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親知らずとか、ご自愛とか

先日冬のせいか歯が痛み出したので、1年ぶりに歯医者に行った。
大きな虫歯が多すぎて、やっぱり怒られた。

「次回、親知らずを抜きますね」と知らされた時、
ズゥンと心臓が低く鳴った

、、怖い。。

生えて早々に虫歯化し、長年私の口腔内の虫歯を増やす温床となった右上の親知らず。
絶対に抜いた方がいいのは分かりきっている。

だが、私は歯医者に行くことが何よりも怖い。
これまで何本も大きな虫歯の神経を抜いてきたが、未だその痛みに慣れることはない。

「淡々と通うことですよ。」俳優の温水洋介さん似の先生の言葉を信じて、ただ淡々と、頭を空っぽにして臨んだ今日の抜歯。

麻酔を打ってもらい、いよいよ抜歯と言う瞬間、

ドッドドッド
自分の心臓の音が聞こえてきた。

目隠しをされていたので、何をされているかわからないのがまた怖さを増幅させた。

「はぁい、抜きますよ〜」(小声)
と言われた時、チリッと小さな痛みが走った

痛いのはここからですね!了解!と腹に力を入れていたら、

「はぁい、抜けましたぁ〜」とぬるい声が聞こえてきた。

ああ“〜〜〜終わったーーー

諸悪の根源、虫歯の親知らずは、こうして5分もかからず引っこ抜かれた。

抜いてもらった親知らずは、先生の手のひらのガーゼにちょこんと収まっていて、小さく、燃えたあとみたいに黒かった。

歯はこんなに黒くなるのだ。

戒めのために歯を持ち帰ることにした。

受付の方の「お大事に〜!」がラーメン屋の「ありがとうございました〜!」と同じくらい爽快に響いた。

真っ黒な歯。

持ち帰った歯は、念の為洗ってみたが、変わらず黒かった。

抜けた歯を洗いながら、ふと、かわいそう、と思った。

私のケア不足で、この歯は、こんなに溶かされて、
そりゃあ、私も痛かったけど、
それってこの歯が虫歯菌に溶かされて、痛いと叫んでていたんだな。。

溶かされて溶かされて、侵食されて黒くなって。

もう、ほんまにごめん。。。

私はリビングのテーブルで、洗いたての真っ黒な歯をただ見つめて、
眉間にシワをいっぱい寄せて、考えを巡らせていた。

私は、ご自愛、という言葉が好きだ。

それは、自分に優しく、愛してあげる行為。
あったかいお風呂に入ったり、寝る前お香を炊いてハーブティを飲むような生活。
または、よもぎ蒸しに行ったり、美容室で髪を綺麗にしてもらったりと、
いつも頑張っている自分を時には甘やかして労わることだとばかり思っていた。

でも、それだけじゃないのだ。

歯医者に行くことは、まだ生きている自分の歯を守ること。
ひいては、おばあちゃんになっても食べることを楽しむ将来を守ることだ。

自分の歯一本一本まで愛してあげること、
それができないで何がご自愛だ。
「ご自愛」と言う言葉の解像度が、今までどれだけ低かったことか。

親知らずを抜いたこの日、私のご自愛の捉え方は、「ご自愛2.0」へとバージョンアップした。

今年は、絶対に歯医者に通って虫歯を全部治す、
真のご自愛の年にしよう。

などと意気込んでいたら、同居している私のパートナーさんが近寄ってきて、

「歯ってこんなに黒くなるんだね、僕も頑張って歯磨きしようと思ったよ、ありがとう〜♩」と謎に感謝されて、

「なんで感謝すんねん」と、二人でゲラゲラ笑った。


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