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私もお姫様病にかかってしまった

離婚して3ヵ月。これからは自由を謳歌しながら生きていこうと思っていた矢先、とても魅力的な人に出会ってしまった。始まりはとても穏やかで気づけば手をつないで鴨川沿いを歩いていた。私たちの国際恋愛は自然の摂理に従うようにゆっくりと転がりはじめた。

けれど、私たちの恋愛は出会ったときから難しいものだった。国際恋愛、年の差恋愛、子連れ恋愛、おまけに遠距離恋愛。ひとつひとつをとっても乗り越えるべき壁が山のようにあるのに、それが4つも重なっている。障害が多すぎて、うまくいくわけがないのだからこの瞬間を楽しむしかないと開き直ったのが、実はうまくいくコツだったのかもしれない。

あきらめるのは簡単だ。せっかく出会えたのだから、できる限りの努力はしようと決意した。すぐに「台湾男子 恋愛」と検索した。恋愛の攻略法をネットの情報に頼るなんて中2かよ! とアラフォーな自分に苦笑いしながら、台湾男子との恋愛について、傾向と対策をしっかりインプットした。

そこで必ずと言っていいほど出てくるのがこのふたつ。
「台湾男子と付き合うと二度と日本男子には戻れない」
「台湾男子と付き合うとお姫様病になってしまう」

一体どういう意味だろう。少し危険な匂いがするけれどなんだか楽しそう。実践と検証の日々が始まった。さらに「お姫様病」と検索すると色々出てくる。台湾では「公主病」と呼ばれていてちょっとした社会問題にもなっているそうだ。台湾男子があまりに女子を甘やかすので、女子がお姫様のようにわがままで自己中心的になってしまうということらしい。

確かにそうだ。台湾男子はとにかく優しくて紳士的。年齢に関わらず一緒に歩くときはいつも手をつないでくれる。幼い頃にテレビCMで流れていたチャーミーグリーンな毎日が待っていた。スキンシップがとても多く、底なし沼のように甘えさせてくれる。言葉と行動で感情をストレートに表現してくれる。本当に姫扱いなのだ。

びっくりするようなことが日々続く。記念日でもないのにプレゼントが届く。デートでもよく写真を撮ってくれた。数日後には私の写真をプリントしたポストカードが手書きのメッセージ付きで届く。一日に何度も連絡をくれる。台湾男子はとにかくマメ。何があっても彼女優先。これが日本男子なら、結婚詐欺かもと疑ってしまうところだが、台湾男子ならこれで標準仕様。

仕事の休憩時間も会いに来てくれる。お風呂あがりに皮がむかれたミカンが置いてあったときにはさすがに引いた。この姫扱いに麻痺してしまい、どんどんわがままになってしまうのがお姫様病なのだ。けれど、お姫様とは言っても決して弱々しいイメージではない。

台湾のジェンダー平等は堂々のアジアトップ。世界でもかなり上位。つまり女性がめちゃめちゃ活躍していてとても強い。台湾女子は自分の意見をはっきり言うし、共働きが一般的でとても自立している。そもそも夫婦別姓。結婚や出産で仕事をやめる人がいるなんて信じられないと彼も言っていた。

「結婚したら家事をがんばりたい、お家でごはんを作って、あなたを待つわ」なんて言っても彼は喜ばない。日本の価値観とはまるで違う。女子が料理をしないのも当たり前。外食文化がとても発達していて、値段も手頃でとても美味しく、さらに薬膳文化が浸透していて健康的。家庭で料理をしなくても困らずに生きていけるし、一人暮らしならばキッチンがない家もたくさんある。

つまり、女性のキャリアが尊重されていて、家庭的でいることより社会で自立して生きていくことの方が重んじられているのだ。そういう社会ができあがっている。お姫様はお城に閉じこもって優雅に暮らしているわけではなく、町に出てよく働く。本当によく働く。経済的、精神的に自立した上でお姫様扱いを受けているのだ。

台湾男子と付き合い始めたときは、溶けるような甘さしかわからなかったけれど、今はそこにある厳しさもわかる。まさにアメとムチ。台湾のお姫様は自分の意見をきちんと主張し、社会で堂々と戦い抜くことができる勇敢なお姫様なのだ。だからこそ男性にも大切にされている。それならば、お姫様病も悪くない。

台湾男子とパートナーシップを深めることで私はどんどん変わっていく。経済的、精神的に自立してこその恋愛。それぞれが一人でもたくましく生きていける。そんな自立した二人が手をつなぐことで見えてくる未来がある。台湾のジェンダー平等はそうやって紡がれているのだと実感している。本当にいいお手本だ。

今では私もすっかりお姫様病。大きな愛に包まれながらたくましくしなやかに自分の力で現実社会を戦い抜く。甘くて厳しい台湾男子に鍛えられ、数えきれないほどの壁を乗り越えてきた。今も日々奮闘中。確かにそうだ。この甘さと厳しさを知ってしまったら日本男子には戻れない。もう戻れなくてもいい。いずれは台湾で生きてみようと思う。それもまた人生。

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