見出し画像

ここでひとりシエスタを_006

気になるあの劇場へ デビュウの日より

 今年に(2019年)入り、前々から気になっていた映画館へ行くことが叶いました。しかも2箇所も。どちらの劇場も人情と個性があるところで、嬉しい気持ちになってニタニタとしたのでした。

豊岡劇場

 通称「豊劇」。兵庫県の北のほうにある映画館です。両親の地元でもあり、ふたりが若い頃に通っていた場所。よく話を聞いておりました。当時は2本立て上映、しかもチケット1枚でその日は何度でも観ることができたようです。うらやましいっ!後に聞いた話だけれど、当時ふたりは月に一度は映画に行くと決めていました。そうとは知らずに、娘のわたしも「月一で映画観に行くぞ」ルールが自分の中であったりなかったりしているので、無意識のうちにそのカルチャーを受け継いでいたみたいです。

画像1

 子供の頃祖母の家に行くと、市内のいたるところに年季の入った看板が立っていて、上映中の作品のポスターが貼ってありました。他の地域の上映よりもいつも遅れて公開されていて、「田舎だから公開が遅いのだな、可哀想」と幼い頃少し小馬鹿にしていたと思います。(お住いの方、すみませんでした)でも、自分が高校生になって映画館に通う面白さに目覚めた頃、「両親の思い出の劇場でわたしも映画を観たいな」と願うようになりました。実は豊劇、わたしがなかなか行く機会がないうちに一度閉館してしまっているのです。それを知ったときは悔しかったな...。だけど、数年前にクラウドファンディングで復活を果たしました!(イマドキだ〜!)

 わたしが訪れたのは、まだまだ寒い年明けからすこし経った頃。(豊岡の冬は本当に寒い、そして夏はめちゃくちゃに暑い)祖母の家から5分ほどまっすぐ歩いていると着いてしまいます。家から歩いていける距離に映画館があることに感動...!見逃していた「パッドマン」「華氏119」でギリギリまで悩みました(上映時間がほぼ同じだった)。チケットカウンターの前でも決められなくて、お兄さんに「まだ悩んでいるんです」なんて会話してみたりして。こんなにゆっくりカウンター前でチケット購入したのは初めてです。上映10分前になんとか「パッドマン」に決めました。劇場に入ると両親から聞いていたストーブを発見!「これか〜」っと嬉しくなりました(当時は達磨ストーブだったらしい、わたしが見たのはレトロなデザインの石油ストーブでした)。場内は人が少なくてゆったり。自由席で、どこにしようかとウロウロ。「王様席」というゴージャスな椅子を発見し座りかけたところ、一番前にコタツ席が!なんという贅沢!!とすぐにそちらへ。自分でスイッチを入れるところが愛らしいです。素晴らしい体験でした。

画像2

- かわいいチケット -

 ロビーは新しくて綺麗だし売店もオシャレだったけれど、昔のカメラやスピーカーがそっと展示してあったり、ところどころに歴史の蓄積も伺えました。ご年配の方が多く住まう地域だからなのか、上映スケジュールをFAXで配信するシステムがあって、その少しアナログな姿に胸がときめき、人の息づかいを感じれたのが良かったです。地域を盛り上げようというエネルギーのある映画館。また豊岡に行った時は、ぜひお邪魔しましょう。(パッドマンはスピーチのシーンで気持ちが熱くなりました。)

塚口サンサン劇場

 兵庫県は尼崎市にあります。応援上映があるならば大盛り上がり!など様々な噂を耳にして、ずっと気になっていました。そんなサンサン劇場、2020年の東京オリンピックを控えた2019年に「AKIRA」を上映するというではありませんか。しかも新元号を跨ぐ期間に!さすが噂の劇場...というのと、行かねばとという使命感にかられて、念願のサンサン劇場へついに。

画像3

 「重低音ウーハー上映」という特別なスピーカーでの上映。名前のとおり重低音が響き渡り、空気が震え、バイクシーンのかっこよさが増して痺れました。お客さんの雰囲気もよく、みんな作品に入り込み静寂なシーンは誰も物音を立てず場内が張り詰めていて、場面のメリハリがより映えていたのでした。さらに本編が終わると拍手まで!感動!素晴らしい空気感と映画愛に溢れた貴重な体験。もうお気に入りの映画館です。そしてウーハー上映ver.のAKIRAが良すぎて気持ちが高ぶり、未読だった漫画にも手を出しました。


 どちらも生活の中に映画館がある環境なのがわたしにとって魅力的で、うらやましいばかりです。「おでかけ」として映画に行くのではなくて、ふらりと観に行ける。映画を楽しんでもらおうという企画や工夫。シネコン系からミニシアター系まで幅広いラインナップ。劇場から感じる熱。わたしも映画館がある街にいつか住みたいなぁと思いふけているのでした。

2019/05/06配信:006号 ネットプリントver.


marica.

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?