二次審査とメープルビスケットとジンジャーエール

AKB48 9期研究生オーディション 二次審査当日。

どんな服を着ていったかは覚えてはいない。
化粧は施さずに「わたし」という素材そのもので挑んだ二次審査。
(と、かっこつけてみたが、化粧を知らない芋くささ満点の高校一年生だっただけだ。)

千葉から一人で電車に揺られ会場の最寄り駅に着く。可愛らしくキメている女の子を見るたびに「あっ、この子絶対一緒のオーディションだ」なんて思いながら、一人で会場に向かった。

夢見る少女でいっぱいのエレベーターに乗り、指定の階へ。たまたま居合わせた一人の女の子を見て「絶対、この子合格する」と勝手に事前審査員をしていた。今だから話すが、その子はお母さんと一緒にオーディション会場に来ていた竹内美宥ちゃんだった。

待機場所には多くの女の子がすし詰め状態でいた。私は自分の番が来るまで、ただただ、立って待っていた。

名前を呼ばれ別室に案内される。入ると、審査員がズラリと並んでいた。
AKB48 6期研究生オーディションを受け、二次審査で落ちた私は「印象に残ることをする」を意識していた。
結果、自己PRで「わたしの家で飼っているセキセイインコのピーちゃんのモノマネをします!!!!!!!!ガクブル」と宣言し、その場で披露した。
審査員の反応は――――


――――


一人微笑んでくれた。
記憶が正しければ、お世話になった女性スタッフの方だと思う。

二次審査を終え、結果に自信こそないものの、一芸?を披露したことによってこのグループで頭ひとつ出たのでは…と思っていた。

二次審査の結果は、当日発表だった。
発表まで3時間ほど空き時間があったので、わたしは近くをぶらぶら散歩し、ケンタッキーで時間を潰した。大好きなビスケットにメープルシロップをひたひたにして。ジンジャーエールも忘れずに。きっとあの時のジンジャーエールののど越し具合はビールに匹敵するくらいのものだったと思う。

時間になり、わたしは会場に戻った。
夢見る少女たちの中に。

ざわざわとする会場が一瞬にして静かになる。

あいうえお順に名前が呼ばれていった(確か…なぜなら「な」がくる「な」がくる…って思いながら待っていた記憶があるから)



「中村麻里子さん」



会場で私の名前が響いた。
でも、なんだか呼ばれる気がしていた。


「はい」
と返事をし、ドアに向かった。

待機場所を出て、わたしより先に名前を呼ばれた子たちの中にわたしも混ざる。


しかし、まだわたしは二次審査を合格していなかった。


素直に喜びます。単純にやる気がグーーンと出ます。だって人間だもの。というより、ページをスクロールしてここまで最後まで読んでくれてありがとうございます!