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JAPAN⇄CANADA 5-1



(この回ではピアス穴を開ける話をしております。身体を傷つける内容が苦手は方はご注意ください)



高校卒業、マーチングの大会最高得点での優勝、大学進学の思わぬ足踏み、さまざまなことが起こった2014年夏も過ぎて秋の気配を感じ出した矢先、カルガリー市は思わぬ大雪に見舞われました。9月最初の週に足首程の深さまで積もる雪が降ったのは異例の出来事でした。2日後には気温も上昇し完全に溶けてしまったのですが、被害はかなりのものでした。冬支度ができていなかった木々は、葉の重さに加えて雪の重さがのしかかり至る所で枝が折れ、道を塞ぐくらいの大きな幹が市内のあちこちで問題となりました。少しずつ撤去されていく様子と無惨な木の姿を見るとなんだか哀しく感じました。もしかしたら自分自身に悲しさを感じる出来事が立て続けに起こったせいでそんな気持ちになっていたのかもしれません。今振り返るとその時期に起きたいろんな苦しい出来事は起きてよかったと思います。そのことがなかったら今の自分は存在していないと強く感じるからです。


大学に再申請するためのオンライン授業を受けていたとはいえ、自分のペースで好きに進めていいコースだったのでかなり時間を好きなように使うことができました。そして、学校に行かないこの1年間を無駄に過ごしたくないと思い沢山のことを前向きに取り組むことにしました。バイトはもちろん、ボランティアをしていた日本語学校でもTA(ティーチャーズアシスタント)として少しではありますがお給料をいただけるようになりました。同年代の日本人に会いたいと思い、私が参加出来そうなサークルを探してメールを送ったりなんかもしました。


そんな思いがこうじたのか、日本語学校の入学式で会場の準備をしていた時、同じようにボランティアで来ていた同学年の子と知り合いました。その子はカルガリーにワーキングホリデーで1年前から来ていて、この年から学校で英語を中心に授業を取っていたのです。さらに嬉しいことにメールを送った日本語・日本文化交流サークルにも参加しているということが発覚し、次のサークルの集まりでまた会うことになりました。


サークルに行く当日は久しぶりに同年代の日本人に会うということもあり、かなりドキドキしていました。マーチングをはじめて以降かなり殻を破った私ですが、根っこにある恥ずかしがり屋な性格が出て声をかけられなかったらどうしようと思っていました。ただそれは要らぬ心配だったようで、着いたらすぐにその新しい友達ゆいかちゃんと合流し、友達も紹介してもらって好調なスタートを切ることができました。この日は、サークルの歓迎会だったようで色んな人と交流してお互いを知れるような楽しいアクティビティが準備されていました。そのおかげで、沢山の現地の大学生とそして留学で来ていた同年代の日本人とお話をすることができました。1時間ほど経った頃ピザが届きみんなで楽しい雰囲気のまま談笑しながらピザを美味しく食べました。こういう集まりでピザを食べるのは、カナダ(とアメリカ)の習慣かもしれません。


そのあとは自由時間となり、私はアクティビティで知り合った1つ年上の男子留学生とゆいかちゃんと3人で色んなことについてお話しました。次第にもっと色んなことしたい!という欲が出て、カナダに来てから初めて友達とショッピングモールに出かける予定を立てました。2人に打診した時はすごく緊張していたのを覚えています。誘うのってこんなに意を決してしないといけなかったっけ?と心の中で思っていました。かくしてその次の週末に3人で会うことが決まったのです。


当日は集合場所までどう行ったのか全然覚えてません。当時ラーナーズ(日本で言うと自動車仮免許のようなもので、これを1年間所持したのち実技試験に臨むことができるという免許。免許取得もやりたいことの1つでした)を取得したばかりで車の運転は自分1人では出来なかったのでバスで行ったか送ってもらったかだと思うのですがどっちだったのだろうか。とにかく初めてのお出かけにすごくウキウキしていたのは確かです。この日の1番の目的はピアスの穴を開けることでした。20歳になったら開けて、成人式でまみーの持っていた真珠のピアスをつけるという夢があったのですがついに実現させる日が来た、というわけです。


私以外の2人はピアスの穴を開けていたので、その時それぞれどうだったかという話をお昼ごはんを食べながらしてもらいました。一瞬で終わるけどチクッとする、そして開けたあとのケアが大切だと教えてもらいました。そしてお店に向かいました。私はClaire’s(2020年に日本から撤退してしまったアクセサリーショップ)で開けてもらうことにしていました。日本でのピアス事情は分かりませんが、カナダは自分で開ける、病院で開ける、の他にお店で開けてもらう、という方法があります。最初にどのファーストピアスを付けるかを決めて書類を書きます。お店で開けてもらう人は18歳未満だと保護者の同伴が必要なので身分証明書の提示もしなければなりませんでした。ここでなんと重大なことに気づくのです。ラーナーズを取得したばかりということは(前の段落より)ご存知かと思いますが、実はまだ証明書が発行されておらず仮の紙しか手元になかったのです。終わった、と思いました。わざわざピアス開けに付き合ってもらったのに目的達成できないし2人に申し訳ないと感じました。でもここはカナダフレキシブルな国、ありがたいことに店員さんが店長さんだか先輩スタッフだかに聞いて紙の証明書でも大丈夫、という許可が降りたのです。そうしてなんとか書類も書き終わり、いよいよその時がやって来ます。


イスに座って紫の水性ペンで耳たぶに印を付けてもらい場所を確認します。右耳に将来あと1つピアス穴を開けるつもりだった(実際に開けた)のでそのことを伝えて穴の位置を少し修正してもらったらいよいよ耳たぶがガンに挟まれました。

「いくよ、3、2、1…」

という合図と共に、店員さんがガンを勢いよく押しました。カチッという音と同時に耳たぶに違和感を感じました。そしてなぜだか急に笑いが込み上げてきてにこにこしてしまいました。そのまま右耳も同じ要領で開けてもらい私の両耳にかわいらしいダイヤ風の小さなピアスが装着されました。そのあとケアについての詳しい説明や消毒液の付け方などをしてもらいお店を出ていきました。私はこの時ついにやったという気持ちから、心臓がバクバクでした。一緒に付き添ってくれた2人からはおめでとうと言ってもらいました。なんだか嬉しくてさらに心臓の鼓動が早くなるのを感じました。耳に気をつけながらお買い物を続け、残りの時間を3人で楽しみました。こんなに外に出て楽しんだのはカナダに来て今まで無かったことだったのですごくいい思い出になりました。


家に帰って家族のみんなにピアスを見せました。まみーとだでぃーは以前から開けないのか聞いてきていたので、おー!という感じでとてもいい反応をしてくれました。耳はその日じーんとする鈍い痛みと若干の違和感が残る程度でした。毎日しっかりケアもして、外せる時期まで待っていたのですが、まさかのマーチングバンドでの本番が突然舞い込み1、2週間程早めに外す羽目になったのは内緒です。

-つづく-

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