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サムイ島での一生忘れられない愛犬との出会い

ジンジンとの出会い

サムイ島に来たその日から、私達が泊まっているヴィラに野良犬が住み着いていました。正確に言うとこの家に着いた当日は隣のオーナーの家の前にいたけれど、目が合った瞬間にこちらに笑顔で駆け寄ってきてその日から私達と暮らす生活が始まりました。

人懐っこさに私達はすぐにメロメロになり次の日には大きいドッグフードを買っていました。オーナーがジンジンと名付けていたので私達もそう呼ぶことに。スーパーへ行くときも着いてくるし、出かけて帰ってくるとしっぽが取れてしまいそうなくらいブンブン振り回して喜んでくれる本当に可愛い子でした。

サムイ島もロックダウンでスーパー以外はどこにも出かけることができなかったけどジンジンが一緒に過ごしてくれていたおかげで家にいる生活は全く苦ではなく、むしろ幸せすぎる日々でした。

最初は汚かった体も毎日のブラッシングでつやつやになったし、マダニ避けの薬もあげて虫も寄ってこなくなり野良犬ではなくすっかりうちの子になっていました。

引きこもり犬の突然の失踪

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ロックダウンが解除されて数日立った頃、私達がカフェに数時間行って帰ってくるとジンジンの姿がありませんでした。いつもなら立ち上がってしっぽをブンブン回してお出迎えしてくれるのにどこ行っちゃったんだろう?と思い周辺を探したけど見当たらず。
いつもトイレ以外は全く出かけずにずっと家で寝ているのに珍しくお散歩でもしてるのかな、まあ夜には帰ってくるだろうと待っていたけど結局その日は帰ってきませんでした。

次の日も近所を探したけど見つけられず、だんだんと嫌な予感がしてきました。ジンジンはもう歳も老いてガリガリだし、ほとんど寝ているくらい体力もないのでどこか遠くへ行ったとは思えない。どこかで事故に合ったのか他の犬に襲われてしまったのか不安はどんどん募りました。スーパーで「もうすぐ無くなるから」と夫がジンジンの餌を購入していたのがなんだか虚しく感じました。

いなくなって3日目は「海辺のカフェに行った日にジンジンがいなくなったから同じカフェに行ったら戻ってきてくれるかも」という夫の若干メルヘンな考えに乗って行くことに。
海の風を気持ちよく感じて目を瞑っていると急に「もうジンジンに会えなくなるのかも」という思いが急に現実味を帯びて涙が止まりませんでした。お客さんが他にいなくてよかった…。

精神不安定すぎるBBQ

友人の「BBQをして匂いで釣ってみたら」というアドバイスを聞いてすることに。カフェの帰りに久しぶりに大きいスーパーに行ったら品揃えも多くてわくわくして、「ロックダウンも解除されたしそろそろ出かけたら?」というジンジンからのメッセージかもねなんて2人で笑い合いました。

最近は環境や動物のことを考慮して肉は買っていなかったけど藁をもすがる思いで小さな肉を一切れ購入してベランダで焼いたけど結局来ませんでした。しかも固くて美味しくなかったし最悪の気分。気持ちが暗くなるからとお笑いのライブ映像を見たりもしたけど、お笑いを見ては爆笑してジンジンがよく座っていた場所を見ては号泣してを3回程繰り返したあたりで虚しくなってお開きにしました。

偽ジンジンお持ち帰り未遂

サムイ島にある犬猫の保護施設に行って、最近来た犬はいないか聞いてまわることに。2軒目の施設にちょうど今週来たという犬がジンジンとそっくりで、パニックになっていた私は若干の違和感を無視して「ジンジンがいた!」と叫びスタッフは「セイムセイム(あんたたちの写真の犬と同じだね)!」と言ってたけどよく見るとジンジンより太っているし足にあった傷跡はないし完全に別の犬でした。旦那だけが冷静で「いやいや全然違うよ」と言ってくれなければ危うく連れて帰りそうでした。

施設の帰り道はやっぱりもう会えないのかもと思い号泣したけど、家に帰ってからは似た犬をジンジンだと思い込もうとした人間の脳みその都合のよさがじわじわ面白くなってジンジンがいなくなってから初めて2人で大笑いした夜でした。

ジンジンは他にも家があったのかも

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結局施設にもいないし、サムイ島の迷子犬のFacebookグループに書き込みをしても反応がないので諦めかけていました。そしてふと気づいたのが、うちによく遊びに来ていた犬がロックダウンが終わってからぱったり来なくなったこと。そしてその犬をスーパーの目の前にあるレストランで見つけたことでした。今までレストランでご飯をもらっていた子たちが色んな家に行ってご飯をもらうようになったとしたら、ジンジンもいままでご飯をもらっていたところに帰ったのかも。
体力的に遠くへは行かないだろうし、うちにもまた遊びに来てくれるかもしれない。これから近所のレストランにも行ってみようと2人でわくわくしていました。自分たちの希望的観測だったけど、事実が分からない以上前向きに考えるしかありません。

そしてジンジンがいなくなってからちょうど1週間の昨日、近所のレストランに行くために支度をしていたらハウスキーパーさんからジンジンはもう亡くなったという知らせを聞きました。家のすぐそばの木の下で亡くなっていて、タイの方々が埋葬してくれたそう。ちょうど私達がカフェに出かけている間に亡くなってたんでしょう。
もっとよく探して見つけてあげればよかったと思ったけど、きっとその日がジンジンの寿命だったんだと思います。聞いた瞬間は頭が真っ白になって涙が止まらなかったけど、正直やっとちゃんと悲しめるとホッとした思いもありました。

この1週間はどこにいるのか、事故にあったのか保護されているのか亡くなったのか分からなくて辛かったのでやっと事実が分かって安心しました。私も夫もジンジンを失ったショックが大きすぎてこの1週間はほぼ毎日くだらないことで喧嘩していたし、イライラしていました。

それに、私達だけではなくて他にもジンジンをかわいがっている人はいるだろうからそっちへ行ったのかもしれないと思っていた私達にとって、最後まで私達と一緒に過ごしてくれたんだと思うと愛しさと感謝の気持ちで満ち溢れました。

最後まで一緒にいてくれた気持ち

オーナーもハウスキーパーさんもジンジンは病気を持っていてガリガリだったから寿命だろうと言っていました。当たり前のように私達が島を出るまで一緒に居られると思っていた私達にとって想像を絶する出来事だったので受け入れるのに時間が掛かりそうだけど、この自粛期間で家を出られない間にずっと一緒に居てくれて私達に沢山の愛とかけがいのない時間をくれたこと、そして最後まで一緒に居ることを選んでくれたことに感謝しかありません。

小学生1年生の頃に祖父が亡くなったけど死というものをよく理解していなくて、それ以来 幸運なことに大切な人の死を経験したことがなかった私にとって人生で一番辛い出来事かもしれません。

親に怒られたり、友達と喧嘩をしたり、彼氏と別れたり、仕事で辛いことがあってもここまで辛い思いはしたことがなくて、大切な存在がある日突然なくなってしまうというのはこんなに胸を引き裂かれるような思いなんだと28年間生きてきて初めての経験でした。

はたから見たら可愛がっていた野良犬が死んだだけで?と感じるかもしれないけれど世界一周が中止になり失意の中サムイ島にきて、自粛期間を一ヶ月半ずっと一緒に過ごしてくれたジンジンは間違いなく家族だったし、私達にとって一生忘れない大切な思い出となりました。

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ここへ来てまだ間もない頃に「ジンジンはもうよぼよぼだし、私達がここにいる間に死んじゃったほうが寂しくないのかもね」なんて言っていたけどまさか本当にそうなるとは思っていなかったので、全く心の準備が出来ていませんでした。でもジンジンは最後の日まで私達と穏やかで幸せな時間を過ごしたと思うし、ジンジンに寂しい思いをさせるよりはこのタイミングで寿命を迎えたことはきっと幸せだったと信じています。

今でもジンジンのかわいい姿を思う浮かべると会いたくて涙が止まらないけれど、こっちを見てしっぽをゆらゆら揺らしている姿も、名前を呼んで両手を広げると駆け寄ってくる姿も、安心しきっている寝顔も全ての宝物のような時間は大切に胸にしまって前に進んでいこうと思います。
今ある大切な存在をちゃんと大事にしてね、なんてメッセージをもらった気がします。ジンジン本当にありがとう♡


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