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餅をつく人

「私さ,結婚したら餅をつく人になりたかったんだよね」 年明け気分の残る家電量販店で,まるで息をするようにその言葉が出たとき,少なからず自分で自分に驚いた。 確かにずっとそう思っていたけれど,口に出すのは,ましてや人に向かって言うのは初めてだった。 餅?といいながら,間もなく私の夫となる人は盛大に杵を振りかざす真似をしたので思わず笑ってしまった。いやそこまで本格的じゃなくて,と言いながら,ずらっと炊飯器が並ぶ列の端っこでこじんまりと展開されたコーナーを見やりながら,もちろん

    • 虹色のきものをさがして

      私が産んだのは,かぐや姫か何かなんだろうか。 「7歳の七五三,こんなのはどう?」 娘の目の前に広げたのは,何日か前にネットオークションで一目ぼれして深夜に競り落とした反物で,白地に大きな鶴が飛び立っている意匠のクラシカルなもの。モダンな感じが,はっきりした顔立ちの娘にとてもよく似合うと思った。 ところが娘は一瞥するなり「とりは,ちょっと」と難色を示した。いろも,しぶいし,と付け加える。 「え?ダメ?素敵だと思うけど?」そういいながらも全く提案になびく気配のない娘の様子に私は

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