見出し画像

企業内新規事業がうまくいかない理由のひとつと思われる二つ

自分が起業していて、非常に面白く日々を過ごせているなぁと思うのは、「科学の魅力で事業を創り、その収益で科学を支援する」という基本的な狙いがずれていないからだと思う。つまり、ビジョンやミッションが明確にあり、それが共有されている仲間と仕事していると、みんなでベクトルが合っているので、面白いアイディアがどんどん出てくるし、その実現にみんなで真剣に向き合うから何かしらの結果が出るからだと思う。

昔、大手企業に勤めていた時には、広報を担当していたので、新規事業の担当者の方に取材し、メディアへの情報発信のためのネタ作りをしていた。新規事業の方と話していると、面白い話が聞けて楽しい時間を過ごせるのだけど、大きく違和感を感じる点が二つあった。

一つは、お金の意識。

大手企業内だと自分の給料は補償されているので、成功しようが、失敗しようが個人としては痛くもない。もちろん査定に響くと思うが、くいっぱぐれることがない。さらに予算消化などとのたまい、無駄に経費を溶かしていく。自分の給料を出すために、また、そこを意識して現在の事業の状態を捉え、それに見合った行動をとる、という意識が欠けていると思った。なんとなく感じていたが、起業してからこの想いは非常に強くなった。

起業して、自分の事業を創ると、うまくいかなければ、自分の給料が出ない。しかし、支払いは迫ってくるので、お金は作らなければならない。つくれなければ、手元資金は減る一方で、かなりしんどいことになる。私自身も、個人の通帳も会社の通帳も残高が4桁という所まで行った。「お金は自然と湧いてくるものではなく、自分で作らないといけないもの」。これをいやというほど思い知らされたし、いかに企業に勤めていることで守られているかが身に染みた。こういう経験はしない方がいいので(笑)、せめてこういう意識が持てないと、本当の意味で事業に真剣に向き合えないのではないかなぁと思っている。

二つ目はビジョン。

企業内の新規事業だと、もともと企業として行っている事業の空き地や主たる事業に関連するもの、新規事業で〇億作らないといけないから、という予算ありきでお金になりそうなものを探した結果のもの、などで立ち上げることが多いのではないかと思う。この状態でも、事業責任者が「この事業でこんな世界を作る」ということが明確に描ければ問題にならないが、それがなければ、事業へのアイディアも発想の起点を失うので、これまたかなりしんどいことになる。

最近、わたしたち、ちそうは、身近な疑問に専門家や研究者が回答する、iOS向け探索探求アプリ「GIMON」をリリースした。これは、人々の中に芽生えた小さな疑問という知的好奇心の種を、どうにか掬い上げ、育てることで、知的好奇心をコアとした活動である研究、ひいては科学へ関心をもつきかっけとしたいと考えた結果、生まれた。また、集まった疑問を分析することで、人がどのようなことに興味を持ち、どのようなことに発想の起点があるのか、少しでも明らかにできるのではないかと考えたこともこのアプリを作った理由だ。

昨今の状況で、なかなか思うように事業を伸ばせないなか、何かできることはないか、軸はずらさずに考えた、ビジョンから逆算した結果、出てきたアイディアを具現化したものだけど、アイディア出しからリリースまでが5カ月くらいだったのではないかと思う。これくらいのスパンで動ける、プロトタイプが出せるのには、ビジョンが大きく影響したと感じている。

ちなみに、私はアプリにはまったく知見がない。ちそうがやるべきことを考えて、アイディアを出した仲間、知見・経験のある仲間のプロジェクトマネジメント、広い人脈を誇る仲間が親身になってくれるエンジニアを連れてきてくれた、これらの「他力本願」のおかげでアプリができた。私は事務処理しかできなかったが、非常にいいものができていると思っている。もちろんこのアプリが成長するかどうかはわからない。だけど、仮に最初だけだったとしても期待できるような形にまとまったのも、ビジョンに基づいて、個々ができることをしっかりやった結果なのではないかなと思う。

スタートアップには、大手のように資金、人財というリソースがない。だけど、それでも人が集まってくれるのはビジョンやミッションに共感してくれるからだし、それでも何かしらアウトプットが出せるのはビジョンやミッションが明確に道を示すからだと思えてならない。逆に、企業内の新規事業にはこれが欠けているのではないかと思えるケースも見る。もちろんうまくいかない理由はそれがすべてではないけど、かなり影響するのではないかと思う。

今の私のステージでは、この二つが大きいと思うけれど、ステージによって見方は変わるかもしれない。このテーマも、うまく理由(私が知りたい)とともに、いろんな方と話してみたいと思うテーマの一つです。

ちなみに、できたアプリはこちらです。のぞいてみてください。

iOS向け探索探求アプリ GIMON はこちら

画像1


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?