生い立ち①

わたしは1970年東京に生まれた。
その時父は25歳母は23歳。
二人は同じ大学に在学し、
卒業間際に母はわたしを身籠ったらしい。
第一子の女の子としてわたしは生まれた。
母はその二年後に男の子を、そのまた一年後にも男の子を出産。祖母からはわたしの前にも一度、
末の弟の後にも一度、母は妊娠したことがあると聞いた。五回もの妊娠。
それは若さだけが理由だろうか?

わたし達三人姉弟は都心の一軒家で暮らしていた。隣には祖父母の家と祖父の経営する工場があった。従業員の人たちもいた。覚えているのは工場の作業場の油臭い匂い。その匂いが父の作業着に染み着いていて、私は幼いころ男性は誰しも油のにおいがするものなのだろうと思っていた。

年の近い三人を育てていた母は、専業主婦だが忙しそうだった。隣に住む祖母の手伝いもしていた。
手伝いと言ってもそれは祖母の趣味のお手伝い。
料理や掃除を手伝っていた姿は記憶に無い。

家庭には経済的にも余裕は無かったはずなのに、
私はなぜか多くの習い事をさせられていた。
ピアノ、水泳、書道、お絵かき、公文、テニス、アイススケート
そして、夏はサマーキャンプ、冬はスキー教室。
けれど、正直なところ大人になって何一つとして身になっていない。

家からバスで20分ぐらいのところに鴎外記念本郷図書館があった。
私は4歳頃にはすでに一人で出掛けるようになっていて、
一人で図書館で本を借り一人で返しに行っていた。園児なのに水泳教室にもひとりで通い、泳いだ後はひとりでバスで帰っていた。
水泳教室では、子供たちは親にタオルで身体を拭いてもらって着替えさせてもらう。
けれど私は特に寂しいと感じたこともなく、
母には弟たちの世話もあるし、
なんとなく自分の事は自分でするという習慣になっていたのだと思う。

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