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障がい者が地域おこし協力隊になったら。情報弱者になりがちな聴覚障がい者が、「発信者」になる世界になったら。|2024.小寒・雉始雊


■ 雉始雊(きじはじめてなく)

これは、くらしき桃子さんの桃パフェです。

倉敷市は、桃太郎伝説ゆかりの地らしい

「桃太郎さん、桃太郎さん、お腰につけたきび団子、ひとつわたしにくださいな」

でお馴染みの桃太郎伝説は、岡山県伝来の物語。倉敷市内にも、桃太郎ゆかりの遺跡が多く残されている。

くらしき日本遺産検定HPより

ということを、つい最近知った。きっかけは「くらしき日本遺産検定を受検することになったこと。さすがに受検するとなれば勉強をせねばならないよなぁ……と思いながらホームページを眺めていたら、桃太郎伝説が出題範囲になっていたのだ。

https://kuratoco.com/kurashiki_japan_heritage_kentei-2/

(ちなみに、この取材にも同行させていただいた。倉敷市の職員用ジャンパーがmontbellなの、かっこいいなぁ)

そういえば、岡山土産ってとりあえずきび団子を買ってしまう。年末年始もやっぱり、おじいちゃんのおうちにはきび団子を購入した。お餅好きとしては、外せないお土産のひとつ。

お正月にぴったり。紅白のきび団子。

雉始雊(きじはじめてなく)

鬼が島に鬼を退治するべく、桃太郎からきび団子をもらって家来になるのが犬と猿、そして雉(キジ)

そんな雉は今の季節に「ケーン」の鳴くらしい。わたしはまだ、雉の鳴き声を聞いたことがない。

【小寒】 いよいよ寒さが厳しくなる季節
初侯:芹乃栄(せりすなわちさかう) 1月6日~1月10日
次侯:水泉動(しみずあたたかをふくむ)1月11日~1月15日
末侯:雉始雊(きじはじめてなく)1月16日~1月19日

photo @nnn_photograph

わたしは左耳に補聴器をしているけれども、これはホームビデオのようにこの世界にあるすべての音を増幅する。だからたとえば、目の前の相手の声とエアコンの稼働する音がほぼ同じ大きさで入ってくる。

キコエル人たちの脳は、聞きたい声を無意識に選別してその音を聴きとりやすくしている。補聴器も昔と比べたらだいぶ雑音をカットするようになったけれども、人間の脳には追い付かない。

だから、何度も何度もいろんな音を聴きとる練習をして、音声でのやりとりも手話も(自分なりに)楽しめるわたしが、今ここにいる。

photo @naoto_kimny345

がしかし、聴いた経験のない音はどんな音か分からないので。キコエル人も、知らない英単語は聴きとれないでしょう?そんな感じで、わたしは言葉だけでなく環境音聴く練習をして、その音と日本語や手話の単語をマッチングさせて音を聴きとれるようになる。(もちろん、聴力的に、練習しても難しい音もあるけれど)

もちろん、雉の鳴き声も、雉という鳥を目の前にして鳴き声をしっかり聴くという経験がないと、日々の生活の中で聞くことはできないわけで。

雉の目撃情報を募集しております

きび団子を持って倉敷の街を歩いていたら、いつか雉さんにお会いできるのだろうか。会いたいな。

雉発見情報ありましたら、教えてください。鳴き声を聴きに飛んでいきますゆえ。

倉敷美観地区の川舟に乗った日

■Instagramにて、プラスヴォイスさんの活動をシェアしています

聴覚障がい者は情報弱者

お正月早々に、令和6年能登半島地震が起こった。東日本大震災を経験したわたしたちにとってもどかしいのはやっぱり、お耳の仲間たちの安否。助けが来てもキコエナイから助けを求められない、支援物資の配給状況が分からないお耳の仲間たちは、東日本大震災で健常者の倍の被害者が出たという障害者の内でも一番死亡率が高かった

つまり、聴覚障がい者は、情報弱者でもある。

明日、倉敷で災害が起こったらわたしはどうやって情報を得るのだろうか

今回の能登地震でも、一番に頭をよぎったのは「お耳の仲間たちは、必要な情報を手にしているだろうか」ということ。そして、もしわたしたちの暮らす倉敷で同じようなことが起こったときに、わたしはどうやって情報を得るのだろうかということ。

島国である以上地震からは逃れられないし、倉敷市は街の真ん中に川が流れていることや干拓地が多いことから、水害の起こる確率も高い。わたしも今の家に引っ越してくる際に不動産屋さんからハザードマップの解説を受け、街中が真っ赤に染まるハザードマップに青ざめた。

倉敷市ホームページより

株式会社プラスヴォイス ~聴覚障がい者のインフラ

今回の地震での報道を通して、わたしたちはどうやって情報を得たらよいのか情報発信者として平時から備えられることは何だろうと、云々と考えたお正月。そのタイミングで、株式会社プラスヴォイスさんから「震災支援活動のシェアや紹介をしてほしい」と連絡を受けた。

株式会社プラスヴォイスは、聴覚障がい者のインフラである「電話リレーサービス」を展開している企業。今回の地震を受けて、24時間体制で電話リレーサービスをおこなったり避難所等における情報保障の整備をされている様子を、SNSで拝見していて。

特に災害関連の問い合わせ先は、役所を筆頭に電話番号しかもっていないところやメールでの連絡に時間がかかることが多い。聴覚障がい者はただでさえ情報弱者なのに、やっと得た問い合わせ先も電話番号しかなかったら途方に暮れてしまう

そのような中、手話で伝えてくれる情報源があること、そこに問い合わせをすれば自分の言葉(手話や書記日本語)で問い合わせができる。とてもありがたい制度だ。

一方で、電話リレーサービスはまだまだ普及していない。そのため、平時であっても、電話リレーサービスを利用すると「本人の声ではないから」と問い合わせを断られてしまうこともあるのが現実。(わたしも経験済み)

また、わたしは聴覚障がいがあるけれども、音声で発信をすることができる。それゆえ、きこえに関する困り感を周りに理解してもらえずに困ることがよくある。

曇天の王子ヶ岳

平時である倉敷でわたしがプラスヴォイスさんの情報をシェアする理由

だからこそ、倉敷が平時である今

・わたしが普段どんなことで困難を感じているのか
・災害時に支援者にどのようなことを期待するか

を、プラスヴォイスさんの活動をシェアすることを通じて発信したい!

そう思って、情報のシェア及び本記事での活動の紹介をすることにした。

被災地にいなくても、今自分の暮らす日本で何が起こっているのかは、知りたい。もちろん、日本語でも理解することはできるけれども、見て分かるわたしたちの言語「手話」で状況を把握できると、どこかホッとする。ざわついた避難所でも、自分たちに起こった状況を見て理解できたお耳の仲間がいたに違いない。 

倉敷案内観光所くらしき館

あした倉敷に災害がやってきたとしても、わたしの周りのキコエル人たちにこんなサービスがあることを知っていてもらえたら。知ってもらうことで、わたしやお耳の仲間が避難先で情報を得られなくて最悪なケースに至ってしまうことを防ぎたい。あわよくば、私がシェアした情報が、いまこの瞬間も被災した方やその支援者に届いていたらラッキーだなぁと思う。

わたしたちが手話などの視覚情報を得られないことに対して強い不安感をもっていること。それをサポートするサービスがあること。

そんな聴覚障がい者の生活のリアルを、わたしの半径90cmの人たちがそれぞれ知っていたら。それらはぐるりとまわって、みんなの常識になるだろう。そうなったら、きっと、3.11のときのような悲しい出来事が繰り返されずに済むかもしれない。そうであって欲しい。

くらしき館の窓枠から臨む美観地区が好き

いつかこの倉敷で災害が起こったときに「高石さんの情報を見れば安心」と思ってもらえるような活動ができたら……と。

一般に支援される側になりがちな障がい者が、支援する側として協力隊になれたら。情報弱者になりがちな聴覚障がい者が、発信者として活動することが普通の世界になったら。

そんな大きな夢を胸に、今日も明日も活動を続けます。
令和6年能登半島地震に関係するかたがたに心の安息が訪れるよう祈っています。

穏やかな瀬戸内の凪を王子が岳から臨むのも好き

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