじゃないかなと、近頃は本当に思っているのだけれど、だからまにまにでは、どんどん間を取り持っていきたいと思っている。

空き家はあくまでそのうちのひとつで、先日はじめた生産者と消費者をつなぐおいしさシェアリングコミュニティ「まに男」も、空いている畑と組み合わせながら日常で染めをたのしむ「藍染laboratory」も、古材や建具を適正価格でアップサイクルする「もくぞう」も、その他たくさんのちょっとしたお節介も、全部は「暮らしの循環」につながってくる話なのだ。
いろんな知恵を絞って、どうにかして、たのしい暮らしをつくっている。


顔が見える場、シェアキッチン

最後に、冒頭書いた「入り口づくり」の一環となるシェアキッチンに触れてこの記事は終わりにしたいと思う。

シェアキッチンの構想は、実はかなり初期からあったひとつだ。「地域に来てくれた人が、まず試しに商いをはじめられる場所をつくりたい」というのと「ふらっと来たらコーヒーが飲める環境を整えたい」から始まった。

今、もうひとつ可能性を感じているのが、見て知ってもらってつながる「お見合いの場」になるのではないかということだ。

いきなり「東京から引っ越してきて、こっちで空き家を改修して店をやってみたいんです」と、話だけで、いい物件に巡り会うのはなかなか難しい。もちろんそれで飛び込める人も一定数いるだろうし、寄り添う支援もたくさんあるとは思う。
でもこれ、見て話してもらうのが早いのではないかと、常々思うのだ。

「今度、こういう人たちが引っ越してきたがっている」「こんなお店を出したいと思っている人がいる」というのを家主さんたちに体感してもらいながら、「この地域にはすでにこんな素敵な人たちがいる」「このあたりにこんな空きがある」と、希望している人たちにも体感してもらう。

おいしいものはいろんな人を笑顔に、おしゃべりを滑らかにしてくれる気がしている。だからついぽろっと、「そういえばあのあたりにこんなのあったから、聞いてみるよ」なんて会話が生まれたら、きっともっと可能性が広がっていくんじゃないかと思う。

まだまだ考えるべきはいっぱいだけれど、着実に進めていきたい。

みたいなことをやっている「まにまに」
やっと関連リンク集を作りました、というお知らせを兼ねて。



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