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『前もそう言って怒ってたよ』

私の旦那さんはあまりペラペラ喋るタイプではない。

でも人の話にゆっくり耳を傾けて、最後にポツリと優しいことや真に迫ったことを言ってくれる。時々毒も吐く。笑
そんな彼の穏やかな人柄は付き合い始めてからずっと変わらないし、私が彼と結婚したいと思った理由の1つだった。

その反面、私は仕事でついイラっとしたり、誰かの言葉にモヤっとしたり、つい感情が逆立ってしまう時も多い。
いい大人だし…と自分なりに咀嚼.消化しているけど、どうしても飲み下せない小骨みたいな出来事が1割くらいはある。
そういう時は駆け込み寺のような感覚で彼に話を聞いてもらっていたのである。

先日仕事でどうしても納得いかないことがあり、それを夕食時に彼に話してたら
彼がさらっと
『前もそう言って怒ってたよ』
と言った。

いつもと同じテンションで、彼の好物のサラダチキン食べながら何気なく放たれた言葉で、私は頭から水をぶっかけられたような気持ちになった。

『え、前も言ってた…?』
『確かに身に覚えあるような…』
『なんか怒ってんのかな』
『いやでも完全にいつも通りだし』
『てか言われてからそれに気付く私ってだいぶヤバくない?』
『同じようなネタ聞かされて彼も絶対嫌だっただろうな』
『ハタから見たら堂々巡りしてるように見えてたんだろうな』
『猛烈に恥ずかしくなってきた』

こんな感じの思考が数秒のうちに頭の中を駆け巡り、さっきまで感じていたモヤモヤが完全蒸発し、

『確かにそうだわ』
『ごめん』
『ありがとね』
と伝えてその会話を終了した。

自分事として見ると深刻に見えることも
ハタから見ると、結構しょうもないことだったりする。
共感やアドバイスじゃない、客観的な一言が何より心を癒したりする。

今まで自分は比較的穏やかな性格だと思っていたけど、彼と付き合うようになってからその認識を改めざるを得なくなった。
『なんか私ばっかりギャーギャー言ってるんだけど…!!』と冷静になり
『アイス食べて落ち着こ』みたいになる機会が増えた。

このまま彼との生活を積み重ねていったら、心の角が削ぎ落とされ、だいぶ穏やかでフラットな人間になれるような気がしている。

そんな彼でも、1ヶ月に3回くらい
『今日仕事場でさ…』と話してきてくれることがある。

私は彼みたいに的確な言葉や、悩み解消のヒントなんて持ち合わせていないかもしれないけど
その時は何をやっていても、どんなに忙しくても、手を止めて彼の話に全身で耳を傾けることに決めている。

#エッセイ #日記 #夫婦生活 #結婚生活