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そして私は怪獣になった。

私は不機嫌な人が大嫌いだ。
大人にもなって、不機嫌でいることは重い罪だと思っている。

それなのに、生理前になると
自分の意思と反して、不機嫌を強いられる。

PMSのせいで、頭痛はするし、眠いし、いくら食べても空腹でイライラする。トイレも近くなるし、急な腹痛も会議中にやってくる。

こんな理不尽さに、もう5年以上耐えている。

気休め程度の予防法や薬はたくさんあるし
PMSに関する本も読んだ。
でも私にはそんなものではどうにもならない。

毎日そばにいる彼は男性だから
本質的に理解してくれることなんて不可能。
理解して欲しいと説明することすら腹が立つ。
「お姉ちゃんがいたから、オレ、それ知ってるよ」みたいな顔をされることにも腹が立った。

同志の女友達に共感を求めたら
「私はそんなのないなー。」と偉そうな顔をされてもっと腹が立った。


朝寒いのにも腹が立つし、電車で隣の人のバックが腕に当たることに腹が立つ。前髪が目にかかるのにも、セーターの毛玉にも、カフェで順番を待つのも腹が立つ。
楽しそうに笑う雑誌のモデルに腹が立つし、株で儲けてる人にも何故か腹が立つし、彼のメールのタイミングにも腹が立つ。

腹が立つ自分に腹が立つ。


誰も悪くないのに。

全て破壊したくなる日が、毎月やってくる。
怪獣になってお花畑を焼き尽くすみたいな。

そして絶望する寸前で治まって

今日みたいな、何かを始めようとした
お天気のいい日にまたやってくる。

今日は彼の優しい言葉を無言でスルーしたし
コンビニの店員さんの親切が煩わしくて
お礼も言えなかった。


言えるはずの言葉が出てこなかった。


だから、
今夜はせめて
寝る前に「おやすみなさい」と彼に言う。

せめてあのお店にもう一度行く。

PMSの後にくる気分のいい日々に挽回する。
だってこれは本当の不機嫌じゃないんだから。

そして私は怪獣になった
もう元へは戻れない
うつむき、それでも広がる世界に
泣きながら返事をして
だから私は逃げ出さなかった
誰でもない自分から
渦巻く空が呼んでいるの
何より大きな声で
           「嵐が丘」鬼束ちひろ

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