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ぐっと、大人びた姿を目の当たりにして

神宮球場の芝生に寝っ転がって空を見上げると、プラネタリウムにいるみたいにまん丸な空間が広がっている。地球って丸いんだなあ、って都会の真ん中と思えないことが頭の中に浮かぶ。夜風が気持ちよくて、流れ星を探してしまう。
そうしているうちに体の力が抜けてきて、自然とまぶたが落ちてくる。全身に酸素が巡って、空と一体になるような、不思議な感覚。

不意にグラウンドでのヨガに参加した夏の夜のことを思い出すぐらいの心地よさ。神宮って本当に居心地のいいなあ、なんてちょっとだけ冷たい秋の風を浴びながらぼんやりする瞬間があった。

その目の前では、全然違う温度感で熱戦が繰り広げられていたのだけれど。

たった1日過ごしただけで「もしかしたら高校野球よりも大学野球の方が好きかもしれない」と思った。主な理由はざっと4つ(やや多め)

①まず体格が高校生よりしっかりしている。下位打線だろうと木製バットで深々と外野を割っていく。(やっぱり木のインパクト音が好き。)
Twitterで、「日本尻ーズ」というタグを見かけたぐらいなので、需要ありそう。筋肉質のいいお尻の人いっぱいいたよ。笑

②試合の展開がシンプル。でも、とても考えている印象を受けた。
東大バッテリーが見せた試合序盤の法政打線の芯の外し方もすごいと思ったし、明治の継投の甘さを見逃さない集中打はやっぱりテンションが上がる。バントを選びそうなカウントでも、当たっている場合はそのまま任せたりする。あの判断は選手なのか監督なのか……。

③高校野球が好きな人にとっては、数年前、活躍した選手たちがグラウンドにいる。それもぐんと成長して。
横浜高校出身の齊藤くんが法政で1番を打っていて、試合で活躍しているのはとっても嬉しかった。まだ1年生だからこれからも見られる。常総学院も大阪桐蔭出身者も、万永さんの甥っ子の舩曳くんも観られたし、バッターボックスに選手が立つ度に心の中で喜びの舞を踊っていた。(大げさじゃなくて本当に)
そして、その選手たちに対峙する東大ももちろんすごい。諦めない姿勢も勝ちに飢えた感じも。

毎年あれだけ高校野球が盛り上がって、進路を注目されるのに大学での活躍はWEBメディアで見るぐらいだった。それからドラフト直前の時期になって「よかった、この選手もドラフト候補!」って喜ぶのが毎年のことだった。
うーーん、もったいない。とても。

そして、4つ目。
これが一番大きいかもしれない。これが琴線に触れるのか、と自分でも驚いた。その分、野球の見方も広がっているのかもしれない。

ずいぶん前に一度、親友とこんな話をした。

「高校野球が負けたら終わりっていうのはさ、あくまで高校でのステージが終わるんであって、さらに上のステージを目指す人が多いし、野球人生の終わりとは限らないよね」

でもさ、

「プロになると野球を続けられない現実を受け入れないといけないんだよね。そこから先の人生の方がずっと長いのに」

って。(ニュアンスはこんな感じだったはず)

高校野球で甲子園に行くために親元を離れて強豪校に行って、熾烈な競争を勝ち抜いて、すべてを懸ける……というのはもちろんすごい。誰にだってできることではない。
一方で大人になって専門ではなかったけど教育学を勉強して、少しだけ”学校の先生”として部活動の位置づけを肌で感じることもあったから何とも難しいなあ、と考えることもあった。

大人になればなるほど、選択肢が狭くなる傾向にあると思う。
どんどん人生でのキャリアや意思がが明確になってくるのに合わせて大きな決断が迫ってくる。
野球は続けるのか、プロを目指すのか、社会人に行くのか、それとも野球からは離れるのか……高校生よりも野球に対するハードルは多少なり上がるんじゃないだろうか。
目指す未来をつかめる人ばかりではないのでは、と思うし、どんなに夢を見たところで現実の厳しさを知ることもあるだろう。

でも、そんなことグラウンドでは関係がない。
全力でプレーをする、チームが勝つために。シンプルなことだ。

私は、勝手に背景を知って勝手に感情移入して思いを馳せてしまう。特に決断のタイミングや、出会い…いや、それよりも別れが気になってしまう。
シーズンが終われば、それぞれが決断した将来に向けて踏み出す。そこまでにチームメイトとどんな会話をしたんだろう、どんな事を目にして、何を考えたんだろう。

それにしても大学生って不思議なんだよね。大学1年生ってまだまだ高校生みたいで幼いかと思えば、20歳を超えて就活なり将来を考えるなりした頃には何だかぐっと大人びてきて、「あれ、こんなに頼もしかったかな?」って驚いたり。
会社のアルバイトの子にもそう思うぐらいなんだから、責任や覚悟を背負った選手なんてもっと成長を感じられるんじゃなかろうか。

最近、勝手に知ってしまった人達の幸せを願うばかりだけど。
限られた時間を全力で過ごす、その瞬間を見られることって尊い時間じゃないかな。

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