『ホリエモンの宇宙論』を読んで
ホリエモンと言うと、お金持ちの実業家で、政治にも顔をだし、あれこれニュースを賑わせていた、どちらかというとマスコミ的なイメージが強く、この本も軽いタッチの物と思い込んでいました。
そもそもこの表紙ですから。
むしろホリエモンと宇宙はどう繋がるんだろう?
今お金持ちにブームの宇宙旅行の話なのかな!?
ぐらいの気持ちで読み始めたのです。
ところがビックリ。この本ビックリするほど面白くて、一気に読んでしまいました。
ホリエモンが、想像を越えた宇宙好きみたいで、宇宙の歴史やら、技術的なことに詳しいのなんの。
とにかくひたすらビックリです。
そして、難しいことも、分かりやすく簡単な言葉で書かれているから、読みやすいのです。
ホリエモンは、思ってた以上に真面目で頭のいい人みたいです。お見それしてすみませんでした。
宇宙開発が、冷戦時代に、アメリカとソ連の力比べで始まり、そのため、国家が惜しみ無く予算を費やして進められたこと。
その後、冷戦が終わってからは、今まで育ててしまった大産業を維持していくために、公共事業的意味合いを持ち、長い間市場競争もなく潤沢な資金をかけて続けられてきたこと。
そして、スペースシャトルの事故が引き金となり、アポロ計画、スペースシャトル計画が変更、中断され、漸く軌道修正され始めたこと。
そして、オバマ政権になり、公共事業的な宇宙開発は終わらせ、今まで蓄積したノウハウを利用して、民間が有人宇宙船を開発、運用できる環境を国が作り、その一方で、次世代技術の開発は国が引き続き行うという戦略に、大きくシフトしたのだという。
これにも問題がないわけではなかったようですが、オバマ新宇宙政策が、民間の有人宇宙船開発にごそっと補助金をつけ、なおかつ完成の暁には買い上げる方針で動くことにより、民間に大きなチャンスを与えたのは事実だったようです。選定されたメーカーも大手企業から下請け会社まで多岐にわたり評価されるものだったようです。
ここまでも興味深くて面白かったのですが、後半になると、話がもっと具体的になっていきます。
小さな衛星は、もはや、携帯電話の機能で充分なのではないか、つまり技術が発達し、あのぐらいのサイズでも充分機能できるのではないかというのです。
さらには、それを打ち上げるためのロケットをどうやって低コスト化していくかが問題になっていきます。
そして、ホリエモンは、小型で安い衛星、そして、それを打ち上げる安いロケットがあれば、事業化も可能と考え、仲間たちと、SNSという会社でとうとうロケットを作り始めるのです。
この本は2011年4月に発行されているため、試行錯誤の繰り返しの日々と苦労や失敗談の数々、そして、それでも協力してくれる人々との出会いもあり、とうとう最初のロケット「はるいちばん」が100kg級エンジンを2.4秒だけ燃焼させ、高度約500mにまで到達することに成功したところまでしか書かれていません。
その先いったいどうなったのか。とても知りたくなりました。
どうやら今は、インターステラテクノロジズという会社を作って、開発を続けているようです。
この本の最後に、ホリエモンはこんなことを書いていました。
★★★🚀★★
必要なのは固定観念を変えることだ。人間一般の想像力は意外なくらい乏しい。中にはとんでもない想像力を発揮して未来を先取りする人もいるけれども、私たち一般人の想像力は現実にからめ捕られている。SF映画『2001年宇宙の旅』には携帯電話は出てこない。すべて固定電話だ。あのキューブリック監督にして、映画完成から30年も経たずして普及することになる携帯電話を想像できなかった。
だから私たちは、どんなバカげたように聞こえる話でも、一応の筋が通っているならば、まずは受け止めてきっちり考え、前に進んでいく必要がある。大切なのは「今はこうだ」という現状ではなく、「これからどうしたいか」という希望・野望だ。
最後に自動車王ヘンリー・フォードの言葉を書いておこう。フォードは「人々は自動車が欲しいとは言わない」と言った。なぜなら、自動車はまったく新しい乗り物で、みんな自動車なんてものを知らなかったからだ。「人々は、もっと速く走れる馬が欲しいと言うだろう」とフォードは続けた。
私たちは知ってるものの延長線上に未来を考えがちだ。でも実際には、今は存在しないものが未来を作っていく。
この本も何十年後に読んだら、「ホリエモンがもっと速く走れる馬が欲しいと書いてらあ」と物笑いの種になるかもしれない。ぜひともそう言われるような、想像もつかないような未来が実現して欲しいと思う。
自分も、そのための努力をおしまないつもりだ。
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