bossa店内

bar bossaの林伸次さんにインタビューしてみた(その2)

前回からのbar bossaの林さんのインタビューその2です。

その1はこちら

今回もインタビューさせていただいた中での話ですが、別にしてみました。 レストランとしてのワインの勧め方、ワインバーとしてのワインの勧め方の違いやペアリング、余計な一言など。あとは飲食店あるあるなどなど。

林さん「ワインのペアリングの流れはもう変えられないですね。このワインに合うおつまみくれる?って言われますからね。」

――確かに注文の仕方はそうですよね。今飲んでいるワインに合った料理、または今食べてる料理に合ったたワインをと注文されることが多いですね。

「そうですね。あー、きたか、てなります笑。本には書かなかったのですが、オルガンの紺野さんはこれはもう世界の流れだからそれに対応する、毎回毎回料理を作ったら何がペアリングで合うかというのをすごい意識してるって言ってましたね。」

――もうそういう注文のされ方をすること、されることを前提に料理も考えて答えを出しておくということですかね。

「あとはコース料理などに一品ずつグラスワインを合わせるというやり方だとお金をしっかり取れるということがありますね。昔だったら、コースで1杯しかワインを飲まなかったりする人が多かったみたいですが、ペアリングだったら倍も楽しんでいただけてお金も取れる、という事みたいですね。」

――僕も以前働いたお店ではどちらかというとアルコール、ワインをあまり飲まないっていう方の方が多かったです。

「やっぱり知らない方だとそうなっちゃいますよね。ペアリングってそういうのを避けるために誰かが考えついたんじゃないかなと思います笑」

――笑(するどい…)

「実際、全ての料理にワイン1本を合わせるというのは難しいですよね。岩間さんはどのようにされてましたか?」

――教科書通りといいますか、基本的にはワイン1本で楽しんでもらいますが、どうしても合わなそうな料理だけはグラスワインでお勧めしたりしていました。あとは実際にどういう理由でそのワインを僕が選んだっていうのもしっかり先に説明するようにしていました。メインに大変オススメなのでこのワインを選びました、みたいなことも伝えないとそのメインが出る前にワインを飲み終わってしまう場合もありますので。

――林さんの店では何かしらのペアリングを考える事は無いのですか?

「うーん」

――否定派ですか?

「いえ、否定派では無いのですが、例えばですが難しいんですけど、鯖の料理に軽めの赤ワインって合うんですけど、うちのお店で鯖のリエットを出していた時に、お客さんがやっぱり魚だから白だよね、と言われたら、そうですよね、としか言いようがないんですよね。
バーである以上赤の方が合いますよ、とは言えないですね。ソムリエのいるレストランなら言えるかもしれませんが、バーではお客さんの言われること、流れをいちいち止めないというか、止められないというかそういう感じですね。」


――そう言われると今の僕のお店はワインバーですが、結構言っちゃってるかもしれませんね。良かれと思っててはいるんですけれども。


「うちはガトーショコラが有名なんですけども、久保田由希さんが作っていて、うちとあと1カ所しかおろしてないんです。1ヵ月に1回は必ず食べに来る人がいるファンもいるんですが、このチョコレートに合う赤ワインをくださいと言われても基本的に赤ワインは合わないじゃないですか。バニュルスとかラムとかの方が合いますよと、本当は言いたいんですが、でも赤ワインを飲みたいと言うのはわかっているし、どうしようかなと思いますがやはりそこはお客さんに合わせますね。」

「さっきと同じように、レストランのソムリエだったらお客さんの希望とは違うお酒をすすめたりできると思いますが、やっぱりバーは言えないんですよねー。もちろん言う時もありますけど。」

――言わないほうがいいシチュエーションが多いということですか。

「はい。例えばカップルですと男性が仕切っている空気があったりするので。男の人の意見を否定してはいけない空気がありますね。ただそこでお客さんの方から赤ワインは合わないねって言われるような事はまずありません。」

――そうですね。そういう流れでしたら余計なことを言わないほうがいいですよね。

「あくまで赤ワインを飲みたいとおっしゃっているので。」

――あー。なんかとても勉強になります。今は僕はレストランではなくバーで働いているので、わかっているつもりでしたがその辺は改めて気をつけないといけないなと思います。

「ただそういう知識をあえて知りたいという人もいるんですよね。チョコレートには赤ワインより合うお酒があるという事とか。これが人によって違うから難しいですよね。」


本当にお店のスタッフはお客様に余計な事は言ってはいけない時があります。ささいなことから、こんなことは当たり前と思い込んでいる事まで、ちょっとしたことでトラブルになります。


「黒ワイン、と言う方のnoteをご存知ですか。」

――はい。知っています。あっ、お客様が怒って帰ってしまったというあれですか

「そうですそうです!あれ読んで苦しくなっちゃって。本当怖いと思いました笑」

――でも僕も同じような経験ありますよ。フィンガーボールを出しているお店だったんですが、お客様がフィンガーボールの水を冗談でこれ飲んでいいのかなみたいなこと言ったのを通り掛かったスタッフが聞こえたみたいで。聞かれてもいないのにそれは指を洗うものですよと話に割り込んでしまったので、そんなことはわかってんだ! とめちゃめちゃ怒られたというのがありました笑

「えーすごい笑。フィンガーボール問題は、日本のいろいろなところであると思いますよ。でも言わないと一緒に来ている人たちには無知だと思われてしまいますからね。」

――確かにそのスタッフの一言がいけないですよね。

「でもその人が冗談を言うのがよくないですよね。」

――確かにですが笑 スタッフも真面目すぎて怒られるという。


-----------------------------------------

「グラスワインをテイスティングさせてくれと言う外国人のお客様っていらっしゃらないですか。」

――僕のお店ではまだないですが、以前働いていたお店では何回かありました。でも日本人でしたね。

「もしあったらどうしますか。」

――僕だったら断りますね。

「ですよね。ちょっとずつでもグラスワインをテイスティングというのは難しいですよね。」

――おっしゃる通りだと思います。グラスワインの価格が高ければ高いほどそれは難しいですね。

「外国人のお客様にに何回か言われたことがあって、あれはどうなのかなぁと思いまして。」

――断ったらお客様は怒ったりするんですか?

「むっとしますね笑 テイスティングさせてくれないんだっていう感じですね。あなたは日本で他の店ではテイスティングしてるのかと疑問に思います笑 こういうワインあるあるってかなりあると思います。」

――お店のメニューの決め方いうのは何かありますか?

「ワインはですね、完全にうちの妻に任せています。」

――それは意見も言わないという感じですか。

「あ、意見は言います。うちの妻は凄いビオワイン好きなんですよ。でもうちのお客さん、そこまでビオ好きはいないんですよね。やっぱりちょっと古いというかクラシックなんですよ。まだ意外と重たいワインちょうだいって言われたりもするんで。多分何も言わなかったら全部ビオにしちゃうと思うんですけど、やっぱりお店に妻は出ていないのでわからないので。」

――そうですよね。

「オーナーがお店にはいなくてどこかにいて全部ワインを決めていて、現場のスタッフは困っているというパターンはありますが、うちは夫婦なのでそれはないんですけど。あとワインの好みは顔見ただけではわからないっていうのがあるんですけど、日本ワインでもありますかね?」

――もちろんありますよ。

「初めてのお客様がどれぐらいワインに詳しいというのがわからない問題もあるじゃないですか。あと勘違いしている場合もあるしその辺が1番難しいですね。これどうしてますか?」

――やっぱりわからないものはわからないんで、なるべく喋ってもらうようにしています。林さんもおっしゃっていましたが、ある程度の会話でどれぐらい知っているかは知ることができますよね。ワインの産地ですとか品種ですとか知っていないと理解できない単語、内容というものをどれだけ理解しているかみたいな感じですね。探る。

「あーなるほど。全然知らないのに知ったかぶりしてくる人にはどうしてますか笑 この問題結構あるじゃないですか笑」


――知ったかぶりの方は、その方に任せちゃうことがほとんどですね。嘘はつかないようにして最終的には良い気分で帰ってもらうことが目的なので。

「そうですよね。例えばすごい重いブルゴーニュの注文をされたとして、ひょっとしてそれはボルドーのことを言っているのかもしれないと思う時もあるじゃないですか。お客様の勘違いかもしれないと思った場合、例えばスパークリングワインのことをすべてシャンパンと言ってしまうとか、指摘しないと話が進まないときとかどうしていましたか? 辛口の赤と言われてもそれは酸っぱいことなのか、それとも重いということなのか、いまだにそういう事は答えがないんですよね。」

――味わいのことに関しては本当に難しいです。辛口甘口といった問題も難しいですよね。シチュエーションによって細かく変わってくるとは思うんですけど、ピノノワールの注文の場合はピノノワールを出すようにすると思います。

「僕もそれは思います。」

――ブルゴーニュと言われたらブルゴーニュ。勘違いしてそうでもそういう注文なのでその通りのものを出すと思います。

「開けて全然重くないじゃんて言われた場合とかはすみませんと言って戻る感じですか。そんなこと言う人はいないんですかね。」

――多少あったりすることもありますがしつこく文句を言う人はいませんでしたね。逆にものすごくこだわってずっと文句を言う人とかいるんですかね。

「グラスワインで、樽のしっかり聞いた重いワインの注文を受ける時がありますが、やっぱり「これ重いの?」って言われる事はありますね。すみません、今ある中で1番重いタイプのワインですって言って説明するしかないですよね。」

――おっしゃる通りだと思います。僕も最初に言われそうなことを説明しちゃうと思います。あまり嫌味にならない程度に。

「でもそういう人に限って、めんどくさい情報はいいから持って来いって言うんですよね。」

――なるほど笑 もしそういう時に要望にピッタリなワインがあった場合、でもそこそこの値段がした場合それを持っていきますか。強気な人には強気で返すみたいな。

「狙いには行きます。最近ボルドーのポムロールのワインを仕入れたんですが9000円で出しています。うちでは高い方なんです。
いくつかワインを持っていって、このポムロールはもしかしたら1番お客様がお好きなワインかもしれませんねって言ったら頼んでくれることが多いですね。あと値段と言えばこの人はいくらが高いと思っているのか安いと思っているかがわからない問題もありますよね。」

――はい。難しいですよね。

「それはどうしてますか笑」

――笑。逆に林さんに聞きたいです。

「イタリアンで何軒か、ワインを勧めてくれるんですが値段を言わないお店があって、イタリアンてそういうものかなぁと思ってたんですけど。」

――いやー,そんな事はないと思うんですけどね。僕はお客さんとしてなら値段は絶対言ってほしいと思います。

「ですよね笑」

――会計びっくりしたくないんで笑

「このワインがいくらなら飲みたいとか考えたいですよね。」

――あるお店でそれなりに良いワインがグラス飲めるお店だったんですが、全部値段を言ってくれないので聞きまくってしまったこともあります。ちょっと恥ずかしかったですけど。

「僕が前働いてたバーはメニューがなかったんですよね。だからお客さんにこういう時って値段を聞くのは格好悪いことなんですかってよく聞かれてました。」

――やっぱり気にしますよね。

「だから、それは言ったほうがいいですよって言ってました。岩間さんはチャージをやろうと思わなかったんですか。」

――チャージは否定するわけではないんですけど、僕がお客さんとして行った時にいいなと思うことの方が少なかったので。逆にいいと思うこともありましたが。それこそ本にもありましたがSAKE storyさんみたいにお通しでもいろいろ考えていらっしゃるところもありますよね。1000円のお通しであっても全然納得してくれる位のものを出せば問題ないですよね。ただ何もしないで300円とか500円とか取るお店もまだありますのでそれだとイメージばかりが悪くなるかなと思います。

「なんか損した気持ちにさせちゃうと皆さん嫌になっちゃうんですよね。さっきの日本酒のお店(SAKE story)はお通し1000円なんですけども全然クレームはないみたいですね。」

――本にもそういう店だってしっかりと認知して来てくれる方がほとんどだからとありました。

「その人はネットの人なので、お客さんが来る時からお店のことを理解しているんですよね。でもシロッコさんもそうですよね。」

――はい。ほとんどの方が日本ワインを飲むことを目的として来てくださっています。本当にありがたいですね。

-----------------------------------------------

と、多分時間があればもっと話してしまっていただろうと思われる対談というか雑談でした笑 

お付き合いいただいた林さんに感謝です。

前回のインタビューの中からの内容ですので、今回出てくる文章の中の「本」や「今回の本」は林さんの新刊「なぜ、あの飲食店にお客が集まるのか」のことです。


あっ、すみません。このnote書いてるやつ、僕は岩間といいます。こんなお店やってます。

日本ワイン専門ワインバー
高田馬場早稲田口より徒歩1分
-----------------------------------------------
Wine Bar Sirocco
〒169-0075
東京都新宿区高田馬場2-19-8阿部大竹ビル2F
営業時間 18:00~0:00 定休日なし
チャージ・サービス料はありません
sirocco.wine@gmail.com
https://www.instagram.com/sirocco.wine/
https://www.facebook.com/sirocco.wine/
-----------------------------------------------
【ワインバーシロッコについて】
https://note.mu/marino_wine/n/naa8c6eef6395

2020年4月現在は、サポートはお店のために使わせていただきます。