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月の光のつかまえ方

お彼岸を過ぎて日が短くなると、毎日ほとんど同じ時間のはずの保育園のお迎えも、夜になって遅くなっちゃったような気がするこの頃。

暗くなるのが早くなってから、降園時、東に向かって自転車を走らせる家路で、息子と一緒にお月さまを探すのが恒例になった。息子は自転車の後部座席から身をよじりながら前方を探してお月さまを見つけると、「おつきさまあった!イェイイェイ!」と大きな声で心から嬉しそうに叫ぶから、私もつらてれてイェイイェイな気分になる。お月さまが見えないと、「くもにかくれた」とすごく残念そうに肩を落とす。たまに雲のことをモク、というのがかわいい。

今日は十五夜。娘が学童から帰ってきて、パパの仕事も遅くならないうちに終わって、家族4人、家の前で満月を見る。よく見えるようにと息子を抱き上げると、小さな顔に月の光が照ってつやつやとしている。娘はきれ〜い、と、同じく小さな顔を輝かせて見てる。私は目が悪いから、満月の模様はよくわからなくて、夜空に浮かぶ大きな真珠のように見える。

お団子も夕飯もしっかり食べた後、息子とパパがお風呂に上がった時に、もう一度娘と二人で外に出て月を見る。娘が手に持ってきたススキは、すっかり乾いて穂先がふわふわに開いている。ふと思い立ち、ススキを借りて月にかざしてみると、ススキの穂にたっぷり光が採れた。ママ何やってるの?と聞かれて、咄嗟にお月さまコチョコチョしてるの。と言ったら娘もやるー!と取り返してさっそくマネして、ふふふと笑ってる。お月さまコチョコチョすると、いっぱい光がとれるよ、といったらほんとだ!と嬉しそうにススキを振って、大きく深呼吸する娘。ほんのすこししっとりした夜風には、少し離れた家に植わっている、柑橘系の香りがする針葉樹のいい匂いがまじる。

今日のような、なんてことない日の出来事が、いつか自分が死ぬときの走馬灯に生き生きと映し出されますようにーーと、私は月に願う。


✴︎食材メモ

お団子は手作りじゃなくて、岩手の老舗和菓子屋、芽吹き屋さんの十五夜団子(お月見団子、だったかな)。中に甘さ控えめの餡子が入って、食べるときにはきな粉をふって食べる。仲良しのご近所さんにもおすそ分けして楽しんだ。



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