見出し画像

旅先で知らない人とコーヒー飲んだ、飲めた。

東京に行ってきた。

東京は結婚してすぐのころ、1年半ほど住んでいたことがあって、土地勘はそこそこ。ひさびさに訪れると、住んでいたころとは違ったエンタメ感が楽しくて、旅気分がふつふつとわいてくる。

事前の予定で夕方にひとり時間がありそうだったので、行きたいコーヒー屋さんをリストアップ。いつもの旅では、行き当たりばったりなお店選びが常だったけれど、わたしはバリスタ修行中である。お店選びにも気合いが入るというもの。いやー、すんごい数のお店があるなぁ、東京。(当たり前)

そんなこんなで、夕方にお目当てのコーヒー屋さんに向かう。エリアも住んでいた生活圏とは離れた場所なので、新鮮味満点である。

思えば旅先では夫と行動をともにすることがほとんどで、こんなひとり時間なんてめったになかった。これはこれで、めちゃんこ楽しいやんか……!(地図アプリを凝視しながらではあるが)うきうきしながら歩いてしまった。

さてお店のある通りに着いたところ、どうやら軽く人が並んでいる様子である。

あちゃー、行列かぁ。どうしよっかなぁ。(並ぶのキライなんだよなー)いったん通行人のフリをして、店の前を通り過ぎてみた。

ちらーっと窓越しに店内を覗くと、いろんな国籍のお客さんが談笑していて、列に並んでいるグループは大きなスーツケースのアジア系旅行客。店員さんも、外国語で対応してる。

なんか雰囲気すげぇ。こ、これは入りづらー!こっちは人見知りやねんっ!

一瞬尻込みしてしまったけれど、旅先というのは強くなれるもの。そして諦めがわるくなる。「せっかく来たし」と言い聞かせて、一度通り過ぎた店の前をUターン。旅行客の後ろにすちゃっと並んだのだった。

外で並びながら、店から漂ってくるコーヒーの香りにほっとしたのも束の間。

「ここのコーヒーは、おいしいですか?」

振り返ると、小柄で黒髪めがねのおばちゃま。持ち手をキュッと結んだエコバッグを下げている。

おばちゃまごめんやで。わたしもこの店、お初やねん。

「すみませんー!わたしも初めてで!」

「あぁ、そう。いつも並んでるから気になってたんだけど、ひとりではなかなか入れなくてねぇ」

「あ、いつも混んでるんですね。わたしは一応、調べてきたので、おいしいと思うんですよ!」

「そう。あなたが並んでるなら、わたしもご一緒していいかしら」

コーヒーが好きだというおばちゃま。他県から来て滞在中だそう。そりゃ、こんなに海外のお客さんがわんさかいて、見るからにバリスタ陣も若いお店だ。飛び込むには勇気がいっただろう。わたしがその突破口になれるのなら、任せてちょうだい、人見知りだけど!

まさかの、コーヒーは道連れ世は情けである。

あとでおばちゃまの義理の娘さんとわたしが同い年という偶然も発覚し、おともするには適役だったのかもしれない。

そこからほどなく順番が来て店内へ案内され、おばちゃまと一緒に豆を選び、窓際の席に横並びに腰かけ、ともにコーヒーを飲んだのだった。

「すごーくいい香り!」

「メロンみたいな不思議な甘さ、こんなの初めて!」

「ふだんは家でドリップするんですか?」

味の感想から、コーヒーライフのこと。初対面のおばちゃまと2人で、何気ない会話が続く、続く。

一緒に列に並んだときは、まさか隣でコーヒーを飲むなんて思っていなかった。だけどおばちゃまが「隣に居ていいかしら?」って聞いてきたもんだから。ひとり時間を満喫しに来たわたしは、ほんの一瞬戸惑ったけれど、不思議と心穏やかな時間を過ごせたのだった。

これね、わたしにとっては非常にめずらしいできごとなのだ。

「飲み屋でとなりになってそのまま意気投合しちゃってさ!」←こうゆうのに憧れる民である。どうやったら知らない人と、そんなに会話できるんだい?笑

それが、コーヒーを介して少し前に進んだ気がする。楽しかった。じっくりひとりで味わうコーヒーも好きだけど、タイムリーな感想を言い合える相手がいるって、なんとありがたいことか。それにふだんのコーヒーの楽しみ方を話していると、互いの生活をぐっと近くに感じることができたのだ。

来月に初孫が生まれるというおばちゃま。東京滞在中に、またこのお店の豆を買いに来ようかと悩んでいた。2回目だから、次はすんなりお店に入り込めるはずだ。そのとき、ちらっとでもわたしのことも思い出してくれたらうれしいなー。

わたしも東京滞在の、いい思い出になりました。

この記事が参加している募集

#わたしの旅行記

2,271件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?