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自分の直感を頼るということ〜旅路@シチリア

それは、昨日のこと。作業もろもろあり、自転車を借りてシチリア・パレルモの街を出発したのは、2時を回っていた。

パレルモから直線で13キロ。半島にある白砂のビーチがきれいなモンデロという小さな街を目指す。直線の道よりかなり長くはなるけど、海沿いの曲がりくねった道を選んだ。

切り立った崖のような山が家々の後ろにそそり立っている。波は高いけど、緩やかな曲線沿いに街が広がる海辺もきれいだった。ただ、海沿いの道は別荘地のようで歩く人が全然いなかった。

写真を撮ったりしつつ、何とか街にたどり着くと、4時を回っていた。ビーチはサーファーで賑わい、発見したケーキ屋さんでパスタでリコッタチーズを巻いたお菓子が疲れた体にとろけた。

帰りは直線で早めに帰ろう。1時間もすれば、あたりは暗くなる。店員さんに直線の道について尋ねると、顔を曇らせた。「ここは夜になると売春婦が出てきて、かなり危ない。あなたは外国人とすぐわかるし、お金を巻き上げられる」。他の店員さんもとにかく自転車はやめろ、タクシーを呼べ、の一点張り。

でも海沿いの道は2倍くらい長いし、上り坂も多い。行きだって、人気があるとは言えなかったし、帰りは途中で確実に日が暮れるだろう。何とかいけるんじゃないかと思い、危ないという直線の道を行くことにした。

しばらく漕ぐと、鬱蒼とした並木道に入った。日は落ち切っていないが、かなり暗い。車は数車線にビュンビュン流れるが、歩く人も自転車もいない。次第に上り坂になっていった。山道かもしれない。何度か車にクラクションを鳴らされた。

この道はやめよう。引き返して、海沿いを行こう。そう決めた。

日が暮れかけた海沿いの道は、山の向こうに雲全体が薄い赤色に染まり、海は鈍色に光っていた。完全に安心とは言えないけど、自然を見ていると、ホッとした。

旅は、直感が鍛えられるなぁとふと思った。確かな情報はない。Googleマップは、危険といわれた道を勧めるだけだった。私もその道の入り口あたりを見て、かもしれないという幾つかの情報を感じ取っただけだった。そして結局の決め手は、なんか変な感じ、嫌な感じ、という感覚的な違和感だった。

いくらインターネットや本を調べても、本当の生の情報は分からない。そしてそれは、現場に行ってみても、実際のところがよく分からない中で判断するしかない時がある。

18歳の時からずっと旅を続ける友人がいる。
「旅は、直感とセレンディピティを感じ取る力を鍛える1番いい機会だよ」と言っていた。自分にピタッとくるかどうか。微かだけど、自分にしか分からない感覚に耳をすますこと。敏感であること。そして、それを信じること。

慣れ親しんだ生活の中では、そんな感覚に気づかなくても自分を心地よくする術を知っている。自分しか自分を守れない。自分しか自分の道を選べない。そんな旅のピリッとする状況が、自分の感覚との付き合い方を思い出させてくれた。

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