「俺の家の話」の最後の話

ついさっき終わりました。
終わってしまいました。

このnoteも途中から更新できなくなっていて、それはなぜかというと、ずーーーーーーーっと拭いきれない違和感があったからなんです。
それが、今日、さっきようやく解決されました。
(2年越しで書いてなかった回のレビューも書いてます。)

なぜ、主人公の寿一のモノローグで物語が進行するのか。
なぜ、寿一はモノローグの中でだけ本音を話すのか。
なぜ、寿三郎はいつもギリギリのところで、残念な親父のままでいるのか。
なぜ、さくらと寿一はくっつかなかったのか。
なぜ、寿限無の反抗期は短く描かれたのか。
なぜ、他の家族のエピソードもそれぞれそんなにひっぱらないのか。

そして、何よりなぜ、9話でバラバラになった家族が割とアッサリ元に戻ったのか。

すべての「なぜ」が最終回で終結されました。
そうか、これは「俺の家の話」だったわ。
いなくなった寿一が語る、「俺の家」。
「さすが!」の一言しかありません。

1話がやけにスロースタートで、あれ?今回はこんな感じ?って思ったのは、過去noteにも書きました。
その思いが、潤 沢あたりから違和感としていよいよ本格的に感じ始めたのはいいんです。
わたしとて、長年宮藤官九郎のファンやっているわけじゃありませんから。
これ、このまま終わるわけないなって、それはわかっていました。

しかしまさかこんなことになるとは…
最終回のオープニング。
あの煙突を切り取ったのは誰なんだろう。
あそこでほぼ全員が「寿三郎が死んだ」って思ったはずです。
だって、9話のラストはどう考えても、もうじゅじゅに会えない🥺ていう展開だったんだもん。
「オレ見ない、ガキ使見るから」って言った寿三郎がスーパー世阿弥マシーン見ないまま死んじゃうのかなって。

だけど、その展開だと、寿三郎が寿一を褒めないままやんって。
世阿弥が勝って、実は寿三郎も会場にいて、寿一を褒める⁈
いやいや、だったらこんなにお能で引っ張った意味はあんの⁈
わたしの頭の中はパニックでした。

だからね、最終回を静かに待とうと思ったんです。
くんくが最後をきちんと纏めなかったことは、ドラマはもちろん、映画も舞台も今まで一度もないやん。
きっと泣くしかない最終回をぶっ込んでくるはずだよ、って、わたしはそう思っていました。
思ってたんだよ。
なのにさ、ぶっ込み方が‼️
これまでにないぶっ込みだよ、これ‼️

松前漬けの朝食も、秀生を送ってきたユカちゃんも、お風呂の寿一も、遺言状も。
全部全部全部、寿一がいない違和感を表している。
アニ(ではないけどw)を呼んで依頼していたお葬式も、寿三郎のために撮ろうとしていた動画も、全部軽やかに回収してさ。
それで何を描くかって、やっぱり親子の姿なんだよ。

1話からずーーっと引っ張ってきた、寿一のトラウマ「褒められない自分」。
寿三郎はわかってたんだよね、「褒めたら終わる」って。
頑固一徹な父ちゃんを気取っていて、ずっと息子を褒めなかったのは、褒めたらせっかく帰ってきた息子がまた出てっちゃうから。
寿一を縛っておくために、褒めなかった。
でも寿一のプロレスは別で、プロレスの話なら昔から二人で何度もした。
寿三郎は、スーパー世阿弥マシーンが寿一だってはじめからわかってたんじゃないかな。
だから「世阿弥に救われた」って言ったんだよ。
25年ぶりに帰ってきた長男に、バラバラだった家族をまた繋いでもらって、嬉しかった寿三郎の痴呆が進行しなかったのは、一度も褒めたことがなかった息子を褒めるためだった。
だけど、褒めたら終わる。
だからずっと褒められなかったんだよね。
そして、最後にやっと褒めた言葉は「人間家宝」!
ずっと「人間国宝」を散りばめてきたのは、ここで回収するためだったんだ。

西田敏行さんと長瀬智也くんの二人は、なんてすごい役者なんだろうと思う。
二人とも、くんくの脚本への理解がハンパない。
そこにいたのは、寿三郎と寿一以外の誰でもなかった。
全身全霊をかけて演じるってこういうのを言うんだな。
本当にすごいものを見せていただきました。

それから、わたしがとても好きだと思ったのは秀生のこと。
多動でいじめられていた秀生が、フリースクールに入ったからといって問題が解決したわけではないところ。
お能という、自分の居場所を見つけて、そこでようやく息ができたこと。
どんな人もその人にあった居場所があって、それは既存のものをあてはめればいいということではない。
そういうことをね、サラリと書いてくれる宮藤官九郎という人が、わたしは本当に大好きです。

「俺の家の話」は、本当に、「俺の家」の話だった。
最終回は涙涙の回だったけど、随所に笑いもあって、くんくはいつも「シリアスなだけは照れるから」って言うんだけど、だけど、リアルはこうだもんね。
悲しんでるばかりでもない、怒ってるばかりでもない、笑ってるばかりでもない。
いろんな感情が同時進行で巻き起こるのが家族だよ。
そのリアルさにみんなが共感した。
介護がどうの、お能がどうの、プロレスがどうのではない。
本当に、ただただ「俺の家」の話だった。

素晴らしい物語をありがとう!

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?