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【介護事例】EP3:ケアマネジャーだったT子さん93歳

出会えた素敵な方々とのエピソード集

【訪問介護で出会ったT子さん】

仮名・T子さん (ケアマネ歴あり)
年齢・93歳 (出会った当時)
要介護・3
既往歴・アルツハイマー型認知症、糖尿病、
    パーキンソン病
ADL・手引きにて歩行可、
   もはや車椅子が安全レベル
排泄・日中 トイレ介助リハパン
     →最終的にトイレ中止で日中もオムツ
  ・夜間 テープ式オムツ
嚥下・通常食
家族・同居:50代息子、40代娘
  ・娘様は統合失調症の為、常に在宅

T子さんプロフィール

訪問介護で働いていた時に、1日3回ケアがあり、かなりの頻度で介入させて頂いたおばあちゃん。

しかも、このおばあちゃんはお若い時にヘルパー経験があり、ケアマネの資格も取得されていた方。
(正確に言うと、ケアマネは資格があるだけで経験はないらしい)

私達の仕事を最も理解しているからこそ、優しくも厳しくもあった。

T子さんは、
⚫︎火曜土曜→朝デイ送り、迎え入れ
⚫︎その他曜日→朝、昼、夕のいわゆる帯ケア。
※帯ケア→毎日&朝昼夕のケアのこと。

ケア内容は、デイの日以外は、朝昼夕のケア内容は全て同じ。
排泄交換、食事提供、内服の30分。
デイの日は、上記にプラスして手引き歩行での移動介助し送り出し、迎え入れとなる。

・デイではない、在宅の日
ベッド上で排泄介助

起き上がり介助、椅子へ移乗介助

食事提供

内服

ベッドへ移乗
となるため、食べ終わるのを待たなければいけないし、結構時間がタイトであった。

そして、残念ながら生活環境があまりよろしくはなかった。

ヘルパー泣かせの環境

全日、統合失調症の娘様が在宅しておられ、
土日は息子様もいてくださる。

これが色々な面で難ありと思ってしまう、ヘルパー泣かせのお宅ではあった。
T子さんはとても良い人なのだけど、、

ヘルパー泣かせと勝手ながら思うのは、
①タバコのニオイ
娘様が家の中でのヘビースモーカー。
いつも部屋内はモクモクしていて、どこの壁も黄色く変色していた。
30分のケアだけど、1箱吸ってるのではないかと疑えるほど、1本吸うのが早いし連続して吸っている。私をはじめ、同僚ヘルパー達もこの匂いにやられてた。
当のT子さんは多分慣れているのか大丈夫っぽい。
だからその意味では問題無し。

②介護ベッドは導入しない方向。
T子さんはまさかの普通の木製ベッド。
ADL低下に伴い、介護ベッドの打診をしたがご家族様の同意が得られず撃沈。。
移乗の際にどうしても立ち上がりが難しかったり、排泄介助の際にベッドの高さをあげられないのが厳しい。

③家の中で車椅子は許されない
これは気持ちはとてもわかる。
床を傷つけるだろうし。
デイ送りの時、寝室から玄関まで手引き歩行だったんだが、この方法だと転倒のリスクが高いと訪看から連絡が来た。
いや、実行しているヘルパーですら思っていたことではある。
やはり家の中の車椅子の許可は息子様からは降りず、、でも2人介助の金額は支払えないとのことで。
ケアマネの指示のもと、デイサービスのスタッフに手伝って頂くことになった。
デイサービスのスタッフって、厳密に言えば玄関外からのサービスなんだよなぁ。
(そうよね?)
もうこれこそ優しさ搾取よ。

③3LDKの住宅(団地)全てのカーテンがしめられている。日中でも真っ暗。

④息子様が薬を勝手に抜いてしまう
往診医の出す処方箋に従って、訪看さんが服薬カレンダーに薬をセットしてくれるんだけど。
その薬を息子様は抜いてしまう。
(連絡ノートには「抜いた。セットしてある薬を飲ませて」と息子様より指示あり)
ヘルパーはセットしてある薬を飲ませることしかできないし、もう事後報告でケアマネや訪看さんに共有していた。

⑤病院に頑なに行かない
T子さんはよくベッドから転落していた。
認知症があるため、歩けないのに「食べ物を探して歩こうとした」、というのが常。
なぜだか動こうとした理由だけは、T子さん、きちんと覚えていたりする。
ヘルパー訪問時に、T子さんが床にいたということはしょっちゅうあった。
(ちなみに娘様はT子さんに話しかけることもなく放置である、、、娘様は介助できないし、ご病気もあるから仕方がない)
そしてあるとき、びっくりするくらいの腕の腫れがあった。動かせない。痛みがある。
訪看さんが、
「骨折の可能性がある」から、まず往診医に連絡の許可を息子様に問うが、「自分が病院へ連れて行く」の一点張りだった。
もちろん病院へ連れて行かれることはなく。。。
結果的にT子さんは3ヶ月くらい痛み続け、いつのまにか自然と痛みが消失していった。
(自然治癒、、人間の力ってすごい、、)

⑥着替えさせてもらえない問題
基本、T子さんは着替えをしない。
正確にいえば、洗濯物が増えるからか服を用意してもらえていない。
1日中同じ服だし、何か服にこぼしても、着替えがNG。
着替えをするのは、デイサービスでの入浴の時のみ。つまり週2回。

特にデイの日の朝。
失禁して服がビジョビジョ。
普通に考えて、着替えたい。
送り出す側からしても、濡れている状態って虐待に近い。
この旨を娘様に伝えても、
「今日デイでお風呂で着替えがあるから、そのまま送り出して」と言われてしまう始末。
着替えのお洋服をもらえない。
洋服は見えるところにあるのだが、、
以前違うヘルパーが同じ状況で着替えさせたら、後日娘様からクレームが来た。
そう、ヘルパーの気持ちがあれど、ご家族様が納得しなければしてはいけない。
デイの方はこの状況を把握してくれているのが救い。
ヘルパーが仕事怠慢したわけではないと。

⑦T子さんの食事問題
これは良いのか悪いのかよくわからないんだが、T子さんが嫌がってた時点でアウトなのかな?と思ってたこと。
⑤で記載したが、T子さんは基本お腹を空かせている。これにはきちんと理由がある。
これは次で詳しく↓

おいなりさんからの肉まん

T子さんの嚥下は、特に問題がない。
糖尿病があるため、週に1度だけインスリン注射を息子様対応でしているものの、特に食事に関して往診医よりNGの食べ物はない。
=何でも食べることができるのだが。

朝→レーズンパン
昼→おいなりさん→後に肉まん
夕→ブリ、お新香、白米

毎週週末に息子様が1週間分準備してくださるシステム。大きなタッパーにでで〜んと入っている。
毎日同じ献立だとしても、気にしなければ問題ない。
(私も朝と昼は最近毎日同じメニューだし)
栄養面を突っ込まれる可能性はあっても、一般的に高齢者でない私達ですら、栄養面はあれだったりするしね。

T子さんはメニューについて基本的に何も仰ることはなかったのだが、昼については一悶着あったときがあった。

昼食はずっと同じだと飽きてしまうらしい。
最初の昼食は、おいなりさん2個だった。
それが毎日続き、半年ほどたったころ。
T子さんが、

「お昼ご飯なに?おいなりさんだったらいらない。毎日毎日おいなりさんで食べたくない」

と、ついに申し出たのである。

ヘルパー的には、内服もあるので何かしら食べてほしいのだが、そう言われたら、、
娘様に報告したものの、おいなりさんのストックがなくなるまでは続いた。

そして、
おいなりさんの代役は、肉まん。
これも半年続いたところで、T子さんからクレームが来ることに。

T子さん、
「今日も肉まん?肉まんならいらない」

私、
「豚マンです」

とその場しのぎで言い換えてみたら、食べてくれたりしたけど。
(↑申し訳ないけど、私は肉まん=豚マンなので嘘はついてはいない)
その後、あんまんが加わり、なんとか肉まん、あんまんの交互になった。

その時は、
「T子さん、何でも食べられるし、食欲旺盛なのに。。世間話した時もいつも同じで飽きてるって言ってたなぁ」
と思いつつ、
毎日の食事を準備する側の「ご家族様も大変だよね」と後々になって思った。
毎日違うメニューを用意するって労力的にも金銭的にも厳しいし。

T子さんの優しい人柄

元ヘルパーでケアマネ資格を持ち、私達の気持ちに寄り添ってくださり、ヘルパーの声掛けにはいつも協力動作をしてくれた。

新人の本当にできないヘルパーの同行が何ヶ月も続いた時には、
「こんなになんでできないの💢先輩をよく見なさい」と、喝を入れて頂くことも。
(この時ばかりは「教える私の力不足です」と平謝りしたな)

そして、たまに幻覚症状があって、
「そこに人がいる」
と見えてしまうことがあっても、
「幻覚出てますよー、人はいません😁」
と正直に言うことで、笑いになっていた。
認知症の方の発言は「よく否定しちゃいけない」と習うけど、、
T子さんに限っては、ケアマネの知識があるので正直に伝えた方が、なぜかクリアな世界に戻ってこれていた。

1日3回の訪問。
訪問している全てのヘルパーが、勝手ながら同情してしまった環境だった。

T子さんは、正直な気持ち、不満をヘルパーに話してくれていた。

食事が毎日同じこと。
食べたいものが食べられないこと。
いつも空腹なこと。。。
(食べ物の不満多かったな、、、)
痛みが強くて病院に行きたいのに診てもらえないと訴えていたこと。

でも会話の最後には必ず、
「息子も娘もよくやってくれている」
といつも結論付けた。

親にとっては、「子供は何歳になっても子供」。
家族一緒に過ごせるだけで、T子さんは幸せだったのかも。

















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