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ナニモノかに図られた、たび重なる偶然

ある日ふと思った。私はけっこう鈍感でのんびり屋なところがあって、俊敏で過敏な人に比べると「ハッ」とした気づきを得られることが人生において少ないのではないか?と。そういう人に比べると、なんだか損してるんじゃないかと漠然と思い何となく小石を蹴りたくなった。

そんな私を見かねてか、私に気づいて欲しいナニモノの方から私の肩を叩いてくる様な、繰り返し起こる偶然的なことが最近2回あった。知らんけど。

1回目は九州に出張に行った時だ。

私は「カッパが有名だよね」と言われる岩手県遠野市に住んでいる。出張にはちょくちょく行くのだけれど、今回ははるばる九州へ。福岡からレンタカーをし、宮崎から熊本へと急峻な山地を車でめぐる。一緒に出張に同行していたインターン生と寄ったパーキングエリアには偶然にもカッパの顔はめパネルがあり「家冨さんカッパですね」と彼女は遠野を頭に浮かべた様子で声をかけてきた。遠野にいればよく見かけるカッパモチーフを旅先でも目にしたことに2人でささやかに喜びあいながら、西の方にもカッパの言い伝えはあるのかなどと世間話をしつつ移動を続けた。出張は順当に進み、あとはレンタカーを借りた店舗まで3時間のドライブという時に眠気覚ましにローカルラジオでも流すかとFM熊本(?)をかけた。まもなく佐賀との県境というところだったのでいつどこでラジオ局が変わるのだろうか、とそればかりが気になりながら何となく流し始めた。

紙やすりの荒い目の様にしゃがれた声と明るさで進行するパーソナリティーが次のコーナーの趣旨と今日のお題を告げる。

「カッパはいるのか?!いないのか〜〜〜?!リスナーさんのそれぞれの主張を読み上げていきますね〜!!」

とまさかのカッパお題の回である。
何なんだこのめくるめくカッパ。インターン生と思わず目を見合わせる、間も無くパーソナリティーがリスナーからの意見を読み上げていく。

「カッパといえば遠野が有名ですね、柳田國男著・遠野物語では…(以下省略)」

九州の。熊本の。九州自動車道上で。
1500kmくらい離れた場所で。
強力なカッパと遠野の磁力…。
を、感じざるおえない私とインターン生。

この不思議でたび重なる偶然によって、自分のアイデンティの一部が遠野にあることにも気づかされた。全身緑色の頭に皿を乗せたキャラと遠野を紐づける自分がいる…。このナニモノからの、何の啓示なのかはさっぱり分からない度重なる偶然、これが一つ目である。

2回目は静岡で開催されたレイブパーティーに幼馴染と行った時だ。

300枚限定のチケットと小規模なパーティーだったが、会場全体のストリートな感じやアーティストの選定などなかなかイケてるイベントでただただ無心に身を委ねて踊ることの心地良さに浸った1泊2日だった。数台のキッチンカーや、複数のテント、その周りで焚き火をする人達、少し先の方で止まる事なく響く音楽。気の知れた間柄2人旅なので不毛な妄想に腹を抱えて笑ったりしながら、脳内垂れ流しの時間にどっぷり浸かる。スーパーラフな中、ふと口ずさむ歌がマカレナだったりした。

夜が明けても音楽は流れ続けている。なぜかマツケンサンバのミックスが流れ会場が絶妙に盛り上がる。目の前の小学生らしき男の子が歌っていて時を超えて歌われるマツケンサンバの凄さにも感心したりしていた。そして次に流れた曲は、そうマカレナだった。幼馴染と「あんれ、マカレナじゃん」と目を合わせる。

帰りの時間もあり一通り楽しんだ私たちはテントを早々に畳み、温泉に寄りつつ腹を満たせる場所を求めながらドライブした。道の駅に併設する寿司屋がどうやら沼津港に上がる魚を使用して美味しそうだということで目的地にした。着いた時には残り30分程度で終わるランチタイム。腹すかせ2人は滑り込んだ。イベントの余韻に浸りながら寿司がやってくるのを待つとマカレナが突然流れ始めた。「またかよ。笑」と二人してマカレナ3連発に何となく不思議な気持ちを共有する。これまたナニモノかが鈍感な私の肩を叩いてきた様な偶然の重なりに思えて仕方ない。何の啓示かは知らんけど。

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